※年下の彼 の続きです。
土曜日。今日はミユキさんに年下のオススメ男子を紹介してもらう日だ。
緊張のせいか、目覚ましの音より早く目が覚めてしまった。
メイクはいつもより時間をかけて丁寧に。
ご存じかも知れないが、一見ナチュラルに見えるメイクってけっこう時間がかかっていたりする。
実はワタクシ、仮にも化粧品会社の看板を背負った営業ウーマンであるからメイクにはちょっとばかり自信がある。
普段はたいてい手抜きメイクだが、今日は持てる技術の全てを顔面に集約する。
メイクが完成すると、前回の合コンのために伊勢丹で調達したブラウスとスカートを着る。
もう10月も中旬だ。肌寒いのでツイードのジャケットを羽織り、バックスキンのパンプスを履いて準備OK。
待ち合わせは、私が勤める会社のすぐ近く。ミユキさんがお気に入りのイタリアンレストランでランチをすることになったのだ。
待ち合わせ場所に着いて5分ほどすると、ミユキさんが歩いてくるのが見えた。
ミユキさんは170センチを超える長身だ。
遠目にも良い品物だとわかる黒いシルクのブラウスに、細身のジーンズと10センチ近くあるハイヒール。
背が高いのを気にして低いヒールを履く、などということをミユキさんはしない。自分の魅力を知りつくした大人の女性なのである。
明るい茶色のロングヘアは実はウィッグだ。気分に合わせてショートヘアからロングヘアまで自在に髪型を変える。
もうお気づきだと思うが、ミユキさんはとにかく目立つ女性だ。
一緒に歩いていると芸能人のマネージャー気分が味わえる。
向かい側から歩いてくる男性のほとんど全員がミユキさんを上から下まで眺めまわすからだ。
それを言っても「え?そう?」とまるで意に介していない様子だが…。
「ミユキさん!今日はよろしくお願いします!」
「きらら、おしゃれしたねぇ。心の準備はOK!?」
「ミユキさん、嬉しそう…」
「そりゃ嬉しいよ。今日をすごく楽しみにしてたんだから」
ああ、ドキドキしてきた…
(///∇//)
どんな顔して待ってたらいいんだろ。笑顔笑顔。でもニヤニヤしてると思われたら困るし…自然に、自然に…。
ミユキさんが携帯をチェックする。
「あ、メールだ」
「彼、少し遅れるらしい。お店に入っていよう」
お店に入ってドリンクをオーダーし、待つこと10分。
「遅れてすいません!」
彼が現れた。私が会釈すると、人懐っこそうな笑顔を見せた。童顔とも言える顔立ちに、スポーツマン風の短髪が爽やかだ。
洗いざらしのシャツに、はき古した感じのジーンズ姿。
ミユキさんもジーンズだから、私は一人だけ浮いているような気がしてちょっとだけ居心地の悪さを感じた。
でも、その居心地の悪さは、ほんの10分後にはすっかり消えていた。
彼、タカヒロ君はとにかく話が上手なのだ。
商社の営業マンで、若くして大きな案件を任され売上は部内のトップクラスだとミユキさんから聞いている。
爽やかな風貌に、テンポの良い会話。これでモテないはずがない。
私たち3人はずっと笑い通しで、あっと言う間に2時間が過ぎた。
「あ、すいません。俺、これから会社に行かないといけないんです」
彼は腕時計に目を落とすと言った。
「え~?休日出勤?」
まだまだこれからなのに、とミユキさんが不満そうな声を出す。
「すいません。今度はもっとゆっくり!」
私たちは揃って店を出た。タカヒロ君は大通りでタクシーを拾い、ミユキさんと私は彼を見送った。
「で、どうだった?」
早速来た。ミユキさんから直球の質問である。
「はい。彼、かわいいですね
(〃∇〃)」
「ちょっと、年下だとすぐ『かわいい』って、それオバサン化現象よ!」
実際は、彼が年下であることは全く感じなかった。
年下と言っても1歳しか違わないし、社会人としての経験も、扱っている金額の大きさから考えたら彼が上であろう。
「でも彼モテそうだし、競争率高そうですね…」
「なに弱気になってんの。合コン女王が!」
「いや、合コン女王と言ったって、合コンの幹事の経験が豊富というだけで…」
「ごにょごにょ言ってんじゃないの!じゃ、きららは気に入ったのね?」
はい。私は素直にそう答えた。
「じゃ、彼から連絡あったらそう言っておく。あとは二人の問題だからね」
ミユキさんにお礼を言って別れると、私は家路についた。
夕飯を食べ終わりくつろいでいると、携帯にメールが届いた。ミユキさんだ。
件名:
おつかれさん!
本文:
今日は楽しかったね!さっそくタカヒロ君からメール来たよ。
きららさん、とても素敵な女性ですね。本当に彼氏いないんですか、だってよ!私の思ったとおり。二人はお似合いだもん。
さっそくタカヒロ君にきららの連絡先を教えるよ。いいよね?
ええ~!?ホントに!?!?!?
(///∇//)
私はすぐに「お願いします!」と返信した。
嬉しい。嬉しい。ワクワクするよ~。
だって、生まれて初めてできちゃうかも知れないよ!?年下の彼!
頭の中には早くも安室の『CAN YOU CELEBRATE?』が流れている。
早く連絡こないかなぁ…
≧(´▽`)≦
お月さまは、舞い上がる私を見て今夜も「ククッ」と笑うのだった。
良かったね、きらら。でも、そう簡単にうまくいくかしら?
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