「ある過去の行方」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。






ある過去の行方
4月29日(火) 13:40~ Bunkamuraル・シネマ




好き度: ★★★★☆ /5点


この奥さん、大嫌い


『別離』のアスガー・ファルハーディー監督の新作ということでル・シネマで観てきました。今まではイラン映画でしたが今回からフランスに移っての作品。今回もやはりミニマムながらものすごくよくできていてヒリッヒリするミステリーでしたよ~。

子連れのカップルが再婚を考えるが、娘の告白がきっかけで、それぞれの過去や本心が次々と明らかになり、見えなかった真実が浮き彫りになっていく様子をサスペンスタッチに描いた。夫と別れて4年がたつシングルマザーのマリーは、子持ちの男性サミールとの再婚を予定し、新たな生活を始めていた。しかし、正式な離婚手続きをしていないため、イランにいる夫のアーマドをパリに呼び寄せる。アーマドはマリーの新しい家庭と生活を目の当たりするが、そこにはどこか不穏な空気が流れていた。長女リュシーとの関係がうまくいっていないというマリーから、娘の本音を探ってほしいと頼まれたアーマドは、リュシーの話を聞くことになるが……。的な内容ですな。

タイトル通り「過去」にとらわれた家族たちの話で、ですが過去の回想映像は一切出さずに登場人物たちの証言のみで過去に起きたことを想像させる作り。しかもこの登場人物たちが言ってることが本当のことなのかどうかがぜんぜんわからない。だからこそものすごく怖い。それに別離もそうでしたが物語の中心は壊れた家族。親同士のいざこざそしてそれに振り回される子供というものは共通しているし。この監督は家庭崩壊映画の名手ともいえるかもしれませんね~。

奥さんのマリー



とにかくですね。この奥さん役のベレニス・ベジョさんがほんとに素晴らしかった。とにかく僕はこの奥さんが大っ嫌いでほんとイライラしっぱなしでしたよ~。この奥さん常にイライラしててめちゃくちゃ短気だし、キレると話が通じないタイプの女でほんと最悪で、最高でした。

元夫アーマドと奥さんの現恋人サミール



元夫、現恋人の2人がに会するシーンはとてもヒリヒリしていましたな。ものすげぇ気まずく、雨の音だけが延々となっている感じが。現恋人は悪い人ではないと思う。というかこの映画誰一人として悪人がいない。でもみんななぜか不幸になっていくっていうのもファルハーディー的かもしれないですね。元夫も現恋人もみんなこの奥さんを中心に振り回されている感じがとてもおもしろかったし、僕は男なのでどうしても男側に感情移入しちゃう分、やっぱりこの奥さんの自己中心っぷりをものすごく感じてして、やっぱ男は女に振り回されるものなんですな~。

この映画においてこの奥さんが妊娠している(サミールとの間に)というのがとても大きな問題になってきていると思います。でも、妊娠しているという事実はこの奥さんしか知らないし、妊娠していることを知っていながらタバコはスパスパ吸うし、これは実際には妊娠していないんじゃないのか。な~んて感じ取ることもできて、だとするとやっぱりこの奥さん超怖いよな。

長女のリュシー



長女のリュシーはとっても良かった。ティーン感というか思春期感が絶妙だったし、劇中もっとも重要な告白をしなければならない、秘密を抱えた役をとってもうまく演じてましたね。大人びてるけどまだ子供って感じがとっても可愛かったし、最後の方はとってもかわいそうで抱きしめたくなりました。彼女の告白によって元夫がしる真実というのがいくつかありますが、やっぱり中でも重要なのはメールの件ですよね~。そんなことを抱えていたのか…と泣いちゃいましたよ。でも、彼女の告白も果たして本当なのか…そんな奥深さがあったりするのがこの映画の魅力ですな…。

子供たちも大変だよな…



この映画、まぁ大人たちの問題ですよ。別離の時もそうでしたが、一番の被害者は子供なんですよねぇ~。特にサミールの息子ファッドはほんとに見ててツラかった(´・ω・`)アンマリダ そりゃ精神もおかしくなるし荒れるに決まってて、しかも奥さんの当たりがちょう強くでまじでかわいそうでしたよ。奥さんがこの息子を起こるたびにとても悲しい気持ちになったよ(´・ω・`)大人のイライラを子供にぶつけるのだけはやめてほしいものです。だからこの元夫とファッドがだんだんと心が通じ合っていく感じはとても微笑ましかったです。やっぱこの奥さん大っ嫌いだわ。。ファッドとサミールが話す地下鉄でのシーンもすごかった。自分の母親が自殺未遂をしたということ、子供だからとはぐらかそうとしてたけど、子供は子供なりにわかってて、とても残酷でした。。

そして今回もラストシーンすごかったですね。ラストシーンになって、いままでしゃべっていた不在の中心的な人物が出てくるというのはびっくりしたし、そこ顔みせるんだというのもびっくり。下の動画で宇多丸さんも言ってますが、これ、目を覚ましたらもっと怖くなりますよね。。

というわけで宇多さんのこの動画を貼っておわりにしときます。
正直1回見ただけじゃすべてを理解することは不可能だし、すごく多様な受け取り方ができる映画だと思います。一見の価値はぜったいあるのでおすすめですよ!とにかく登場人物が発する言葉は本当にあっているのかほんとにわかんない。おもしろかったです。










おわり




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スタッフ


監督

    アスガー・ファルハディ 

脚本

    アスガー・ファルハディ

撮影

    マームード・カラリ

編集

    ジュリエット・ウェルフラン

美術

    クロード・ルノワール

衣装

    ジャン=ダニエル・ビレルモズ

音楽

    ダナ・ファルザネプール

    トマ・デジョンケール

    ブリュノ・タリエール


キャスト


    ベレニス・ベジョ マリー

    タハール・ラヒム サミール

    アリ・モッサファ アーマド

    ポリーヌ・ビュルレ リュシー

    ジャンヌ・ジェスタン フアッド

    エリエス・アギス レア

    サブリナ・ウアザニ ナイマ

    ババク・カリミ シャーリヤル

    バレリア・カバッリ ヴァレリア


作品データ

原題 Le passe

製作年 2013年

製作国 フランス・イタリア合作

配給 ドマ、スターサンズ

上映時間 130分

映倫区分 G