鬼神の強さ。。羽生二冠、朝日杯優勝を振り返ろう
【 第5回朝日杯/準決勝・羽生二冠-菅井五段 】
14手目△4四歩。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: なし
△菅井五段: なし
「この10年で
この二人以外に名人になった者はいない。
去年は森内が勝って羽生から名人を取ったわけですが
今期はどうか。
羽生は目下A級で全勝中で、何しろ怒ってるからね~」
1月4日。第2回上州将棋祭りにて行われた
永世名人対決「森内名人-羽生二冠」で大盤解説を務めた
米長邦雄将棋連盟会長の発言(将棋世界2012年3月号P113)
「怒ってるからね~」の後には一応「(笑)」となっていましたが
発言は率直かつ、正直な米長会長の感想であり、大方の将棋ファンも
同意せざるを得ないのでは、ないでしょうか。
順位戦は開幕から8戦全勝。
ブッチギリの独走で最終戦を待たずに名人挑戦権を手にした 羽生二冠。
順位戦では勝負に拘り、手厚く負けない将棋を志向しながらも
勝負どころでは羽生二冠らしい柔らかい手を織りなす横綱相撲で
選ばれしトップ10・A級棋士相手にも、つけ入る隙を与えませんでした。
春から4連続登場となったタイトル戦が一段落した秋以降は
持ち時間の短い棋戦や予選が続きリズムが出たのか調子はうなぎ上り。
羽生二冠の10月以降の成績は22戦18勝4敗(.818)
昨年12月以降は負け知らず、現在11連勝中となっています。
10月には天敵・渡辺明二冠との決勝戦を制し
第32回将棋日本シリーズで優勝 。昨年に続く2連覇を達成。
前人未踏の4連覇を目指す第61回NHK杯は昨日
郷田真隆九段との準々決勝が放送され、99手までで勝利 。
NHK杯の連勝を「18」に伸ばし、4連覇へマジック2としました。
そして先週の土曜日には
昨年度は準優勝に終わった第5回朝日杯将棋オープンの
まずは準決勝戦に登場した羽生二冠。
5月の名人戦の最中に対戦し敗れた因縁の相手
菅井竜也五段とのリベンジマッチにのぞみます。
羽生二冠の先手となり
振り飛車党の最先端をいく男・菅井五段は十八番
「ゴキゲン中飛車」を投入。羽生二冠が「超速▲3七銀」をみせると
自らの名を冠する上図14手目△4四歩「菅井流」で対抗。。
それをみて、羽生二冠
15手目▲7八銀。
「▲7八銀はまったく考えていなかった」
(感想戦での菅井五段の発言)
用意の新手は殺気溢れる▲7八銀。
菅井戦での新手投入ということで
「今度会ったら、必ずしとめる」。。そう言っているかのよう。
69手目▲7八金。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 歩
△菅井五段: なし
序盤から主導権を握り
二枚の銀が軽快の動き回った羽生二冠ですが、あえて踏み込まず。
「攻めて来いよ」
あえて厚みを作り、菅井五段の仕掛けを呼び込みます。
93手目▲9八玉。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 飛、金、銀
△菅井五段: 飛、角、歩3
幾多の期待の若手が味わった
「お釈迦様の手の中で」的にもてあそばれて終わるのか。。
いや、振り飛車党の未来を握る超大器・菅井五段はやわじゃない。
ジッと我慢し羽生二冠の、その上を目指し、勝利を狙います。
羽生二冠は試すかのように自玉を狭いところへ。。
113手目▲5二「と」金。
上図での持ち駒
▲羽生二冠: 飛、金2、桂、歩2
△菅井五段: 角、銀、歩2
ならばと踏み込んだ菅井五段に対し
羽生二冠は猛烈に受けるスリリングな展開に。。
形勢はかなりつまってきたように感じ始めた上図113手目で
羽生二冠は9筋の香車を見捨てて、もう見切ったとばかりに反転攻勢。。
ここからさらに攻防は激化しますが。。
【 投了図・145手目▲同8五玉 】
投了図での持ち駒
▲羽生二冠: 金2、桂、香2、歩3
△菅井五段: 歩
最後まで
羽生二冠が菅井五段の攻撃が尽きるまで受け切り
上図145手までで菅井五段、無念の投了となりました。
きっちりと菅井五段へのリベンジを果たし
羽生二冠は午後からの決勝戦へと進出決定。。
【 第5回朝日杯/決勝戦・羽生二冠-広瀬七段 】
28手目△2二銀。
上図での持ち駒
▲広瀬七段: なし
△羽生二冠: なし
決勝の相手は
準決勝で郷田真隆九段に勝利 した広瀬七段。
羽生二冠と広瀬七段の顔合わせといえば
名勝負連発となった昨年の第52期王位戦7番勝負が
実に印象的。
広瀬七段も初手合いから羽生二冠に公式戦2連勝。
大器としての片鱗をみせつけましたが、決勝戦前まで3連敗。
対戦成績は5勝4敗と拮抗しているだけに、ここで連敗をストップし
棋戦優勝といきたいところ。
その広瀬七段が先手となり
広瀬七段の代名詞でもある十八番「四間飛車穴熊」を投入。
羽生二冠も追随し
決勝戦の戦型は「振り飛車穴熊vs居飛車穴熊」に。
58手目△5六歩。
上図での持ち駒
▲広瀬七段: 飛、歩2
△羽生二冠: 飛、歩
角を取り込んでガッチリ囲った羽生二冠。
飛車交換が成立したタイミングで、サッと角道を通しました。
正確無比な速度計算と攻守のバランスの良さが持ち味の
広瀬七段の次の手は59手目▲8二飛。
双方、堅そうにみえますがもう終盤戦へ。。。
【 投了図・78手目△3五桂 】
投了図での持ち駒
▲広瀬七段: 香、歩3
△羽生二冠: 金2、歩
いざ、勝負。。となってから
穴熊名物の駒を切ったり貼ったりのコッテリした展開とはならず。
羽生二冠のあまりにもあっさりとすら見えるほど
鮮やかで切れ味鋭い踏み込みの前に、広瀬穴熊はあっけなく解体。。
上図78手目△3五桂をみて、広瀬七段が投了。
この瞬間、羽生二冠の2年ぶり2度目となる朝日杯優勝が決まりました!
強さを際立たせての優勝。
羽生二冠、おめでとうございます。お見事でした!
昨年の名人戦では出だしの躓き。。
もちろん開幕戦の黒星 も大きかった訳ですが、致命的だったのは第2局。
先手番で「相矢倉」だったにもかかわらず、羽生二冠らしくない強引すぎる
踏み込みが仇となり大敗 。痛恨の連敗スタート。。
第4局から すでに怒り爆発で怒涛の3連勝と盛り返したものの
最後の最後、運命の第7局で振り駒に見放されての名人陥落劇は
自分自身が招いた結果だと。。。羽生二冠はそう受け止め、自分自身への
怒りに打ち震えたはず。
名人奪還。
圧倒的な強さで連勝街道を驀進する羽生二冠が
とらえているであろうターゲットは火を見るより明らか。
春が本当に待ち遠しい。。
元祖羽生キラー・タナトラ先生 もTwitter将棋ファミリー