「木枯し紋次郎」 | ブックカフェはねだぷりん

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京浜急行穴守稲荷駅前の本屋の丁稚の読書感想文他アレコレ。プリンを作ったり、喫茶営業をしたり、雅楽を奏したり。

あけましておめでとうございますニコニコ。今年もよろしくお願いしますニコニコ


さて、本年最初のネタですが、昨年一番沢山読んでおりましたシリーズ物ですニコニコ

ケーブルTVの時代劇専門チャンネルの一挙放送
と、その主演の中村敦夫さんがキムタクさん主演ドラマ・「チェンジ」に出演されていた頃の雑誌インタビューの中で、


「ジャーナリストをしていた頃、中国の取材をしようとして、地元マフィアから拒否され、彼等と直接交渉しなければならなくなり、(中村敦夫さん自身が)緊張しながら出かけていった所、強面のマフィアの面々が(中村さんを見た途端)、『モンチロー!!』と叫んで、態度がガラッと変わり、取材も出来るようになった。中国でも、ドラマが放送されていたんです。」


という内容の事をおっしゃっていて、こりゃ面白いや!(単純ですいませんあせる)と思って、手を伸ばしたのが、笹沢佐保さん原作・「木枯し紋次郎」シリーズ (*ネット書店・e-honにつながります。以降、リンク先は同じ。)ですニコニコ

[羽田書店]本屋大将の日記


文庫で15巻もあるので、読み続けられるか疑問でしたが、趣向が凝らされ、読み応え充分!!どうやら、読みきれそうですニコニコ!という訳で、ご紹介ですニコニコ


【内容】

江戸時代末期を舞台に、あだ名を『木枯し紋次郎』と呼ばれる、天涯孤独の無宿の渡世人(戸籍帳上から抹殺された、ヤクザ者というところ?)・紋次郎が、あてもなく急ぎ足で旅行く先々で出会う様々な事件の模様が、各巻4話程度の中編で収録された股旅時代物です。


生まれた直後に、貧乏故に間引かれようとしていた紋次郎は、姉に救われますが、それが元となり、人を信じず、また家も故郷も捨てます。こうして、行く当てなどない、一つ所に落ち着くことも出来ない、昨日も明日もない、ただ今日を生きていくだけの、渡世人としての道に足を踏み入れます。

物語は、そうして渡世人として十何年もの間旅を続け、すっかり人間らしい表情をなくし、全てを拒絶するような雰囲気と、渡世人として他を圧倒するような貫禄と、今日を生き延びる為に独特の喧嘩剣法を身につけた30歳頃の紋次郎が、「あっしには関わりのないことでござんす。」と他者との関わりを拒絶しながらも、紋次郎なりの倫理観(例えば、子供、間引き、に関する事柄は無視できない一面がある)や、周囲の巻き起こす荒波に否応なく引き込まれながら、今日という日だけを懸命に生き抜く姿が、一話ごと完結の形で描かれます。



[羽田書店]本屋大将の日記


【ここがオススメ!】

1.ミステリー要素

元々、ミステリー作家として文壇に躍り出た笹沢佐保さんであり、「紋次郎」の中でも、その実力が遺憾なく発揮されています。


旅先で出会う様々な人々・事件にいくつもの隠された真実・謎と、大どんでん返しともいえるような意外な結末が待ち受けており、各話ごとに意表をつかれます(お代官と悪徳商人がぐるで、ばれるのを恐れて殺した、というような話の進行に合わせて分っていく明解なネタではありませんニコニコあせる)!!


謎や真実が語られいき、「あー、そう積み重ねていくと、こういうことなんじゃないのー?」と結末を予想した、そのさらに上を飛び越えて結末があり、読み応え充分!今度は、どんな真実が待っているのか!?、この期待感はくせになりますニコニコ


2.風景・時代描写

無宿の渡世人に、当時の世間は厳しく、江戸や大名領では無宿というだけで囚われたりしたようで、紋次郎は滅多にこれらの土地に近づきません。また、大都市や町・村であろうと、人のいる所で宿を取る事すら稀です。


必然的に、街道や峠道を脇目も振らずにひたすらに歩く姿が多く描かれる事になりますが、その街道・峠道を包み連なる山々の姿や自然や季節の移り変わりの様子、あるいは通り過ぎる町や村の様子が事細かに、生き生きと描かれます。


紋次郎の生まれ故郷・群馬をはじめとして、関東一円や信州、甲州、東海道、中山道などなどに跨る、表情も様々な山々や山塊・山脈、川や谷、それらの間に点在する大小様々な宿場や村々と、行きかう旅人達や各地の人々の営みが、凝縮された文章の中に見事に浮き上がります。


日本の自然の多様さと重厚さに改めて気づかされ、旅に出たくなるのではないでしょうか?


3.各話ごとに、最後に当時の記録が書かれている

各話の最後に、その話に登場した人・物・事について触れた当時の何々藩や村々の記録や旧家に残る家系図などが、ほんの2・3行ですが、紹介されます。


例えば、「天保十二年の桑名藩の記録では『盗賊お高祖頭巾の一味の云々。』で片付けられている。」といった具合です。この話では、『お高祖頭巾の一味』が桑名辺りで紋次郎と関わる事になります。


話を読み、最後に記録を読んで、実際にはどんな人々や真相だったのか、自然と思いを巡らせ、当時を想像したくなってしまいます。読後も様々な余韻を楽しませてくれます。


4.活劇

各回の終盤で紋次郎は、否応なく活劇に巻き込まれます。活劇自体は時代物のお約束ではありますが、天涯孤独・無宿の旅人(“たびにん”と読んで下さい)の紋次郎は、常に多数対1の決闘を余儀なくされます。


土地のヤクザの親分や、紋次郎と同じ渡世人達、また盗賊や手練の浪人者であったりと、相手も人数も様々。場所も、峠や河原、船中、町中、雪中、雨中、朝、昼、夜と、実に様々。紋次郎自身も病気にかかっていたり、怪我をしていたりと、こちらも状況は様々。


故に、紋次郎は状況に合わせて、長年培った経験と勘で瞬時に判断し、道中合羽や身につけた物から自然や周囲の状況まで利用し、痛快なアクションを見せてくれます。その後明かされる大どんでん返しと相まって、興奮がいや増しに増します!


以上、大雑把ながら1~4のオススメどころに加え、「あっしには関係のないことで」という決め台詞や、毎回の紋次郎の姿形の描写などの定番ともいえる表現もあり、続けて読むにも、一冊ずつ読む場合にも見所となる箇所があります。


また、活劇や意表をつく結末によって、興奮間違いなしの各回の最終盤ながら、ただ盛り上がるだけでなく、哀調を含んだ話となる場合も多く、幾重もの読了感を楽しめる、多層的な物語です!もう、時代小説の定番に入る作品かとは思いますが、改めて、是非、木枯し紋次郎の活躍を御覧いただければ幸いですニコニコ!!

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という訳で、長々と書いてしまいましたが、各話読み切りでサクサク読め、一冊4話収録で読み応えもありますので、一冊ずつ気軽にお楽しみいただいたり、合間合間をとってお読みいただいたり、全15巻読破!と気合いを込めてお読みいただいたりと、色々な楽しみ方が出来るシリーズかと思いますので、オススメですニコニコ


改めまして、今年もよろしくお願いしますニコニコ!!