土曜日。新宿。
タカヒロ君は待ち合わせ場所に10分ほど遅れて現れた。
最初に出会った日と同じだ。私はボンヤリと思った。
「どこで話す?」
彼は心なしか、顔色が悪い。
まず謝るのが普通だろうと思ったが、その気はないらしい。
私は無言で店に向って歩き出した。気まずい沈黙。
店に着くと
「何食べる?今日は俺がおごるから」
「いらない。飲み物だけでいい」
そう言ったのに、彼はものすごい量のメニューを注文した。
7~8人の胃袋を満杯にできそうな量だ。テーブルが料理でいっぱいになる。
なんだこれ。…罪滅ぼしのつもりか?
私は運ばれてきた料理を一瞥すると、冷やかな視線を彼にぶつけてから言った。
「質問に答えて。正直にね」
飲み物を口に含むと、切り出した。
「なぜ昨日急にあんな電話をしてきたの?」
「俺が風呂に入っている間に、彼女が携帯を見た。きららさんのメールを見つけて…それで、バレた」
「彼女とはいつから付き合ってるの?」
「半年くらい…かな。コンパで知り合って」
「昨日の電話、彼女に聞かせてたでしょ」
「えっ…うん。彼女が、いまここで電話しろ。その会話を聞かせろって言うから。
でも、もともと彼女とは別れるつもりだったんだ。だけど言い出せなくて。
そしたらきららさんと知り合って」
「そう。でも、他にもいるでしょ」
「えっ?」
「他にもいるでしょ。付き合ってる子」
彼の目が一瞬泳いだ。ビンゴだ。
「ホッケーの試合に、日替わりで違う女を連れて行ってるんだってね」
彼が絶句する。
「あるスジから聞いたの」
きららさんの情報網をなめるんじゃないわよ。
ホッケーの試合は週に1回ペースで行われている。
私は彼と付き合い始めた日に、一度だけ観戦した。
彼に「また応援しに行きたい」と言うと「あれ以来、仕事が忙しすぎて参加できないんだ」と断られた。
実際のところ、私と付き合った1ヶ月前から現在まで4回の試合に、彼は全て参加していたという。しかも毎回女連れ。(ミユキさんの彼の友達・談)
「日替わりでっていうことは、少なくともあと2~3人いるのね?」
「違うよ。あと1人…」
いいかけて、彼はハッとした表情になった。
「白状したね。あと1人。
ってことは昨日の彼女と、私と、もう1人。計3人だね」
彼は観念したように、うなずいた。
「あっ…でも、もう1人連れて行ったことはある。」
あとでバレるのを恐れたのか、余計なことまで白状し始める。
「その子とは付き合ってないけど」
「…ふん。4人ね。それぞれについて説明してもらいましょうか」
なんか、刑事ドラマばりの展開になってきた。
気分はそう悪くない。もうとっくにヤケクソになっているから。
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