「双極性障害が統合失調症と誤診される原因」  の続き



■抗不安薬


次は薬物療法。薬物療法でいちばん覚えておいてほしいのは、抗不安薬。抗不安薬はちょっとならいいですよ、2週間とか1ヵ月はいいです。でも1年も2年も使って、だんだん量が増えてきて、種類がたくさんになってくると、必ず人格障害に育て上げられます。


中でもデパス(エチゾラム)です。デパスがいちばんボーダーラインやらリストカットを作る妙薬ですね。あっちゃこっちゃスダレに切ったりしてる人が来たら、「あなたはひょっとしてデパスを飲んでいませんか?」って聞くとすごく当たるの。ほとんど何にも聞かんでもね。


それは、ひとつは精神科以外の先生がデパスを愛用するせいもあるんです。短期間、使ったとき、デパスは安全で副作用のない、よい薬だから。それが裏目に出てる。だけど精神科医もよく出しますよ。


デパスが横綱だけど、ベンゾジアゼピン類似の骨格を持つ抗不安薬はすべて同じ有害性があります。ですから、「不安時にこれを飲みなさい」と頓服で抗不安薬を出している先生は、「今や、自分は人格障害を作る作業をしている」と思っていたらいいです。まず間違いないです。だからできるだけ抗不安薬を使わない。


それから睡眠薬もベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使わない。できることならアモバン(ゾピクロン)、マイスリー(ゾルビデム)はそうでないから、そういうものを使ってください。


ある先生に聞いた話だから根拠薄弱で、本当かどうか知りませんが、世界で生産されている抗不安薬の40%は日本で消費されているんだそうです。それで、国際精神薬理学会なんかに行くと、「日本は無茶苦茶で、日本の精神薬理の人は何も分かっとらん」とか言われて馬鹿にされて悔しいとか、その先生は薬理をやっている人らしくて言ってました。抗不安薬をできるだけ使わないようにしてください。


じゃあ何を使うか。患者さんは「不安だ」って言うでしょ。そういうときに使うのは抗精神病薬。メジャーを使います。不安のときに頓服で飲むのにいちばんいいのは、レボメプロマジンの5ミリの錠剤の半分です、たいてい半分。「半分じゃきつい」と言う人は4半分。それを作りまして、ピルケースみたいなのに入れて持ち歩いて、どんどん飲めばいいです。


デパスなんかは一度に20錠ぐらい飲む人がいるけど、5ミリのヒルナミンの4分の1を20個も飲めませんよ。抗精神病薬はだんだん量が増えるということもありませんから、私は今までやってみて、レボメプロマジンがいちばんいいと思います。古い薬だけどいいですよ。だけど、これはもう扱い壊した人の治療。扱い壊された人にそうしてやっていけば、だんだん飲まなくてすむようになります。


(つづく)






◎ この一連の記事はすべて神田橋先生の了承を得て載せています。