ピピピピピピ…
私は低血圧だ。特に朝は測定不能なほどに低い(血圧計に「E(エラー)」の文字が出る)。
毎朝のことながら目覚ましの音は恨めしい。布団からやっとのことで起き上がる。
7時半…。やばいじゃん。支度しなきゃ。
リョウコから、カトリ君と付き合うことになったと報告を受けたのが金曜日。
そして今日は月曜日。土日は家でボーッとしていたらあっという間に過ぎてしまった。
うーん。疲れてるなぁ。なんにもやる気がしない…
(-。-)
いつもに増して不機嫌な月曜の朝である。
「おはようございます」
会社に着くと、隣の席のミユキさんに挨拶する。
「おはよう」
ミユキさんは私の顔をまじまじと見た。
「きらら、なんか元気ない?」
「いえ、今朝ちょっと寝起きが悪かっただけです」
ふぅん。ミユキさんはうなずくと、続けた。
「そういえば、最近どうなの?」
「え?」
「合コン行ったんでしょ、あれからまた」
「…へへ。なんにも収穫なしです。でもカップルが誕生しました。二組目!」
ミユキさんは、サオリがミサト君と付き合うことになったのは知っている。
私は、新たに友人のリョウコがカトリ君と付き合うことになったと報告した。
「すごいね。きららが幹事した合コンで二組もカップルが誕生したんだ」
そうです、すごいでしょ~。私は言いながら、自席のパソコンを立ち上げた。
「ちょっと!きらら」
「うわっ。なんですか、ミユキさん!」
ミユキさんは私の肩を抱いて自分のほうに引きよせ、耳元で低くささやいた。
「すごいでしょ~、じゃないよ。他の人ばっかり幸せにしてどうすんのよ。きらら、私に言ったでしょう。
『私、決めました!絶対に結婚します!そのためにはなりふり構わず頑張ります!』って」
「はぁ、言いました。けど…」
私はため息をついた。
「私って、どんな人が好きなんでしょう…
( ̄_ ̄ )」
はぁ!?ミユキさんは目を剥いた。
昼休み。
「で?朝言ってたアレは何?『私ってどんな人が好きなんでしょう』って」
今日のランチは会社近くの定食屋で。メニューはお気に入りの「角煮定食」だ。
「わからなくなったんですよ。私って、人をホントに好きになったことあるのかなぁって」
「好きになったことないの?」
「いや、違います…、たぶん。でも、結婚したいほど好きになったことって、たぶんないんですよ」
ミユキさんは、運ばれてきたほうじ茶を一口飲んでから言った。
「あのね。好きだからって結婚できるわけじゃないよ。結婚はタイミングと勢いだから」
あ…。そういえば、ミユキさんは結婚したことあるんだった。
いまは独身で14歳下(!)の彼と付き合っているが、ミユキさんはバツイチだ。前の旦那さんは会社を経営していたという話だが、詳しいことは知らない。
「タイミングと勢いかぁ…。具体的にはどうしたらいいんでしょう」
あはは!ミユキさんは笑う。
「そんなのわかんないよ。ケースバイケースよ。とにかく、いろんな人と付き合ってみることだね」
「でも、失敗したくないんすよ」
「何いってんの!まだ27でしょ」
「…それはそうですけど~
(-з-)」
私は、唇をとがらせた。
「仕方ないな~きらら、紹介しよっか?」
「えっ!」
「前職の取引先の人なんだけど…」
「紹介してください!!」
ミユキさんが言い終わらないうちに言った。
「詳しく聞かなくていいの?」
「はい!ミユキさんの紹介なら素敵な人に決まってますから
( ̄▽ ̄)=3」
思わず鼻息を荒くする。
「うん。彼はオススメだよ。ただし…」
ミユキさんは言った。
「年下だよ。きららより」
ええ~、年上が好きなんですけど…。
と、私は言いかけてやめた。
ミユキさんは、私が年上好きだと知っていて薦めてくれているのだ。
きっとかなりのオススメ案件なのだろう。
それに何より、決めつけるのは良くない。とにかく、色んな人と会ってみなきゃ。
「お願いします!!
o(〃^▽^〃)o」
ミユキさんはさっそく彼に連絡を取ってくれた。
顔合わせはミユキさん同席で、この週の土曜日に行われることになった。
なんか、お見合いみたい…。どうしよう。何着て行こう…
(///∇//)
初のシチュエーションに、期待はいやおうなく高まっていくのだった。
――――――――
読んでくださってありがとうございました。
「婚活珍道中」 続々更新中です♪