高齢者の便秘解消法:歩行困難・寝たきり高齢者の便秘の予防と治し方


「便秘の解消法: 女性の便秘解消対策、便秘・慢性便秘の予防と治し方」 高齢者は、便秘になりやすいです。高齢者の2人に1人は、便秘であるといわれています。特に、歩行困難な高齢者や寝たきりの高齢者のほとんどは便秘です。歩行困難であったり寝たきりの高齢者を対象とした介護では、その重点項目として便秘の措置対策が必ず含まれています。高齢者が便秘になる原因はさまざまですが、高齢により腸の運動能が低下することが主要な便秘の原因となっています。運動不足、筋力の衰え、水分摂取量の低下なども、高齢者の便秘の原因となっています。また、高齢者は、生活習慣病などのさまざまな病気をかかえていますが、その治療に用いられるお薬によっても、副作用としての便秘が生じます。健康食品であるグルコサミンの摂取もまた便秘の原因となります。高齢者のほとんどは、無胃酸あるいは低胃酸となっていて、このような高齢者が刺激性下剤の便秘薬を服用しますと、腹痛、吐き気などの副作用が強く現れます。高齢者に適した便秘解消法は、イヌリン食物繊維などの水溶性食物繊維を積極的に摂取することです。ここでは、高齢者の便秘解消法:歩行困難・寝たきり高齢者の便秘の予防と治し方についてお話します。


高齢者の便秘は、さまざまな原因によって生じます。たとえば、①加齢に伴う腸の運動の低下、②排便に必要な「いきみ」のための腹筋力の低下、③運動能力の低下と運動不足、④食事の摂取量が減ることによる便の形成の減少、⑤食事摂取量の低下や運動不足などによる水分摂取量の低下、⑥直腸や肛門における便意反射機能の低下、⑦病気治療に用いられているお薬による副作用としての便秘の発症、⑧グルコサミンなどの健康食品による便秘、などです。


高齢者の便秘の原因で一般的にみられるのが、加齢に伴う腸の蠕動運動の低下で、弛緩性便秘といわれるものです。加齢によって、腸の動きが鈍くなります。腸の運動は、腸の中の便を肛門の方へ移動させる機能がありますが、この腸の運動が鈍くなりますと、便が長時間にわたり腸の中に滞留することになります。便が腸の中に長時間滞留しますと、便の中の水分が過剰に吸収されてしまい、その結果、便が硬くなって便秘が生じます。高齢者でよくみられる便秘の原因は、便が硬くなることによるものです。


高齢者は、歩行が困難となったり、あるいは、寝たきりの状態となり、1日に必要な運動を十分に行うことができないこともあります。運動不足も高齢者の便秘の原因となります。運動は、全身の新陳代謝を活性化させるとともに、全身の筋力を維持したり、あるいは筋力の向上にもつながります。しかし、運動不足は、新陳代謝の低下を招き、その結果、腸の動きが鈍くなって弛緩性便秘が生じやすくなります。また、新陳代謝の低下は、食欲不振をも招き、その結果、排便に必要な十分な量の便が形成されず、そのため、硬い便となって、便秘が引き起こされます。高齢者の便秘の原因となる運動不足は、さらに、排便に必要な腹筋力の低下を招きます。


高齢者の便秘の原因に、水分摂取量の減少が上げられます。健康な成人女性の体内水分量は55%で、成人男性では60%となっています。一方、高齢者における体内水分量は、50~53%と、非高齢者に比べて体内水分量が少なくなっています。このような、もともと少ない体内水分量の高齢者が、運動不足や食事摂取量の減少などで、水分摂取量が低下しますと、便の水分が減り、排泄までの時間が長くなります。その結果、便の水分が過剰に吸収され、硬い便となって便秘が生じます。


