第28期竜王戦ランキング戦1組/決勝「羽生名人が2年連続優勝」
【 投了図・92手目△3七角成 】
投了図での持ち駒
▲阿久津八段: 角、桂、歩5
△羽生名人: 金、銀、桂、歩
一昨日の火曜日(12日)に行われました
第28期竜王戦ランキング戦1組本戦トーナメント/決勝
注目の「羽生善治名人-阿久津主税八段」の一戦は
上図92手までで、後手・羽生名人が勝利。。
4手目△3二金。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: なし
△羽生名人: なし
振り駒の結果、先手となりました
阿久津八段の初手は飛車先を突く▲2六歩。
羽生名人も2手目に同じく飛車先を突く△8四歩と返して
対局はスタートとなりました。。
3手目に角道を開いた阿久津八段に対して
羽生名人は角の横に金を連結(上図4手目△3二金)。。
この手をみて、阿久津八段も次の5手目に▲7八金をし
後手に戦型の選択権を委ねます。。
6手目△3四歩。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: なし
△羽生名人: なし
上図で代えて△8五歩と飛車先を決めれば
「角換わり」への進行が濃厚となりましたが
羽生名人は角道を開き「横歩取り」を指向。。
15手目▲3四飛。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 歩3
△羽生名人: 歩2
羽生名人が誘導した形でそのまま定跡手順の進行となり
互いに飛車先で歩を交換してから、上図15手目の局面で
阿久津八段が2筋の浮き飛車でお隣り3筋の歩を掠め取り
戦型は「横歩取り」となりました。。
23手目▲5八玉。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 歩2
△羽生名人: 歩2
3筋に回った先手の飛車先を
角で受けた羽生名人は(16手目△3三角)
飛車を8四の地点に引き、玉を立てます。。
(22手目△5二玉)
一方、阿久津八段も後手に続いて玉を立て
まずは「相中住まい」模様から双方、自陣の駒組みへ。。
32手目△1五歩。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 歩2
△羽生名人: 歩2
羽生名人は「△5二玉型中原囲い」を採用。
最近は自陣右側に「美濃囲い」を作る△7二銀型が
主流となっている印象で、「△5二玉型中原囲い」は
久しぶりにみた気がします。。。
阿久津八段が
飛車のコビンを銀でカバーしてから(29手目▲3七銀)
飛車を元居た2八の地点まで引き戻し、重心低く構えると
羽生名人は1筋の歩を突き越しました。
互いに間合いを計り合いながら
開戦へ向けて、駆け引きを繰り広げます。。
36手目△8六歩。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 歩
△羽生名人: 歩
阿久津八段が飛車先2筋に歩を打ち込み
仕掛けの味付けをしたのをみて(35手目▲2四歩)
羽生名人は先に自らの飛車先の歩を突き合わせました。。
以下、▲同歩~△同飛(38手目)と進行して。。。
39手目▲3三角成。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 角、歩2
△羽生名人: 歩
阿久津八段はこのタイミングで角交換を敢行。。
角が捌かれ、開戦の機運が高まります。。
48手目△1六歩。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 歩
△羽生名人: 角、歩2
飛び込んできた角を桂馬で払った
羽生名人が遅ればせながら8筋に浮いた飛車で
お隣り7筋の歩を取ると、阿久津八段はすかさず
手にした角を盤上に再投入(43手目▲3四角)。。
しかし、この角の打ち込みがやや温かったのか
羽生名人はすぐに2筋に歩を垂らし(44手目△2五歩)
角の退路を断つと、9筋、そして1筋と続けて端歩を
突き合わせ、細かく模様を動かしていきます。。
52手目△1七角。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 歩3
△羽生名人: 歩
阿久津八段は端攻めは怖くないとばかりに
1筋の歩を真っ向から取り込むと(49手目▲同歩)
羽生名人の香取り、そして飛車取りには目もくれず
上図から次に。。
53手目▲2三歩成。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 歩3
△羽生名人: 歩
2筋から強く、踏み込みました。
羽生名人が△同銀で「と」金を払うと、以下
▲3三桂成~△3四銀~▲1八飛~△3三金~▲1七飛に
△2六歩~▲7七金~下図△62手目△同飛成と激しく進行。。
62手目△同飛成。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 角、桂、歩4
△羽生名人: 角、金、桂、歩
互いに意地を張り合うように駒が捌かれ
羽生名人は金との刺し違いで飛車も手放しました。。
上図から次に
阿久津八段が桂馬で飛車を捕獲し
握った手番で。。
64手目△2五桂。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 飛、角、桂、歩4
△羽生名人: 角、金、歩
羽生名人は手持ちの桂馬を投入し
お返しの飛車取りを仕掛けます。。
事前に2筋に垂らした歩が意味を持ち
阿久津八段が飛車を逃がせば再び手番は
羽生名人へと回りますが。。
65手目▲3五歩。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 飛、角、桂、歩4
△羽生名人: 角、金、歩
阿久津八段は飛車取りに構わず攻勢を強め
ここまで対戦成績で大きく負け越している大の苦手
羽生名人を相手に撃ち合いの勝負を求めました。。
76手目△2九同龍。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 飛、角、歩3
△羽生名人: 角、金、歩2
飛車を手放す間に
「横歩取り」の花形である二枚の桂馬を中央に並べた
阿久津八段は、羽生名人が機敏に作った龍を2筋に
呼び寄せてから。。
77手目▲5三桂左成。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 飛、角、歩4
△羽生名人: 角、金、歩2
まずは左の桂馬が羽生陣営に飛び込み
いざ、決戦を挑みます。。
しかし、上図から
△同銀~▲同桂成~△同玉~▲3八銀~△1九龍~
▲7一飛~△6一桂~▲2九歩ときて、下図86手目
△3七歩と厳しく進行。。
86手目△3七歩。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 角、歩3
△羽生名人: 角、金、桂、歩
阿久津八段の執念を乗せた
二枚重ねの桂馬ロケットも致命傷とはならず。。
続けて阿久津八段は後手と同じく手持ちの飛車を
起点に据えますが、時すでに遅し。。
ジッと龍を待機させる羽生名人が
底歩で粘りに出た阿久津八段の心を打ち砕くべく
「美濃囲い」を形勢する銀の頭上に歩を叩きつけ
形勢をしっかりと握りました。。
【 投了図・92手目△3七角成 】
投了図での持ち駒
▲阿久津八段: 角、桂、歩5
△羽生名人: 金、銀、桂、歩
阿久津陣の守備を崩した
羽生名人が自陣に打ち込んだ角を(90手目△8二角)
しなりを利かせ解き放した上図の局面をみて
阿久津八段は無念の投了へ。。
攻守ともにさすがのキレをみせた
羽生名人が完勝で2年連続となる1組優勝を飾り
20日に控える名人戦/第4局に弾みをつけました。。
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【 序 章 】
「私と将棋界」
柔らかブログ誕生のきっかけとなった
第21期竜王戦以降の将棋界を熱く振り返ります。
【 第一章 】
「愛知女子将棋界の駒音」
山口真子さん/中澤沙耶さんインタビュー
【 第二章 】
「明日咲く花」
今泉健司さんへのエール&ミニインタビュー