明日より、第54期王位戦7番勝負/第2局開幕。。
羽生善治王位に
行方尚史八段が挑戦する、第54期王位戦7番勝負。
開幕戦を羽生王位が制して迎える注目の第2局が
明日より、兵庫県神戸市「中の坊瑞苑」にて開幕。。
羽生王位の今期ここまでの成績は
16戦8勝8敗(.500)。
森内俊之名人に挑戦した
春の第72期名人戦から3タイトル連続出場中。。
名人戦は不調に終わった ものの
渡辺明三冠を挑戦者に迎えた第84期棋聖戦では
強さをまざまざとみせつけ、3勝1敗の成績で見事6連覇達成 。
棋聖戦と平行して開幕を迎えた王位戦も
開幕戦で圧勝 をおさめ、3連覇へ快心のスタートを切りました。
得意の夏場を迎え、調子はうなぎ上りに思われましたが。。
棋聖防衛直後となる先週の金曜日(19日)に行われた
第26期竜王戦決勝トーナメント/準決勝で、再び
現在最大の難敵となっている森内名人に行く手を阻まれ
竜王戦出場は叶わず。。。
前人未到空前絶後の大記録
「永世七冠」達成はまたしても、お預けとなってしまいました。。
対森内名人戦で押されているのと対照的に
対渡辺竜王戦は最近、押し込み始めているだけに
例年以上に大きなチャンスを逃した印象があり、他ならぬ
羽生王位自身が一番、失意を感じているはず。。。
しかし、落ち込む間を与えられることなく
普段は対局の行われない昨日日曜日も、羽生王位は登場。
加藤一二三九段との第21回達人戦/準決勝 を戦いました。
2手目△8四歩。
上図での持ち駒
▲加藤九段: なし
△羽生三冠: なし
振り駒の結果、先手は加藤九段。
例によって、激しく駒を盤上に叩きつけ
気合もろともぶち込まれた、初手は▲7六歩。。
対照的に、羽生三冠は
頭を垂れたまま、なかなか2手目を返さず
しばし間を置きます。。
「羽生三冠が指さないなら、私が」
やる気満々の加藤九段が二手目も指してしまうのでは。。
昨年の森内名人戦の迷場面 が頭をよぎった瞬間に
指された、羽生三冠の2手目は、飛車先の歩を突く△8四歩。
生ける伝説・加藤九段に敬意を払うかのように
居飛車を明示し、戦型選択を先手に委ねました。。
5手目▲7七銀。
上図での持ち駒
▲加藤九段: なし
△羽生三冠: なし
加藤九段の3手目はもちろん▲6八銀。
拘りと自信を乗せて「矢倉」を志向。。。
羽生三冠の4手目△3四歩に対し
最近はめったにお目にかかれない▲7七銀を採用。
羽生三冠戦という晴れ舞台でもマイペース。。
大物が大物である所以をみせつけます。
しかし、加藤九段はいつでも本気。。
貪欲に、そして強かに勝利を目指します。。
そのむせかえるような情熱を前にして
さすがの羽生三冠も、上着を脱がずにはいられませんでした。
35手目▲1六歩。
上図での持ち駒
▲加藤九段: なし
△羽生三冠: なし
次第に盤上には見慣れた模様が描き出され
戦型は「相矢倉」。
加藤九段は
1筋の歩を突き相手の出かたをみてから作戦を決める
偉大なる矢倉定跡の一つ、「加藤流」を採用。。
手を渡された後手・羽生三冠にとっては
作戦の岐路となりますが。。
36手目△7三銀。
上図での持ち駒
▲加藤九段: なし
△羽生三冠: なし
羽生三冠の選択は攻め合いを目指す△7三銀。
以下、▲4六銀~△7五歩~▲同歩~△4五歩~▲3七銀~
△7五角~▲7六歩~△6四角。。
加藤九段が耕した
定跡を踏襲しながら、淀みなく静かに開戦を待ちます。
61手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲加藤九段: 歩2
△羽生三冠: 歩
ジリジリとした間合いの計り合いがしばし続いた後
加藤九段から2筋の歩を突きあわせて、いよいよ開戦へ。。
以下、△同歩に▲5六金。。。
加藤九段は位を角、銀、飛車に狙われている
天王山5五の位を死守するべく、守り駒の金を囲いから外して
援軍を送りました。
数で勝る羽生三冠は
構うことなく64手目△5五銀と出て、捌きに行きます。
次に同金と加藤九段は応じるより他なく(65手目▲同金)
以下、△同飛~▲5六歩~△5一飛~
羽生三冠は5五の位を先手から奪い
駒を捌きつつ飛車先の歩も切って満足気に、自陣最下段へと
飛車を下げました。
87手目▲1五桂。
上図での持ち駒
▲加藤九段: 歩3
△羽生三冠: 金、銀、歩2
5筋を押さえ込まれた加藤九段は
羽生玉が居を構える2筋で歩を叩いて玉頭戦に
活路を見い出そうとします。。
薄い戦力ながらも
銀との交換で手にした桂馬を1筋へと投入し
角とのコンビネーションでいざ、勝負へ。。
104手目△6八銀。
上図での持ち駒
▲加藤九段: 桂、歩2
△羽生三冠: 角、桂、歩
しかし
羽生三冠は攻撃にかける時間もスペースも与えず
あっという間に加藤陣営を押しつぶし、加藤角も悠々と捕獲。。
その圧力の前に
形勢は一気に羽生三冠へと傾きました。。
【 投了図・114手目△8七銀 】
投了図での持ち駒
▲加藤九段: 角、歩2
△羽生三冠: 銀、桂
最後も加藤九段の反撃を許さない
厳しい寄せをみせた羽生三冠が、上図114手までで勝利。
3連覇を目指す決勝戦進出を決めました。
そして、本日
東京から神戸へと移動し、明日のタイトル戦に臨む羽生王位。
7月はここまですでに
2つのタイトル戦を含めて5局の公式戦を消化。
(昨日の達人戦を含めると6局)
特にこの一週間は
17日(水)の棋聖戦/第4局・渡辺三冠戦
19日(金)の竜王戦決勝T/準決勝・森内名人戦
21日(日)の達人戦/準決勝・加藤九段戦
と、濃厚な相手とばかり
2日おきに対戦しさすがに疲労が心配されますが
対局が重なれば重なるほど元気が出るといわれる
羽生王位にとっては真価の発揮しどころと言えるのかも。。
一方、挑戦者・行方八段の今期ここまでの成績は
14戦12勝2敗(.857)とハイアベレージをキープ。
初めてのタイトル戦でもあった開幕戦を落とした後も
A級順位戦/2回戦で、居飛車党屈指の実力者・深浦九段に
勝利をおさめ 、ショックを引きずる様子は全くみられません。
先手となる明日からの第2局
まずは一つ白星を飾り、落ち着きたいところであります。
両者の対戦成績は
ここまで8戦して、羽生王位の6勝2敗。
羽生王位が先手だった開幕戦の
戦型は「角換わり相腰掛銀」となりましたが
第2局も相居飛車が濃厚。。
行方八段が先手番のわずかな利を
活かしきることが出来るか、序盤から目に離せません。。