第25期竜王戦7番勝負/第5局「渡辺竜王、歴史的死闘を制し9連覇達成!」
80手目△8七桂。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 桂、香、歩
△渡辺竜王: 歩4
ここまで8連覇を続ける竜王戦を舞台に
名だたる強豪を強烈なカウンターパンチ一発で、ことごとく
ねじ伏せてきた渡辺竜王。
上図80手目△8七桂。。
今年も、防衛に王手をかけた大一番・第5局で
渡辺竜王らしく、思い切りよく相手の懐に飛び込み痛烈な強打が
決まった局面。。
「これは気付かない手ですね。
新しい感覚の手で、渡辺流といった桂打ちです。」
(80手目の棋譜中継コメント欄より。
ニコ生で解説を務める森下卓九段のコメント)
残り時間で大差をつけられている
挑戦者・丸山九段は、このピンチをしのぐことが出来るのか。。。
渡辺明竜王に
丸山忠久九段が挑戦する第25期竜王戦7番勝負。
ここまで4局を消化し、渡辺竜王が3勝1敗とリード。
前人未到の竜王戦9連覇に王手がかけられてむかえた
注目の第5局が昨日より、新潟県南魚沼市「龍言」にて開幕。
第5局の先手は、カド番でももう後のない丸山九段。
初手▲7六歩から△8四歩~▲2六歩と進行し、むかえた
渡辺竜王の戦型選択が明らかとなる、注目の4手目。。。
4手目△3二金。
上図での持ち駒
▲丸山九段: なし
△渡辺竜王: なし
渡辺竜王は角道を開けることなく
先手の飛車先を金で受け、「角換わり」への進行を目指します。
10手目△7七角成。
上図での持ち駒
▲丸山九段: なし
△渡辺竜王: 角
以下、定跡手順の進行となり
上図10手目に、渡辺竜王から手損の無い角交換へ。。
今シリーズは、丸山九段が先手の時はノーマルに、
渡辺竜王が先手の時は一手損でそれぞれ後手から角交換。
開幕から5局連続で「角換わり」からの勝負となりました。
25手目▲5六銀。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 角
△渡辺竜王: 角
角交換成立後は、互いに細かなけん制を入れながら
同じ手番だった開幕戦/第1局、第3局と同じ戦型となる
「角換わり相腰掛け銀」へと模様は進行。。
36手目△7三桂。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 角
△渡辺竜王: 角
丸山九段が
この戦型でこだわりをみせている玉を早めの入城させる
趣向を披露すれば(33手目▲8八玉)
渡辺竜王も
第1局、第3局では活用されることのなかった右の桂馬を跳躍させ
新構想投入を示唆。。
タイトルの行方のかかった大一番ということで
両者ともに時間を使い、慎重に指し手を進めながら、徐々に
局面を煮詰めていきます。
【 一日目終了図・47手目▲6五同歩 】
上図での持ち駒
▲丸山九段: 角、歩
△渡辺竜王: 歩
一日目は、渡辺竜王が4筋に角を嫌らしく角を垂らした上で
6五の地点に争点を作った上図47手目の局面で終了時刻となり
渡辺竜王が次の48手目を封じて、終了となりました。
すでに一日目の消費時間で2時間の差をつけられた丸山九段。
渡辺竜王が局面をリードし、丸山九段が慎重に読み進める展開に
感じられた一日目から、一夜が明け
48手目△6五同桂。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 角、歩
△渡辺竜王: 歩2
いよいよ本日、決着の二日目は
渡辺竜王の「封じ手」上図△6五桂からスタート。。
55手目▲7九玉。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 角、歩3
△渡辺竜王: なし
二日目の開始から積極的に攻撃の形を整える渡辺竜王が
飛車先で歩を垂らすと、丸山九段はたまらず玉を下段へと避難。。
すると
上図の局面で、渡辺竜王が長考に沈みます。。
56手目△4二金右。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 角、歩3
△渡辺竜王: なし
1時間41分の大長考の末
指された渡辺竜王の次の手は、4二金右。
離れていた二枚の金をジッと引き寄せ、自陣を固めました。
この手をみて、丸山九段が動きます。。
59手目▲7三角。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 歩3
△渡辺竜王: 歩
4六に居座る渡辺角をどかしてから(57手目▲3五歩~△同角)
渡辺飛車のこめかみに角を突き立て反撃開始。。
64手目△9五歩。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 歩2
△渡辺竜王: 歩2
しかし、丸山九段の反攻に対し
