そこのみにて光輝く
5月6日(火) 14:40~ テアトル新宿
好き度: ★★★★★ 5/5
邦画では今年ベスト
大評判も聞いていましたし、タマフルの課題映画になったということでテアトル新宿へ。僕はものすごく大好きな映画でした~!( ;∀;)
仕事を辞めブラブラと過ごしていた佐藤達夫は、粗暴だが人懐こい青年・大城拓児とパチンコ屋で知り合う。ついて来るよう案内された先には、取り残されたように存在する一軒のバラックで、寝たきりの父、その世話に追われる母、水商売で一家を支える千夏がいた。世間からさげすまれたその場所で、ひとり光輝く千夏に達夫はひかれていく。しかしそんな時、事件が起こり……。(映画.comより)的な内容ですなぁ~。
見て思ったのがルックや描写は違えどなんだか石井隆の世界みたいだなぁとか思ったり。業を背負った女がいて、その女を抑え込む狂犬的な男がいて、そしてその女を救おうとするトラウマを抱えた男がいて…という感じの人物構図が石井隆っぽいなぁと思ったり。そりゃぁ大好物ですよ!
まずは、撮影が素晴らしかった。撮影は近藤龍人さん。ほんとにこの人の撮る映画はハズレがないな!ロケーション、ライティングがものすごくよかった。光の使い方はほんとよかったなぁ~。とにかく全編ヒリヒリと緊張感と不穏さがあって、常に何か大変なことが起きそうな緊張感に満ちていてワンシーンも見逃せないな…という雰囲気に満ちていて、ゆったりとした映画かと思いきやきびきびと展開していってまったく飽きない映画でした。
最底辺の家族の描き方も容赦がなくてとてもよく、女性監督がとったとは思えないくらいでした。タナダユキといい、女性監督の方が最近は容赦なく描ける傾向があるのかしら。寝たきりの父親にその父親の介護そして性処理をする母、体で稼ぐ姉に仮釈放中の弟という、池脇千鶴さん一家のドン詰まり感は最近の家族ものの中でも群を抜いてましてほんとに観てて辛かった…。 そして同じくどん底にいる綾野剛も素晴らしかった。同僚を殺してしまったというトラウマで仕事を辞めてて今もその過去にとらわれている、時間がそこで止まっている。そしてその止まっていた時間が再び動き出すという意味では 三宅隆太監督のいう『心霊映画』 だなぁと強く思いました~。
綾野剛と菅田将暉の仮面ライダーコンビのバディ感は最高でしたね。菅田将暉はほんとうに素晴らしかったなぁ。仮釈放中でワルなんだけど、すげぇ人当たりがよくて憎めない感じがものすごく可愛かったし、高橋和也と接するときの超腰の低い絶妙な後輩感最高でした。
イイバディ!
個人的にこの映画で助演男優賞を挙げるなら高橋和也さん!この気持ちいいほどのクズっぷり!ほんと男ってみっともない、ダメだなぁという感じはスケールは小さいけど石井隆映画の悪役っぽくてよかった。役所とかの事情とかやたら顔の広い感じ、ムカついたら暴力、態度はでかいが心は小さい、男として最低な最後の車での半レイプシーンは池脇さんの言うとおりゴミクズみたいな男でしまいには暴力。最低な男を最高に演じてました高橋和也最高だ!最低だ!
ゴミクズ高橋和也最高!
池脇千鶴もやっぱりほんと素晴らしい女優ですね。今回は、絶妙な肉感がすげぇよかったんですよ~。ムッチムチでしたな。初めのチャーハンを作るシーンの魅力は半端なかった。コショウを振る二の腕最高!おっぱいもちゃんと出しててさすがです。海辺での涙のシーン、父親の性処理をしなきゃいけないシーン、そして最後父親を殺そうとするシーン、その複雑な心情をすべてを顔で表現しててやっぱり素晴らしいなぁと改めて思いました。
リアルなエロさと不憫さがとてもよかった
あといい味を出していた火野正平さん!この男ただ者ではない感最高。山の男感。服装と車、一緒に連れて行くキャバクラ含めいい味出てました。
焼肉シーンは最高
そしてこの映画フード映画でもありますよね。そもそもの出会いはチャーハンだし、焼肉、カレー、スイカ、ビール、タバコ。特に菅田くんはほんとにうまそうに飯を食う!だから仮釈だし、悪いやつなんだろうけど、なんか憎めないんですよね~。そして初めて3人が食べ物(ビール)を共有する食堂でのシーンはこのどん底から這い上がれる!という希望に満ちたシーンであって、めちゃくちゃ微笑ましくってギリギリのところでつかんだ幸せに泣いちゃいました。と、同時にこの映画、ここでおわるわけがない…というどこか破滅の予感に満ちていて、「頼むからここで終わってくれぇ~」と思いましたが、やはりここで終わるわけじゃなく…
カンパ~イで泣いた
ラスト周り、つかみかけた希望をギリギリのところで手放してしまうんだけど、でも弟として男を見せた菅田将暉、ほんとダメだしバカだし幼稚なんだけど、最高にかっこよかったよ!そこから2人でタバコを吸うシーン。ここで見せる菅田将暉の涙はほんとうにグッときました。あと、去り際がさっぱりしているのがとてもよかったです。
名シーン
ラストのラストも、ものすごくよかった。ほんとにどん底だし、この世に希望はないのかという世界にも、人と人が出会い、触れ合うことでかすかーな希望がそこに生まれるのではないかというね。この映画を観て思ったのは、人とつながりたい触れ合いたいという根本的なこと。ほんとに心底思いましたよ。人とつながること一般のすごさ強さをとても感じました。このままこいつらが出会わなかった人生を想像すると怖くなりますもん。他人と触れ合うことで人ってより良くなれるんだなぁという当たり前のことを再確認しました。
映画のルック、演出、内容含め、今年の邦画では段違いの映画がきたなぁという印象。僕はものすごく好きな映画でした。大好きです。正直しばらくは観たくないけど、またぜったい見直したい日が確実に来ると思います。素晴らしかったです!!!
おわり
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監督
呉美保
企画
菅原和博
製作
永田守
菅原和博
エグゼクティブプロデューサー
前田紘孝
プロデューサー
星野秀樹
アソシエイトプロデューサー
吉岡宏城
佐治幸宏
キャスティングディレクター
元川益暢
ラインプロデューサー
野村邦彦
原作
佐藤泰志
脚本
高田亮
撮影
近藤龍人
照明
藤井勇
録音
吉田憲義
美術
井上心平
編集
木村悦子
音楽
田中拓人
助監督
山口隆治
キャスト
綾野剛 佐藤達夫
池脇千鶴 大城千夏
菅田将暉 大城拓児
高橋和也
火野正平
伊佐山ひろ子
田村泰二郎
作品データ
製作年 2014年
製作国 日本
配給 東京テアトル
上映時間 120分
映倫区分 R15+