第60期王座戦5番勝負/第1局「羽生二冠、寄せきるか。。」
初防衛を目指す渡辺明王座に
前期のリベンジを期す羽生善治二冠が挑戦する
注目の第60期王座戦5番勝負。
本日、宮城県は仙台市「ホテルメトロポリタン仙台」にて
いよいよ開幕の時を迎えました。。
大事な開幕戦
振り駒の結果、先手となったのは羽生二冠。
初手▲7六歩をみて
渡辺王座はいつものように2手目△8四歩と返し
羽生二冠に戦型選択を委ねます。。
3手目▲6八銀。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: なし
△渡辺王座: なし
羽生二冠は迷うことなく3手目▲6八銀とし「矢倉」を明示。
渡辺王座の2手目が△3四歩だった場合
「横歩取り」への進行が濃厚に思われましたが
現実的には△8四歩こそが「本命」であり、想定の範囲内。
「角換わり」との天秤ではかっても
やはり「矢倉」への進行は必然だったと思われます。。
13手目▲7八金。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: なし
△渡辺王座: なし
生粋の居飛車党である渡辺王座も当然受けて立ち
一路、「相矢倉」を目指す展開に。
開始から定跡手順の進行をみせ
互いに玉をがっちりと囲い合うのかと思いきや。。
18手目△5三銀右。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: なし
△渡辺王座: なし
先に動いたのは、渡辺王座。
△7四歩~△5三銀右とし、急戦矢倉を志向。。
渡辺王座が羽生二冠を相手に連続投入し
3連敗から4連勝という将棋界史上初の奇跡の大逆転劇の
原動力となった、両者にとって因縁の「阿久津流」。
ここ最近の対羽生二冠戦で
2局続けて大舞台で後手番の「相矢倉」戦で負けているだけに
渡辺王座としては、目先を変えたい思いもあったはず。。
20手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: なし
△渡辺王座: なし
この「急戦矢倉」の最初の手筋
飛車先の歩を決め、先手に▲7七銀と受けることを要求。
受けさせてから(21手目▲7七銀)
△5五歩~▲同歩~△同角と5筋で歩を交換するのが
定跡となっていますが。。。
21手目▲2五歩。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: なし
△渡辺王座: なし
この戦型には痛い目をみている
羽生二冠はあえて飛車先の歩を受けることなく
自らも2筋も歩を伸ばしました。
この手により、前例は一気に減り
わずか4局となり、戦跡は先手の3勝1敗とのこと。
渡辺王座が相手となると
ムキになって踏み込んだり、強引に咎めにいって墓穴を掘る
パターンもまま見られる羽生二冠ですが
今回は想定の、そして研究の範囲内だったのでしょうか。。
ならば、と渡辺王座は次に飛車先の歩を切りにいきます。。
(22手目△8六歩)
27手目▲3六歩。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: なし
△渡辺王座: 歩
22手目△8六歩から
▲同歩~△同飛~▲8七歩~△8五飛と進行。
渡辺二冠は「横歩取り」のような浮き飛車に構えました。
それをみて上図27手目に羽生王座は▲3六歩。
後手にあえて飛車先の歩を切らせた上に歩持たせ
自らは飛車先の歩の交換は保留。。
この局面で前例はなくなりました。
28手目△5五歩。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: なし
△渡辺王座: 歩
不気味な沈黙を続ける羽生二冠に対し
渡辺王座は積極的に指し進めます。
飛車のコビンが開いたのをみてすかさず△5五歩。
▲同歩~△同角~の進行となれば、せり出した角が
羽生飛車を直撃。。
そうなっては大変と、羽生二冠は29手目▲4六歩から
△5六歩~▲4七銀の進行。
まだ、刀は鞘におさめたまま。。
35手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 歩
△渡辺王座: 歩2
慎重に間合いを計る羽生二冠。
5筋で銀が向かいあい、緊張感が高まる中
このタイミングで飛車先の歩を切りに行きました。。