渡辺竜王は怯むどころか逆に飛車、角が先手陣へと迫り
攻撃の圧力をさらに強めます。。
丸山九段の角が成りこみ(63手目▲5一角)
渡辺竜王が端歩を突き合わせた上図の局面までで
緊張感高まる中、お昼休憩に突入。。
【 お昼のメニュー 】
丸山九段: ぶりかまの照り煮定食
渡辺竜王: お刺身定食
本日は両者ともに魚。
肉食流でその名を上げた丸山九段には、やや物足りなさも感じますが
ただ丸山九段は本日も10時のおやつで温泉まんじゅう4個 を平らげての
ぶりかま照り煮定食となっています。
75手目▲6四馬。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 香
△渡辺竜王: 歩4
午後の対局が再開されても
丸山九段はなかなか次の一手を指さず、長考を続けます。
休憩前の考慮時間も含めて一時間近く考えてから
指された丸山九段の65手目は▲4三歩。。
渡辺竜王は同金と応じて「矢倉囲い」が完成。
さらに角も取り込み、銀、桂、飛も連動した強固な陣形が
築き上げられました。。
その間に
丸山九段は馬を暴れさせ、香得を主張。。
しかし、上図から次に
渡辺竜王は76手目△7七歩成から猛攻を開始。
以下、▲同桂~△同桂成~▲同銀~と進行して。。。
80手目△8七桂。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 桂、香、歩
△渡辺竜王: 歩4
取った桂馬を狙い済ました一打で投入。
次に▲同歩では、さらに△同歩成で「と」金を許すこととなる
丸山九段の次の手は81手目▲6八玉。
その手をみて、渡辺竜王は香車を取り返します。。
(82手目△9九桂成)
83手目▲3六桂。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 香、歩
△渡辺竜王: 香、歩4
しかし、丸山九段もすぐに桂馬を投入し反撃。。
簡単に土俵を割るわけにはいきません。
87手目▲2七香。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 歩
△渡辺竜王: 香、歩4
桂馬に続いて、香車も投入。
渡辺玉の頭上へ全力で戦力を集中し、反撃の時を待ちます。
93手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 歩2
△渡辺竜王: 香、歩5
己を鼓舞するように臨戦態勢をきずいた丸山九段に対し
優勢を自覚しているであろう渡辺竜王は
飛車と角のポジションを微調整した後、丸山九段の攻撃を
真っ向から受けて立ち、切らしにいきます。。
上図から
△同銀~▲同香~△同歩~▲4四歩~△3三金寄~▲5二馬~
そして、下図100手目△4二歩。。
100手目△4二歩。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 銀、歩
△渡辺竜王: 香2、歩5
丸山九段、必死の攻撃を
渡辺竜王は粛々と受け続けながら、終盤模様を深めていきます。。
105手目▲2三歩。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 銀
△渡辺竜王: 香2、歩6
ついに歩切れに追い込まれた丸山九段ですが
しかし、戦地から遠く離れた9筋で一歩を調達し(103手目▲9五歩)
その歩で渡辺玉を叩き、勝利への執念を燃やし続けます。。。
108手目△5四香。
上図での持ち駒
▲丸山九段: なし
△渡辺竜王: 香、歩7
丸山九段の絡みつくような攻め手が続く中
渡辺竜王は機をみて反撃の味付け。
最終盤戦、ジリジリとする時間が流れます。。。
113手目▲7七玉。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 金
△渡辺竜王: 銀、歩7
さらに二枚目の香車ロケットが設置されると
丸山九段は玉を上段へと移動。。入玉の含みなのでしょうか
118手目△6七香成。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 歩
△渡辺竜王: 銀2、歩8
あらゆる手段を講じて
何が何でも勝利をもぎ取ろうとする丸山九段を振り切るように
ここまで慎重に対応していた渡辺竜王が猛攻。。
121手目▲6七同金。
上図での持ち駒
▲丸山九段: 香2、歩
△渡辺竜王: 金、銀2、歩8
しかし丸山九段は決め手を与えず
第5局は大熱戦、竜王戦史上に残る死闘となりました。。
【 投了図・144手目△3二玉 】
投了図での持ち駒
▲丸山九段: 香、歩2
△渡辺竜王: 飛、金、香2、歩8
いつ果てるとも知れない死闘を制したのは
やはり、渡辺竜王。
上図144手までで粘る丸山九段を振り切り
見事、竜王戦9連覇を達成しました!