うちの会社の管理職は戦略思考が低い、と嘆かない組織になるための3つのポイント。 | Work , Journey & Beautiful

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高度経済成長期が終わり、停滞と右肩下がりを繰り返す日本経済において、その中でも事業規模を拡大してきた・なんとか維持してこれたのは、当時極めて優秀な経営者達が日本には数多く存在していたからだ。そして今また停滞する経済、閉塞感漂う社会において、注目されるのはグローバルな目線を持ち、前例にとらわれず、組織を牽引できる経営リーダー達だ。ユニクロの柳井社長、楽天の三木谷社長、ソフトバンクの孫社長、そんなカリスマ的なリーダーが何かしらの話題に上らない日はない。

さて、僕は仕事柄、様々な組織の話を聞かせてもらっているが、すべての組織がこのような経営リーダーを求めているか?というと、必ずしもそうではない。むしろ大半の人の理解は「ああいったカリスマがいる組織はラッキー。我々の組織にはああいったカリスマ的ないない。むしろいないという前提で、どのような戦略を立案すべきか?」といった感じである。つまるところ、多くの組織にとってカリスマリーダー待望論は現実的な課題解決プランとは呼べない。

であるのであれば、果たしてどのような課題解決プランが組織開発、人材開発上有効なのだろうか?それが正解なのか否かはともかくとして、多くの組織にとってのプランは「管理職の強化」である。事実、多くの組織で、組織力の強化は管理職の強化であると語られ、そのためのプラン策定の支援をさせてもらうことが最近は非常に多い。そもそもの文脈はこうだ。


「うちの管理職は考える力が弱い。言われたことはこなせるが、自分の考えを会社に主張したり、意思決定する力に欠けている。」
「プレイヤーとしては非常に優秀だった。しかし管理職になってからは今ひとつ成果らしい成果が上がっていない。」
「顧客ニーズもライバルの動向もどんどん激化している。マーケットそのものも、グローバルな目線で考えると日々劇的に変化している。現場で働いている人間も多様化している。そんな中で、経営層が詳細で明確な方向性を示すことはできない。」
「管理職層には、経営層の言葉を踏まえ、自分の部門なりに翻訳・展開し、自律的に動ける組織を作ってもらいたい。」
「それなのにうちの管理職といったら、社長が言った言葉をオウム返しの様に同じ言葉を部下に話してるか、『社長はああ言ってるがよく分からんし、これまで通りでいこう』と言ってるかの2種類しかいない。このままでは競争力が落ちるばかりだ。もっと管理職に戦略性をもって考える力を身につけさせなければならない。」


表現する言葉こそ違えども、同様の課題を非常に多くの組織が共通して持っている。つまり、恐れずに直接的に言うと、総体的に管理職層の「戦略的に考える力」は低いのだ。それではそもそもなぜ総体的に管理職層の戦略的に考える力が低くなったのか?(そもそも元から管理職層の戦略的に考える力は低いものなのか?)

その理由の一つはここ数十年間の歴史が教えてくれる。高度経済成長期において、管理職がやることは極めてシンプルだった。ただ、我武者羅に頑張れば頑張るだけ成果が上がり報酬も上がっていった時代だ。経営層から割り振られた目標を達成するために、部下を鼓舞し、時に自分も率先し、猛烈なリーダーシップを発揮すればよかった。PDCAでどうすれば目標を達成できるか?についてマネジメントすればよかった。ついてこれない人材は淘汰すればよかった。そこには、戦略的に考える余地などなかった。

高度経済成長期が終わり、日本は停滞の「失われた10年」の時代を迎えた。その中でも奮闘していたのが、冒頭でも述べた優秀な経営者達だった。マーケットの拡大が見込めなくとも、業務の効率化と低コスト化を突き詰め、経営基盤を強化した。また、アジアをはじめとした新興国へ積極的にマーケットを展開しようとした。それらの多くは経営者のリーダーシップのもと行われた。そんな中、管理職は先行きが見えないながらも会社が掲げる方針やビジョンを信じ、従い、成果を出すためにマネジメントを行っていた。どうすれば成果をあげられるか?という戦術レベルの意思決定が管理職に求められたが、いまだ戦略レベルでの意思決定を求められたわけではなかった。

