第32回将棋日本シリーズ/決勝戦を振り返ろう。。
昨日、「東京ビッグサイト」にて行われました
第32回JT将棋日本シリーズ/決勝戦「羽生善治二冠-渡辺明二冠」の
詳細がアップ されました。
結果は128手までで後手・羽生二冠が勝利。
昨年度に続く連覇で、通算5回目の優勝を飾りました。
2手目△8四歩。
振り駒の結果、先手となったのは渡辺二冠。
初手はいつものように▲7六歩。
対します羽生二冠の2手目は
居飛車を明示すると同時に、戦型選択を相手に委ねる
王者の応手△8四歩でした。
とはいえ
渡辺二冠相手に2手目△8四歩ということは
事実上「相矢倉」の催促。。
渡辺二冠はもちろん受けて立ち
3手目は▲6八銀。決勝戦は両者得意の「矢倉戦」へ。。
35手目▲3七桂。
上図での持ち駒: 両者ともになし。
常に定跡、本筋を前提とした猛烈な研究量で
他の棋士を圧倒し現在の地位を築いた渡辺二冠は、いつものように
「矢倉」の定跡手順からおなじみの「4六銀3七桂」型に組あげました。
ちなみに上図35手目の模様は
羽生二冠が先手を持った今期の第69期名人戦/第4局 や
前期の第60回NHK杯/準決勝の渡辺竜王戦 などと全く同じ。
羽生二冠にとっても勝手知ったる、両者充分の進行をたどります。
53手目▲1五歩。
ここまでの持ち駒: 両者ともになし。
さらに現代矢倉定跡の最新形で進行し
渡辺二冠は、これまたおなじみとなった「ハッチを閉めない穴熊」に
玉をおさめてから端歩を突きあわせ、戦いが始まりました。。
63手目△1一香成。
上図での持ち駒
▲渡辺二冠: 香、歩2
△羽生二冠: 銀、桂、歩3
渡辺二冠はまず、後手に先に銀と桂馬を取らせてから
1筋の香車を走らせ成りこませました。。
69手目▲3五角。
上図での持ち駒
▲渡辺二冠: 銀、香、歩2
△羽生二冠: 銀、歩
しかし駒の交換を放置したので
渡辺飛車はあっという間に羽生二冠に捕まりました。
が、渡辺二冠は構わず
まず飛車を見捨てる形で角で銀を取ってから。。
73手目▲1三角成。
上図での持ち駒
▲渡辺二冠: 銀、香、歩
△羽生二冠: 飛、銀、歩
1筋で馬を作り、端に攻撃の厚みを築いた渡辺二冠。
80手目△8六歩。
上図でも持ち駒
▲渡辺二冠: 銀、桂、歩
△羽生二冠: 飛、銀、歩2
1筋を基点に2筋、3筋からの圧力を強める渡辺二冠に対し
ここまで受けに回って羽生二冠が8筋で飛車先の歩を突きあわせ
反撃の狼煙を上げます。。
84手目△8八歩。
上図での持ち駒
▲渡辺二冠: 銀、桂、歩2
△羽生二冠: 銀、歩
81手目▲同歩ではなく▲同銀と応じた渡辺二冠に対して
羽生二冠はすばやく飛車を3八の地点に投入から歩のたたきをいれ
迫力のある攻撃を立て続けに仕掛けます。
89手目▲6九歩。
上図での持ち駒
▲渡辺二冠: 銀、歩2
△羽生二冠: 歩
嵩にかかって攻める羽生二冠を前に
渡辺二冠は「岩より固い」と言われる金底の歩で応戦。
羽生二冠攻勢のまま、もはや終盤戦に突入。。
か、と思いきや
97手目▲同3三馬。
上図での持ち駒
▲渡辺二冠: 金2、銀2、歩3
△羽生二冠: 桂、香、歩
そこから渡辺二冠の
切れ味鋭いカウンター攻撃が炸裂。。
味をつけておいた端からたたみ掛け
あっという間に羽生玉は丸裸に。。。
しかし、羽生二冠は次の98手目に
△5五角と角をせり出し、自陣はこのままで再び攻勢に出ます。。
103手目▲7九金。
上図での持ち駒
▲渡辺二冠: 金、銀2、歩3
△羽生二冠: 金、香、歩
その攻撃に対して渡辺二冠は
「鉄板流」森内俊之名人、「激辛流」丸山忠久九段ばりに
超手厚き防御壁を築いて迎え撃ちます。。
ちょっと渡辺二冠らしくない模様にも思えますが。。
111手目△7一銀。
上図での持ち駒
▲渡辺二冠: 金2、銀、桂、歩3
△羽生二冠: 金、香、歩
分厚壁を者ともせず
どんどん踏み込み駒を剥がしていく羽生二冠。
おかげで持ち駒が潤ってきた渡辺二冠は
すかさず反撃に出ますが。。
112手目△8六飛。
上図での持ち駒
▲渡辺二冠: 金2、銀、桂、歩3
△羽生二冠: 飛、金、香、歩
羽生二冠は勝利をすでに確信したかのように
ズバッと飛車切り。。
【 投了図・128手目△8三香 】
投了図での持ち駒
▲渡辺二冠: 飛、角、金2、銀2、桂、歩3
△羽生二冠: 歩
羽生二冠は一歩を残して持ち駒を全て渡しながら
圧倒的な猛攻。。さすがの渡辺二冠も逃げ惑うのみとなり
上図128手までで無念の投了となりました。
昨日は第61回NHK杯/2回戦・戸辺誠六段戦 も放送され
ものの見事な勝利をおさめた羽生二冠。
持ち時間が短い棋戦での羽生二冠の強烈な強さをあらためて
見せ付けられた、日曜日となりました。