高齢者は、一般に、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病、心不全、脳卒中、動脈硬化、肺がん、胃がん、大腸がんなどのさまざまな癌、胃炎、胃潰瘍などの消化器障害、認知症、うつ病、骨粗鬆症、変形性膝関節症などの、さまざまな基礎疾患を抱えています。そのため、数多くのお薬を内服することになりますが、お薬の中には副作用として、便秘を生じさせることもあります。高齢者の便秘は、このようなお薬を原因とする場合も多いです。便秘を生じさせるお薬としては、高血圧の治療に用いられる利尿薬やカルシウム拮抗薬、糖尿病の治療に用いられるα-グルコシダーゼ阻害薬やGLP-1受容体作動薬、脂質異常症(高脂血症)の高コレステロール血症の治療に用いられる陰イオン交換樹脂系薬、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬などがあります。また、喘息の治療に用いられるテオフィリン製剤やうつ病、不安症、認知症など精神神経系疾患によく用いられる抗コリン薬も便秘を引き起こします。女性の病気で用いられるホルモン療法においても便秘が引き起こされます。各種の抗がん剤も、ひどい便秘が引き起こされます。腎不全における人工血液透析によっても便秘が生じます。このように、高齢者の基礎疾患治療に用いられるお薬が、高齢者の便秘の原因となることがあります。


最近、健康食品のグルコサミンが、高齢者の便秘の原因になることが報告されています。グルコサミンは、高齢者の膝関節症を対象に商品化された健康食品です。一部の商品は、一般医薬品として、薬局等でも販売されています。グルコサミンは、糖の一種で、グルコース(砂糖)にアミノ基が付いた代表的なアミノ糖で、動物の皮膚、カニやエビなどの甲殻類の殻に含まれている成分です。工業的には、カニやエビの殻から得られるキチンとよばれる含窒素多糖高分子を、塩酸あるいは硫酸で加水分解して製造されます。テレビCMや新聞チラシ等で盛んに宣伝広告していますが、変形性膝関節症に対する臨床効果はなく、医学的に、骨関節炎の痛みを緩和することはないとされています。その一方で、グルコサミンは、糖類の一種ですので、グルコサミン摂取による血糖値、血圧、血中コレステロール値の上昇が懸念されていますので、糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高コレステロール血症)の高齢者には、リスクがあると指摘されています。


グルコサミンは、どのような原因で便秘を引き起こすのでしょうか? 砂糖がたくさん含まれたお菓子や菓子パンなどを多めに食べたとき、便秘になった経験はございませんか? 糖類を一時的に多量に摂取しますと便秘が引き起こされます。東大の臨床研究で、ヒトに砂糖水を飲ませますと、胃腸の働きが、ピタリと止まることが報告されています。摂取した過剰な糖分は、細胞表面に吸着し、これによって、神経伝達の信号が阻害されます。これを、糖反射といいます。糖反射によって、腸管の運動をコントロールしている自律神経系、特に、副交感神経が抑制されるために、腸管の運動が抑制されて、便秘が生じます。グルコサミンは、糖類の一種ですので、砂糖と同じメカニズムによって、便秘が生じることになります。いま流行のグルコサミンですが、あまり、健康上の有用性はないように思われます。


一般に、高齢者に多くみられる便秘は、成人女性にみられる便秘と同様に、弛緩性であり、便意はあるのにお腹が張る症状がみられます。これは、高齢者と成人女性は、成人男性に比べて腹筋が弱いために、大腸の運動と緊張が低下し、便の通りが悪くなるために便秘が生じます。便秘の症状としては、腹部膨満感、腹痛、食欲不振、吐き気、嘔吐などの消化器症状の他に、疲労感、肩こり、めまい、むくみ、冷え性、頭痛、睡眠不足、イライラ感や、肌荒れ、湿疹、皮膚のこわばり感などの皮膚症状も現れます。便秘の消化器症状は、食事の食べる量がますます減少する原因となりますので、これにより、便秘もさらに悪化します。また、頭痛、睡眠不足などの精神神経系の症状もまた、便秘を悪化させる要因となります。さらに、高齢者は、加齢によって皮膚の角質が薄くなっていて、皮膚のバリア機能が低下した状態となっています。便秘は、肌荒れの原因ともなりますので、高齢者は、非高齢者に比べて、乾燥肌や湿疹などの肌荒れが起こりやすくなります。