今、様々な組織の管理職と呼ばれる人の多くは、これら高度経済成長期に社会に出て、戦術レベルでの意思決定を行う管理職の姿を目の当たりにしてきた年齢層だ。この事実が先程の問いに対する答えでもある。つまり総体的に管理職の戦略的に考える力が弱いのは、「そんな管理職を見てきたこともなかったし、自分もそんなことを求められてきていなかったから」だ。特に大きい組織であればあるほど、「いきなり戦略を考えろ、と言われても・・・」というのが管理職としての本音だろう。

二つ目の理由は、現存の管理職を選定し育成するプロセスにある。従来から管理職になる人とは良くも悪くも多くの場合、プレイヤーとして成果が上げられた人である。これは組織という概念が多くの場合ヒエラルキーである以上、管理職=プレイヤーよりも立場が上であり、多くの人にとって自分よりも優秀でない人に自分の上にたたれることは「気に入らない」から仕方がない。しかし、ただ先程から述べているような管理職に求められている戦略的に考える力とプレイヤーとして成果を上げるために求められる力とでは根本的なギャップがある。プレイヤーに求められるのがどうすれば成果が上げられるか?というhow型思考であるのに対して、管理職に求められている戦略的に考える力とは何をもって収益と利益を生み出していくのか?というwhat型思考だ。この二つの思考の違いは観点の違いであり、一朝一夕で変化するものではない。しかし多くの組織の現存の評価指標に戦略思考を組み込んでいることは稀だし、そういった育成の機会もまた与えられていない。多くの組織が投資するのは、より緊急性の高いhow(スキル)の底上げ・標準化のためのトレーニングであったり、リスクマネジメント上優先されるトレーニング(労務管理、セクハラ・パワハラ、コンプライアンスなど)や考課スキルのトレーニングであったりする。これもまた、管理職になったからと言っていきなり戦略的に考えろ、と言われても戸惑うばかりである。

これらの現状を踏まえ管理職層の戦略的に考える力を高めるプランのポイントは3つあるだろう。


1.管理職についての新たな役割変化の浸透

これまで見てきた通り、管理職に求められている役割は大きく変化している。かといって、これまでのやり方を正しいと信じてマネジメントを行ってきた管理職としてはいきなり変われと言われても変われないのが現実である。だからこそ段階的に役割の認識を変化させていく必要がある。まず行うべきは、変化させないものの整理だ。社会の流れ、経済の流れ、当社がおかれた現状、それらを踏まえつつも管理職として残すべきものは何か?これまで通り継続すべきことは何か?を明確にする必要がある。この整理なくいきなりあるべき論を押し付けられて生まれるのは反感と混乱だけだ。変化させないものを整理した上で、管理職自らが今後新たに担うべき役割とは何か?という問いに対する答えを探求する場が必要になる。


2.早期からの戦略思考強化経験の付与とフィードバック

これまで見た通り、管理職になってから戦略的に考える力を高めようとたのではあまりに後手後手になりすぎる。むしろこういった観点や考える力は一朝一夕に身につくものではなく、ある程度長期的に高めていくことが求められる。つまるところ本当に必要なのは、若手・中堅時代から将来を見越して戦略思考を高めるトレーニングを行っておくことだ。その手法そのものは、例えば事業プランの立案をコンテスト形式で行ったり、ケースメゾットを活用したり、様々なものが存在するので、最適なものを選択すればよい。重要なのは、早期に経験を積ませると共に、考え方や観点に対して適切なフィードバックができることだ。


3.戦略思考の評価指標確立と評価の蓄積

上述した通り、そもそも管理職になる前から戦略的に考える力を評価している組織は多くない。しかし例えば2のようなトレーニングを行うとして、誰に対して投資すべきかを組織として意思決定をする際に何をもって判断すればよいのだろうか。結局従来のように、プレイヤーとして成果を上げている、という判断基準だけでの選定は公平感は産んでも投資対効果の効率性は産まない。だからこそ、即成果に結びつかないまでも、若手・中堅と
呼ばれる階層に対しても戦略思考を評価する指標を設け、評価を蓄積すべきだ。成果を程々以上上げていて(将来管理職になったときに周りの反感を買わない)、且つ戦略的に考える力が高まる可能性が高い人を選定し、投資することこそが肝要だ。




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