ブレークスルーの要は企業規模が「小さいからこそ」という強みを捨て去ることができるかどうか。 | Work , Journey & Beautiful

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ベンチャー企業や中小企業がある一定以上の規模の企業へと成長できる、つまりブレークスルーできるかどうかはいくつか乗り越えなければならない壁があるが、その一つが「組織の強み」を生み出す仕組みをどのように変革できるか?である。僕自身社会人になってからというもののベンチャー企業に所属し続けているが、やはり大手企業である競合他社と差別化するポイントはスピード感と柔軟性とコストの3点である。

組織が小さいからこそ、現場の第一線と最終決断を行う経営層との間の意思疎通スピードはやはり規模の大きな他社と比べて圧倒的に早い。例えば当社のオフィスであれば僕と代表をはじめとした役員層との距離は数メートルで、席にさえいればいつでも声をかけることができる。こういった組織であれば経営層は市場の動きに対して敏感でいられる。

・顧客が求める価値(商品やサービス)は何か?
・他社はどのような動きをしているか?
・どの程度の価格で展開するべきか?
・どのような顧客層に対してアプローチするべきか?

など、会社として意思決定を行う上で必要な情報が常に経営層の耳に入ってくる。だからこそ、スピード感をもって様々な商品やサービス展開が実現できるし、ニッチな顧客ニーズに対しても対応できる。またコストは企業規模が小さければ小さい程抑えやすい。翻って他社と比べて魅力的な費用でサービスを展開することができる。これは他の中小企業を見ていても同様で、この3点を重点的に徹底して差別化することこそが中小企業やベンチャー企業が市場で生き残っていく重要な戦略だろう。

しかし逆に言うとこれらは全て組織規模が「小さいからこそ」実現できる強みである。一定以上の規模に成長できない企業はこの「小さいからこそ」の強みに捉われて戦略そのものを変化できないために、成長が鈍化してしまう。それが所謂50名の壁とか100名の壁と言われるものの一つの正体である。よく50名の壁とか100名の壁と言われるときに問題視されるのはビジョンの共有であるとか、従業員一人ひとりの意識がばらつくこと、なんて言われているが、実はそういった目立つ問題に隠れているのが、この戦略のシフトが上手くいかないという問題である。


ではどうやって戦略を変化させればよいのか。上述のスピード感と柔軟性とコストを小さな組織特有のものとして、別の強みを発揮しようとするのはあまりに安易すぎる。(そしてそんな強みはなかなか存在しない)

であればシンプルに考えて、「小さな組織だからこそのスピード感と柔軟性とコストにおける差別化」から「組織的なスピード感と柔軟性とコストにおける差別化」を実現することが戦略の変化の要諦だ。そのための戦略は主に下記の3点だろう。


1.コストの最適化

小さな組織におけるコストの抑え方は案件毎にかかっているコスト(原価)を抑えることでもって行われる。しかしある程度の規模の組織になると一様の商品・サービスを展開しているのではなく、複数の商品・サービスを展開することになる。そうなると、ラインが複数に分かれるがそのライン毎にコストが嵩むので「売上と比例して、コストも高まる」という現象が起きる。

しかし京セラの稲森会長が「売上の最大化とコストの最小化こそが経営」と言うように、売上が増加することとによってコストが高まることを良しとしていたのでは組織の成長は限定的なものになる。むしろ会社全体でコストを最適化することで、「売上は増加したが、コストは売上増加程は増加していない」という状況を作り上げなければならない。例えば複数のラインのバリューチェーンを最適化し、集約することでコストは最適化できるかもしれない。もしくはこれまで顧客ニーズに合わせて開発を行っていた商品開発を、開発期間のルールを設けることで常にコスト削減を行い続けることがコストの最適化につながるかもしれない。


2.組織的な顧客ニーズへの対応

顧客が増加する中で全ての顧客のニーズに応えることはまず困難になる。だからこそ、商品やサービスを開発する担当部門がどれだけ多くの顧客ニーズに通じ、最大公約数となる価値を提供できる組織が作れるかが重要になる。多くの組織でそうであるように顧客ニーズを営業担当者がヒアリングし、企画作成・商品提供まで一連の流れを行っていたものを単に分業化するだけではなく、商品・サービス開発をする担当者と顧客の距離を近づける必要がある。例えば企画部門や製造部門にカスタマーサービスセンターやコールセンターを設けるなど顧客ニーズが直接商品・サービス開発をする担当者に届けられる仕組みを作る必要がある。


3.構造的なスピード優位性の実現

上記のような顧客ニーズが直接商品・サービス開発をする担当者に届けられる仕組みが確立されれば、単に組織的に最大公約数のニーズを満たす質の高い商品・サービスが提供できるだけでなく、これまで個人個人の努力で実現していたスピードを組織全体で実現することができる。


こういった組織的に優位性を確立する戦略がたて実現できるか否かがベンチャー企業や中小企業がある一定以上の規模の企業へと成長できるか否かに大きく関わる。




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