高齢者の中には、肛門括約筋や尿道括約筋の筋力低下、骨盤底筋群のゆるみ(女性)、前立腺肥大(男性)、膀胱の萎縮、夜間頻尿の原因となる腎臓機能の低下、脳血管障害、心疾患、糖尿病、神経痛、骨粗鬆症などの慢性疾患、認知症、利尿薬や降圧薬などのお薬の副作用のために、排泄障害を起こす人も多いです。また、寝たきりの高齢者も多くおられます。このような高齢者は、しばしば「紙おむつ」などの排泄用具を着けていますが、高齢者における便秘の症状に、「おむつ」の中への排便があります。おむつや下着に、便が付着する原因の多くは、硬い便による便秘です。おむつや下着の便の汚れは、高齢者における便秘の一症状となります。


高齢者における便秘の対策は、若い人の便秘対策よりも、穏やかな対処法を選択する必要があります。高齢者の便秘は、一過性の便秘ではなく、その多くが慢性的な便秘症となります。浣腸剤、下剤や内服用の刺激性下剤の便秘薬は、漢方便秘薬も含め、一過性の便秘には有用なのですが、これらのお薬を繰り返し使用しますと、次第に効果が消えることが知られています。したがいまして、高齢者の便秘は、慢性便秘ですので、これらのお薬で便秘が一過性に改善されたとしても、再度、便秘が繰り返すことになります。また、これらの便秘薬は、腸粘膜を刺激しますので、腸の機能が低下した高齢者は、若い人以上に激しい腹痛を伴うことがあります。さらに、65歳以上の高齢者の80%は、低胃酸あるいは無胃酸といって、胃液が中和された状態となっています。このような低胃酸あるいは無胃酸の高齢者が、薬局などで売られている内服用の便秘薬を飲みますと、胃の中で、便秘薬が溶けてしまい、その結果、胃痛、腹痛、胸焼け、吐き気、嘔吐といった便秘薬の副作用が強く現れます。このような観点からも、高齢者の便秘対策に、便秘薬や下剤は、適していないということになります。


では、どのような便秘対策が高齢者に適しているのでしょうか? 高齢者における穏やかな便秘対策には、①水溶性食物繊維の摂取量を増やすこと、②水分をこまめに補給すること、③積極的に体を動かすこと、の3つが上げられます。


高齢者の献立で、おかゆが主食になることがあります。おかゆは、かまずに食べることができますので、高齢者には物足りなく感じたりします。また、おかゆを主食にしますと、栄養が偏りやすくなり、特に、食物繊維不足となって便秘の原因ともなります。おかゆを主食とするときは、野菜類を中心とした副菜を多くとりいれて、食物繊維不足を解消することが、高齢者の穏やかな便秘対策の一歩となります。ところで、野菜、根菜類、海藻類に含まれている食物繊維についてですが、そのほとんどが、セルロースを主成分とした水に溶けない不溶性の食物繊維です。不溶性食物繊維は、便を構成する成分となりますが、便秘の解消効果は弱いです。一方、イヌリン食物繊維などの水に溶ける水溶性食物繊維は、大腸に生息するビフィズス菌や乳酸菌などの健康に有益な善玉菌の栄養源となって、それらの善玉菌を増やします。増えた善玉菌には、硬くなった便を軟らかくする効果がありますので、自然な便通が促進されます。また、便を形成するという食物繊維の機能も兼ね備えています。普段の食事に、イヌリン食物繊維などの水溶性食物繊維を加えることが、高齢者の慢性的な便秘の対策につながります。今では、病院、特別養護施設や介護施設等でよく用いられているスティムフローラのように、不純物を含まない極めて高純度のイヌリン食物繊維が、健康補助食品として市販されています。高齢者、歩行困難な高齢者あるいは寝たきりの高齢者に伴う便秘の予防と改善に、このような健康補助食品を活用するも有用です。


高齢者の便秘解消の基本は、食事と運動です。イヌリン食物繊維などの水溶性食物繊維を多くとりいれ、不足する機能的で有用な食物繊維の摂取が、高齢者の便秘解消や便秘予防にとても大切となります。水溶性食物繊維を多くとりいれた食習慣と体を動かすことが、高齢者の便秘解消法の基本となります。
便秘の解消法:女性の便秘解消対策









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