第38期棋王戦挑戦者決定二番勝負/第1局「大熱戦、羽生三冠が制す」
郷田真隆棋王への挑戦権をかけて
本日行われています第38期棋王戦挑戦者決定二番勝負
注目の 「渡辺明竜王-羽生善治二冠」の第1局。
本戦優勝者 である渡辺竜王には
1勝のアドバンテージが与えられており
本日の二番勝負/第1局に勝利すれば、その瞬間に
棋王戦挑戦が決定します。
羽生三冠が挑戦権を挑戦権を獲得するためには
この二番勝負、連勝が絶対条件。。
今期8度目の頂上決戦(1千日手含む)は
振り駒の結果、後のない羽生三冠が先手となりました。
3手目▲6八銀。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△渡辺竜王: なし
羽生三冠の初手▲7六歩に対し
渡辺竜王はいつものように、飛車先の歩を突き
居飛車党の誇り、2手目△8四歩と返してスタート。。
戦型選択を委ねられた羽生三冠の3手目は
「矢倉」を示唆する▲6八銀でした。
15手目▲6九玉。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△渡辺竜王: なし
渡辺竜王も羽生三冠の動きに追随し
「将棋の純文学」、矢倉を目指す駒組みが進行。。
今期、順位戦の最高峰A級では
屋敷伸之九段を中心 とし、ほとんどの棋士が「相矢倉」を採用し
最先端の構想、見解をめぐり真っ向勝負が繰り広げられています。
ある意味、今もっとも熱い戦型で
両者がどのような戦いをみせるのか、胸の高鳴る序盤戦となりました。
上図から次の16手目が、後手の作戦の最初の岐路。
△7四歩とすれば
伝説の第21期竜王戦や、今秋の第60期王座戦でも採用された
渡辺竜王の十八番「阿久津流急戦矢倉」
△5二玉とすれば
ガッチリと双方の玉が入城を果たすまで駒を組み上げる
「相矢倉」の持久戦志向となります。
32手目△2二玉。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△渡辺竜王: なし
渡辺竜王の選択は、ガッチリと四つに組む
持久戦志向の△5二金。。
以後、定跡手順で格調高く駒が組み上げられ
「相矢倉」が完成。
42手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△渡辺竜王: なし
羽生三冠は現代矢倉の主戦中の主戦
「▲4六銀3七桂」型に構え、先に仕掛けて主導権を握りに行く方針。
対する渡辺竜王は、このタイミングで飛車先の歩を決める
「△8五歩」型で対抗。。
先手の穴熊を警戒すると同時に
渡辺竜王の必殺技の一つ「端攻め」への布石ともなる
「△9五歩」型も有力でしたが、今回は「8五歩」型で。。。
50手目△4五歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△渡辺竜王: なし
この渡辺竜王の動きに対し
羽生三冠は9筋の歩を受けてから(45手目▲9六歩)
6筋の歩を突き越し、渡辺角を下げさせ、6六のポジションに
左の銀を繰り出しました。
するとすかさず
渡辺竜王は4六に構える羽生銀の頭上を叩き
開戦を迫ります。。
59手目▲3五歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 桂、歩2
△渡辺竜王: 銀
4筋で桂・桂交換が成立した直後
渡辺竜王は自陣へ手にして桂馬を打ち込み
羽生三冠の浮き上がった右の銀をし止めにいきます。
羽生三冠は銀損に構わず駒を前へと前進。。
この展開は先日ご紹介 させていただきました
C級2組順位戦/7回戦「▲斎藤四段-牧野四段」と同じ。
下敷きとなっているのでしょうか。。
61手目▲3四桂。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩2
△渡辺竜王: 銀、歩
上図61手目で羽生三冠は新手を披露。
上記対局の斎藤四段を始め、前例のある7局は全て
▲3四歩としたところで、羽生三冠は桂馬を投入。
王手・銀取りを仕掛けました。。
68手目△7七角成。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、歩2
△渡辺竜王: 角、銀2、歩2
羽生三冠は3五に配した桂馬で銀をすぐには取らず
3筋を攻撃の基点とし、足場を固めます。。
その間に、渡辺竜王は積極的に撃ち合いを挑み
上図68手目には王手で角交換が成立。
激しい中盤戦となりましたが
しかし、ここから羽生三冠がカウンター攻撃を開始。。
79手目▲4五桂。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、銀、歩2
△渡辺竜王: 角2、銀2、桂、歩2
交換した角をすぐに渡辺陣営に投入した(71手目▲7一角)
羽生三冠は、この手を合図に攻撃の手が鮮やかにつながり
渡辺陣営は駒がバラけ、渡辺玉は丸裸に。。。
86手目△6九銀。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、銀、歩3
△渡辺竜王: 角、銀、桂2、歩2
しかし、渡辺竜王も黙ってはおらず
銀とりに構わず82手目△2七角から反撃を開始。。
上図86手目にはタダのポジションに銀を叩きつけ
執念の巻き返しをはかります。。
93手目▲5六銀。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、銀、歩5
△渡辺竜王: 角、銀、桂
渡辺竜王は
銀をタダ捨てしてまでして呼んだ羽生龍を抜きにかかります。
しかし自陣がまだ手厚い羽生三冠は金と銀でガッチリブロック。。
100手目△6六歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 銀、歩5
△渡辺竜王: 角、銀、桂
渡辺竜王の絡みつくよな攻撃は続き
羽生陣営も次第に駒の配置が乱れ始めます。。
上図から羽生三冠の次の手は▲同金直。
この手をみて渡辺竜王がつねに危険に晒されてきた
2五の銀を逃がした(102手目△2六銀)、そのタイミングで。。
109手目▲5五金上。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、銀、歩7
△渡辺竜王: 角、銀2、桂2
それまで受けに回っていた羽生三冠が
ついに反撃開始。。銀と二枚の金が猛然と
いざ渡辺玉を目指して襲いかかります。。
115手目▲3三歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、銀、歩5
△渡辺竜王: 角、銀2、桂
渡辺竜王の4一桂馬(110手目)の受けもものともせず
羽生三冠はどんどん圧力を強めます。。
そして、上図では
渡辺竜王の▲7五歩を無視して、玉の頭上に歩を投下。
勝利を確信した瞬間。。
【 投了図・117手目▲6一龍 】
投了図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、銀、歩5
△渡辺竜王: 角、銀2、桂
上図117手目をみて、渡辺竜王無念の投了。
しびれるねじり合いを制した羽生三冠が勝利をおさめ
棋王戦挑戦権の行方は、決着戦となる第2局へともつれ込みました。