44手目△3一玉。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 歩2
△渡辺王座: 歩2
飛車先の歩を切った後
羽生二冠は浮き飛車に構える後手とは異なり
元居た地点まで飛車を引き下げました(39手目▲2八飛)。
双方、右の桂馬を跳躍させ活用を計り
角が捌かれておらず、窮屈ながらも、玉を寄せ合います。。
上図44手目までで、お昼休憩に。
【 お昼のメニュー 】
羽生二冠: 特製牛タンシチュー、ライス、フレッシュグレープフルーツジュース
渡辺王座: 蟹肉入りチャーハン
48手目△6五歩。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 歩2
△渡辺王座: 歩2
羽生二冠が午後開始から
45手目▲9六歩~▲9七角と、角の活用を計ると
渡辺王座も争点となっていた6五の地点に歩を合わせ
開戦ムードはピークに。。
50手目△6六歩。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 歩2
△渡辺王座: 歩3
羽生二冠の49手目は▲7七桂。
飛車取りもかかりましたが、渡辺王座は怯まず
上図50手目△6六歩と突進。。
羽生二冠は胸突き八丁
次に金との交換で飛車を取るのか、あるいは金をよけるのか
選択を迫れます。
羽生二冠の選択は
飛車取りよりも、まずは金を守ることを優先(51手目▲5七金)。
それをみて渡辺王座も
飛車を自陣まで引き下げました(52手目△8三飛)。。
56手目△9五歩。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 歩2
△渡辺王座: 歩4
一旦、呼吸を整えてから
羽生王座が再び飛車先の歩を切ると
渡辺王座は9筋の歩を突きあわせ、角の移動を催促。。
次の瞬間
57手目▲4二角成。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 銀、歩2
△渡辺王座: 歩4
羽生王座は思い切り良く角を飛び込ませ
いよいよ開戦となりました。。
61手目▲4五桂。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 銀、歩
△渡辺王座: 角、歩4
角を切ってからは羽生王座が猛攻。。
上図61手目の局面での棋譜中継コメント欄には
「現代の幸三」こと佐藤康光王将の
「歴史上、こういう筋は見たことがありません」
との発言が掲載され、羽生二冠の本局にかける意気込みを代弁。
強手ばかりで踏み込むのではなく
曲線的に強く踏み込む。。羽生二冠らしい指し回しですが。。
65手目▲2一銀不成。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 桂、歩
△渡辺王座: 角、歩5
とりあえず9筋を通してから、まだ受けにまわる渡辺王座。
羽生二冠はさらにトントン拍子に踏み込み続けます。。
上図から
△3一金~▲2二歩成~△同金~と進行したところで
羽生二冠は手を止め、長考に。。。
69手目▲3三桂打。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 歩
△渡辺王座: 角、歩6
じっくりと読みを入れ直してから
放たれた羽生二冠の69手目は角の利きを塞ぎ
王手をかける▲3三桂打ちでした。。
玉を逃がしたいところですが
逃げると2二飛車成が実現し、金も渡してしまうため
渡辺王座の70手目はあえて狭く危険な側へと
玉を動かす△3一玉。。。
72手目△3三金。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: なし
△渡辺王座: 角、桂、歩6
畳み掛ける羽生二冠の71手目▲2三歩に対し
渡辺王座は3三金とし、まずは桂馬を払いました。。
厳しい終盤戦模様にみえますが
苦しい局面でも目が冴え、無いはずの手が伸びて来るのが
渡辺王座の真骨頂。。
この局面で再び、羽生二冠は長考に。。
羽生二冠の考慮中に夕食休憩の時間となり
上図72手までで、一旦、中断。。
19時より、対局再開となります。
【 夕食のメニュー 】
羽生二冠: 海鮮焼きそばとフレッシュオレンジジュース
渡辺王座: 豚肉細切り焼きそば
武者震いのする終盤戦
果たして制するのは、どちらとなりますでしょうか。。