珠玉の逆転劇。。第56期王位戦/挑戦者決定戦「終盤戦を振り返ろう」 | 柔らかい手~個人的将棋ブログ

珠玉の逆転劇。。第56期王位戦/挑戦者決定戦「終盤戦を振り返ろう」

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【 投了図・144手目△6八龍 】



144


投了図での持ち駒


▲菅井六段: 角、桂3、香、歩

△広瀬八段: 金、歩4



昨日、行われました

注目の第56期王位戦/挑戦者決定戦

「広瀬章人八段-菅井竜也六段」の一戦は

上図144手までで、後手・広瀬八段が勝利。。



「広瀬八段、逆転勝利で挑戦権獲得!」




9


9手目△2二角成。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 角

△広瀬八段: なし


振り駒の結果、先手となった

菅井六段は「向かい飛車」に構えた直後に

角交換を敢行し乱戦模様の出だしとなるも。。




41


41手目▲8五馬。


上図での持ち駒


▲菅井六段: なし

△広瀬八段: 歩2


双方、角交換直後に作った馬を基点に

盤全体を使ってじっくりと模様を張りながら

間合いを計り合う、大一番らしく腰の据わった

序盤戦となりました。。




65


65手目▲3八銀。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 飛、歩

△広瀬八段: 歩2


自ら催促して

飛車と角を交換した広瀬八段は

手にした角を先手陣に打ち込み(62手目▲6九角)

後手番ながら先攻します。。


一方の菅井六段は

後手の言い分を聞きつつ自然な手を重ねながら

上図の局面で振り飛車の心強い相棒「美濃囲い」を完成。

守りを重ねて、来るべき反攻へ力を溜めます。。


双方の方針が定まった

上図から次に、広瀬八段は右の桂馬を跳躍。。

(66手目△6五桂)


菅井六段も▲同桂(67手目)と応じて

桂交換から、いよいよ開戦となりました。。




78


78手目△3五馬。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 飛、桂2、歩

△広瀬八段: 銀、歩4



手にした桂馬をおとりに(70手目△5五桂)

先手の金を浮かした広瀬八段の狙いは菅井飛車。。

しかし、馬を当てて揺さぶりをかけた上図の局面は



「△3五馬は△1四歩でしたか。

本譜はお互いに指す手が難しかった」

と終局後にコメント。難解さを裏付けるように

上図から▲8六飛~△4二金に▲4六桂と進行。。




81


81手目▲4六桂。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 飛、桂、歩

△広瀬八段: 銀、歩4



5筋に浮いた金が丸い桂頭を守る形ともなり

菅井六段が戦場に迫り出した後手の馬を押さえます。


しかし。。



94


94手目△6五馬。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 飛、銀、桂、歩

△広瀬八段: 桂、歩4


広瀬八段は2筋に馬を待機させたまま

銀との交換で桂馬を捕獲すると、満を持して

二枚目の馬が戦場に登場。。


執拗に菅井飛車を狙いますが。。




95


95手目▲5五金。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 飛、銀、桂、歩

△広瀬八段: 桂、歩4


菅井六段は勝算ありとみて

ここでは飛車を逃さず、捌きに出ました。。


上図から、以下

△5六馬~▲同金~△7九飛~▲8一飛~△7一歩に

下図101手目▲8三角と激しい進行へ。。




101


101手目▲8三角。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 銀、桂、歩

△広瀬八段: 桂、歩3



捕獲した待望の飛車を

勢いよく先手陣に打ち込んだ(98手目▲7九飛)

広瀬八段でしたが、この手の感触が今一つ。。


「△7九飛は7三銀にヒモをつけたほうがいいと思った。

しかし、▲7一飛成に△6二銀と引く手がなくなって損でした」

(終局後の広瀬八段のコメント)


以降、8筋に飛車と角を連続投入した

菅井六段が攻勢を強める展開となりました。。



107


107手目▲4五桂。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 銀、歩

△広瀬八段: 桂、香、歩4


後手陣最下段に龍を利かせた

菅井六段は手持ちの桂馬を打ち込み金・銀取り。

上空から崩しにかかります。。


明らかに先手有利の局面ですが

広瀬八段が次に5四金とふわりと浮かせると

菅井六段の手が止まりました。。


さて、候補手は何か。。


形を決めた先手は慌てる必要はなく

7筋に落ちている銀を拾ったり(▲7三龍)

馬を作ったり(▲7二角成)でも問題なさそう。。


逸る気持ちを強く盤上に反映させるなら▲5三歩として

以下、▲5二歩成~△同金~▲4一銀~△2二玉に

▲5二銀不成と絡みつくのも一局。。。


難解ながらも先手に楽しみの多い勝負どころで

菅井六段が下した決断の一手は。。。




109


109手目▲5五歩。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 銀

△広瀬八段: 桂、香、歩4


一マス繰り上がった後手の金の頭上に

歩を突き立てる、意表をついた▲5五歩でした。。。

次に広瀬八段が狙われた金を4筋に逃がすと。。




111


111手目▲3三桂成。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 銀2

△広瀬八段: 桂2、香、歩4


読み切りなのか、暴発か。。

菅井六段は桂馬を飛び込み、力づくで寄せに出ます。。




116


116手目△2七香。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 金、銀2

△広瀬八段: 桂、歩4


しかし、現代将棋界最高峰の終盤力を誇る

広瀬八段を相手には、やや強引過ぎたでしょうか。。


広瀬八段はすかさず攻め合いに転じ

上図の局面では手持ちに桂馬と歩が4枚にも関わらず

「向こうが見えてきたので」と終局後にコメント。。。




130


130手目△5八歩。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 香

△広瀬八段: 桂、歩5


息を吹き返した後手とは対照的に

先に形を決めたはずの菅井六段は攻め手が伸びず

一度、受けに回ると圧倒的に押される展開となりました。。


ここまで来ると

広瀬攻撃軍を追い払うのは無理とみて

以下から▲4五銀~△5八歩成~▲同金~△6六桂~

▲4四銀(135手目)と菅井六段は攻め合いますが。。



時、すでに遅く

形勢はすでに後手へと傾きはじめます。。




138


138手目△4六銀。


上図での持ち駒


▲菅井六段: 角、桂2、香、歩

△広瀬八段: 銀、歩5



「ここは勝ちだと思った」(同・広瀬八段のコメント)


難解な局面であっても決して乱れることの無い

正確無比な距離感と速度計算力がずば抜けて

素晴らしい広瀬八段が本領を発揮。。


勝利を確信した上図から

▲6七金引~△5七歩~▲6八金寄~

△6六銀に▲3五歩(143手目)をみて。。。



【 投了図・144手目△6八龍 】



144


投了図での持ち駒


▲菅井六段: 角、桂3、香、歩

△広瀬八段: 金、歩4


最後はズバッと

龍で金を捕獲し威勢よく王手を仕掛けた

上図の局面をみて、菅井六段は無念の投了。。



広瀬八段が若きエキスパートを相手に

経験と実力の差をまざまさと見せつける逆転勝利で

颯爽と、羽生善治王位への挑戦権を獲得しました。



王位戦/挑戦者決定戦の棋譜中継はこちら





やはり、大物。。





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【 序 章 】


「私と将棋界」

柔らかブログ誕生のきっかけとなった

第21期竜王戦以降の将棋界を熱く振り返ります。


【 第一章 】


「愛知女子将棋界の駒音」

山口真子さん/中澤沙耶さんインタビュー


【 第二章 】


「明日咲く花」

今泉健司さんへのエール&ミニインタビュー