先日、厚労省が「積極的勧奨の中止」としていた子宮頚癌ワクチンを再開するといった趣旨の発表がありました。


接種後の原因不明の痛みや麻痺は、「心身的なもの」という、被害者にとってはどう考えても納得のいかない説明の仕方に、現場の医師としてはもどかしい思いをしていました。


子宮頚癌ワクチンについては、積極的勧奨中止となってから僕は極力この場での発言を控えてきました。

情勢を見守りたかったからです。


予防注射の筋肉注射という手技に不慣れな医者が知識(神経や血管の走行といった解剖学的な知識)もなく接種してしまったから引き起こされた神経損傷および関節滑膜の損傷であることは、はっきり言って明白でした。

とくに肩関節の滑膜炎を起こすと、薬では治りません。滑膜を切除しないと痛みは取れません。

多くの被害者が訴えている「治らない痛み・しびれ」の正体はこれです。


ですが、それを「何やら訳分からぬ副作用だ!」と世間が騒ぎたてたせいで、ワクチン後進国で有名な日本はこのワクチンを事実上中止することになったわけです。


子宮頚癌ワクチンの筋肉内接種の手技的な問題に関しては、また後日書きましょう。



さて、子宮頚癌ワクチンが日本でやっと導入された時、ワクチンに批判的な人たちは

「ワクチン接種も良いが、日本における子宮頚がん検診の受診率の低さが問題だ」

と言ってました。

「ワクチンを推奨する以前に、検診率の向上に努めることがガン患者を減らす近道だ」

と。


確かにその通りです。

日本人女性の検診率の低さは先進国でもダントツであることは明らかです。

ワクチンに完全に頼らず、まずは定期的な健診によるガンの早期発見こそ重要だ、という意見は根強いですし、正しいことです。


でも、今マスコミは「子宮頚癌ワクチンって本当に大丈夫なの?」という論調を支持しており、それに付随して「定期的に健診さえすればワクチンよりも効果がある!」といった流れになってます。

これは間違いであり、しかも危険な考え方です。



がん検診で早期発見される子宮頚癌は、子宮頚部円錐切除という簡単な手術で完治させることができます。

簡単に言うと、子宮頚部の粘膜を削り取る手術です。

早期ガンは浅いですから、粘膜の切除で完全に取りきることができるんですね。

これにより完全に子宮頚癌とオサラバできるわけです。


なにやら危険そうなワクチンで予防するよりも、こっちの方がいいじゃないの?というのが現在の論調になってます。


ですが、小児科医とくに未熟児を専門とする新生児科医として警鐘を鳴らしたい。

子宮頚部円錐切除は確かに簡単な手術ですが、それにより早産や流産のリスクが高まるってことをです。


子宮頚癌になる年代はちょうど妊娠・出産をする時期に重なります。

そういう時に円錐切除をすると、早産や流産が増えるんです。

僕も天使パパですから、あの辛さは誰よりも知っています。



僕はなにも定期的検診を否定しているわけではありません。

むしろしていただきたいと思ってます。


ですが、最近のマスコミが騒ぐような「ワクチンは危険。定期検診さえして早期発見できれば円錐切除でOK」といった論調に、完全に踊らされないでいただきたいと思うんです。


ワクチンを選択するか、定期検診のみで早期発見に努めるか、それは最終的には皆さんの判断にゆだねられることです。


で、その判断材料として円錐切除によるデメリットも知識として持っていてほしいんです。

それは新生児科医として数多くの未熟児を診てきた僕であり、自身も天使パパである僕の極めて率直な意見です。



繰り返しますが、ワクチンが良いか悪いかを論じるのが今回の記事の趣旨ではありませんので、あしからず。