ビジョンは現場に翻訳されて伝わっているか? | Work , Journey & Beautiful

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ビジョンや理念があるようで機能していない会社を見分けるポイントは単純だ。機能していない会社は、経営層の言葉が日常的な行動へとブレークダウンされることなく、ただ同じ言葉をオウム返ししているだけである。このように例えば社長が言った言葉を、全く同じ言葉で課長が話しているのでは組織としてのコミュニケーションは成り立っていないのと同じ。またそのビジョンだとか理念は単にスローガンでしかない。さはさりとて、これまで数少ないながらも仕事柄様々な組織を見てきたが、管理職が「社長が言ってるあの言葉は、この部門では◯◯するってことだ」と、それぞれの管理レイヤー(部長であれば部門、課長であれば課)に合わせたレベルで、具体化・翻訳化して語ることができている組織は少ないのが現実だ。

特にベンチャー企業や中小企業などの組織開発途上の組織の多くで、似通った課題が見受けられる。その原因は創業者や経営者が直接現場の意思決定に介入してしまうから。そのため現場のマネジャー(多くはプレイングマネジャー)は自分の言葉で方針を語る機会に恵まれず、成長できない。その結果としていつまでたっても中間管理職不在の「疲弊するフラットな組織」になってしまう。

この課題を解決する方法とは、経営層から現場マネジャーへの権限の委譲(介入しないことを決めること)と徹底的な形式化(書面でのレポートラインの明確化)だろう。例えば現場マネジャーに通期、四半期、月間、週間の目標(アクションプラン)を策定させ、経営層から目標の妥当性に対してフィードバックを行い、実行した結果に対して振り返りと報告を求める。こうした書面を取り交わしながらPDCAをまわし、コミュニケーションをとることで概念的に考え、判断する機会を与えていく。(現実的にはいきなり通期の目標をたてさせても不確実性が高過ぎるので四半期目標から考えさせるケースが多い。)

一方で、この問題は、所謂ベンチャー企業や中小企業に限定されるものではない。極めて(頭が)優秀な人材が多く集まる大きな組織であってもこの罠に陥ることもある。先日仕事で話を伺ったクライアントも非常に大きな組織で、且つ一人一人の優秀さが際立つ組織だったが、同じ課題を抱えていた。

その会社では課長/管理職になるまで求められているのは、担当プロジェクトのQCD(いかに短納期且つ低コストで成果物の質を高めるか?)の追求だ。そんな環境で10~5年間パフォーマンスを上げてきたからこそ、頭にこびりついているのはプロジェクトのQCDをいかに追求するかという「how型思考」である。しかし管理職になり、経営層の指し示すビジョンや理念を現場に翻訳して示す上で求められるのはhow型思考ではなく、我々の部署は何を成し遂げるのか?を考える「what型思考」である。管理職層のwhat型思考が高まらないために、社員意識調査などを行った際に現場からは「経営層の言葉は分かっているけれど、部門としての方針が示されず、結局どうすればいいのかがわからない」という声が多数あげられているという。

組織としてのwhatを考える上で求められるのはQCDではなく、より多面的な現状分析と戦略立案と意思決定だ。誰かが示した方針に従い成果を上げるのではなく、自らが(経営層の意向を汲んで)、方針を示さなくてはならない。そしてそのためにはこびりついた価値判断基準から一気に視点を増やす必要がある。このチェンジに対応できない「プレイヤーとしては優秀だった悩めるマネジャー」は多い。何よりもこういった多面的な視点の養成は一朝一夕では行えない。ある程度中期的な育成を前提とした戦略を策定する必要がある。具体的には従来的なOFF-JTを行いながら、入社5~10年の早い段階で部門横断型の業務改善プロジェクトのリーダーを任せるなどし、多面的な視点で考える癖付を行うことが求められるだろう。



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