5つ数えれば君の夢
5月3日(土) 13:30~ 東京写真美術館
好き度: ★★★★☆ 4/5点
山戸監督、要注目!!
5つ数えれば君の夢、予告がよくってとても気になってたり、前々から評判が高かった山戸監督作ということと楽曲が大好きな東京女子流主演ということでシネマライズでやってたときから気になってはいたんですがなかなか行けず…。シネマライズでの上映が終わってしまったんですが、再上映が東京都写真美術館であるということで行ってきました。賛否両論あるみたいですが僕は好きな映画でしたよ!不思議な映画でした。
とりあえず予告を。これはふつうのアイドル映画じゃない感ビンビン。
内容的には、文化祭を間近に控えた女子校を舞台に、少女たちのきらめきと葛藤を、5人が演じる少女それぞれにスポットを当て、叙情的に描き出す。まぁ青春群像劇っていっていいのかなぁ。
詩的な、大人びたセリフを言う東京女子流という違和感がものすごくあってこれが合わないというひとも多いだろうけど、僕はこの明らかな異空間っぷりが東京女子流というアイドルの世界観にかなりはまっていたと思います。直近で連想したのは、映画『大人ドロップ』。あれもかなり詩的なセリフでしたが、不思議なグルーヴというかワールドが生まれてくる感じはとても似ていたかもしれないですね。詩的なセリフがなぜかはえてグルーヴが生まれてくるというのは舞台が女子高というのも大きい気がします。
『閉鎖された空間・閉じた世界』という言葉が劇中でもよく出てきたけど、これがとても印象的でした。この世代の思春期の子達というのはその時期を通過した僕たちが俯瞰からみると、閉じた世界という表現とは逆で、ものすごく未来の開かれている、まだ何者でもないぶん今から何者にでもなれる可能性に満ちている感じじゃないですか。でも、当人たちはどうでしょう。僕たちが学生のときもそうだったけど、それは「桐島部活やめるってよ」を見たときにみんなが思い出した、『学校=世界』という閉じられた世界観、同調圧力に満ちた閉鎖空間だったはず。だからその事実に気づいてしまった子は気づいてない子から見たら異質に見えたりしちゃうのが学校の嫌なところで。。
この映画でいうと新井ひとみは学校というものが世界のすべてではないと気づいている存在。
一方、小西ちゃんと庄司めいちゃんは学校という箱のなかで必死に上を目指している存在。
この映画は大人の世界のつかいである(天使的と言っていいかも)新井ひとみが『ここだけが世界じゃないよ』と山邊ちゃんに気づかせるという山邊みゆのイニシエーションの話だと僕はとりました。
でもこの視点というのは、大人になってから気づいたりするんだよね~。だから『あのときの俺ら痛かったよね』という「大人ドロップ」のセリフよろしく、恥ずかしくなったりもするけど、同時になんか知らんが必死だった俺らを思い出してなんか笑っちゃうっていうことはよくあって、この映画はそんな気持ちにさせてくれました。だから青春映画として素晴らしかったと思います。苦くも優しい青春映画でした。
そしてエンドロールが素晴らしかった!正直キレイキレイな明るい映画ではないです。だからこそのあのエンドロールでの東京女子流メンバーがみんなで楽しそうにわちゃわちゃする映像は、『アイドル映画』としての矜持があったように思います。大林宣彦の『時をかける少女』のラストに近いカタルシスがありました。最後女子流ちゃんたちが歌ってもいいくらいです。
あとは、見せ場であるラストの新井ひとみのダンスシーンは最高でした。マジックが起きてた感じがします。なにかがスパークしていましたよ。とても不思議なカタルシスがありました。全体的にライティングと絵の切り取りかたがとてもうまいと思いましたね~特にここのラストダンスシーンは。
今のところの不満もなくはなくて、新井ひとみちゃんと庄司めいちゃんの対比構図で観た分、中江ちゃんのエピソードはちょっと浮いて感じちゃったというのがちょっとあったり。。2人の中間的立場だったのかな。お兄ちゃんとのエピソードとか完全に独立してて、ちょっとあんまわかんなかったなぁ。
あと青春映画であるわけで、庄司めいちゃんにはもうちょい開かれた形の結果がほしかったかも。。このキャラクターだけ、成長がない気がしたり…まぁでもミスコンで優勝したわけでそれはそれでありかなぁ。あとあの文化祭後も小西ちゃんが今まで通り庄司ちゃんにくっつきまわってるのも結局おまえ成長してねぇのかよ感はあったけど、まぁでも劇的に何か変わるのもおかしな話だし、これはこれでありなのかなぁ…自己完結(笑) まぁでもちょっとシニカルな大人からの視線はとてもこの作品の魅力だと思うので、これはこれでありなのかなぁ~
山戸監督作ははじめてみたんだけど次回作もとても楽しみです。非常に評判の高い前作の『おとぎ話みたい』もとっても気になってたんですが見逃してたんですよね~と思ったら、来月テアトル新宿の「観ずに死ねるか!青春映画邦画編」の特集上映で再上映がが決定しているとか!楽しみ。絶対見に行きます。
おわり
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スタッフ
監督
山戸結希
企画
針谷建二郎
直井卓俊
プロデューサー
平林勉
アソシエイトプロデューサー
伊藤太一
中村雷太
ラインプロデューサー
南陽
脚本
山戸結希
撮影
鈴木一博
美術
井上心平
松原夏子
照明
KATSUYUKI NAKANISHI
録音
小宮元
編集
山戸結希
音楽
Vampillia
主題歌(作詞・作曲)
きくお
主題歌(歌)
東京女子流
スタイリスト
齋藤ますみ
ヘアメイク
寺沢ルミ
ダンスデザイン
スエタカヨーコ
ダンス振付
臼井比呂子
制作担当
木村利明
助監督
渡辺直樹
キャスト
山邊未夢 さく
新井ひとみ 斎藤りこ
庄司芽生 宇佐美彌生
小西彩乃 宮本都
中江友梨 委員長みちる
大和田健介 たかし
栁俊太郎 倉田
渡辺佑太朗 高木
平野鈴 委員長の兄の彼女
椿かおり 音楽の先生
上埜すみれ
内田春菊 先生
作品データ
製作年 2014年
製作国 日本
配給 SPOTTED PRODUCTIONS
上映時間 85分