画像は、YouTubeから拝借。
ディオニスィオス(ディオニシオス)・ラヴランガス
Διονύσιος Λαυράγκας
Dionisios Lavrangas
Дионисиос Лаврангас
ギリシャの「エプタニスィア楽派」(Επτανησιακή Σχολή (μουσική))に属する、
作曲家、指揮者、ピアニスト、ヴァイオリニスト。
1860年10月17日、ケファリニア島(ケファロニア島)Κεφαλληνία(Κεφαλονιά)の、
アルゴストリ(Αργοστόλι)生まれ
ギリシャの民俗音楽の要素を取り入れた、
最初のクラシック音楽の作曲家の1人と見做される。
歌劇団「ギリシャのメロドラマ」(Ελληνικού μελοδράματος)の創始者とされ、
ギリシャ国民オペラの発展に貢献する。
子供の頃、イタリアオペラに触れたことで、音楽に興味を抱く。
ヴァイオリンを、ラッツァーロ・セーラオ(Lazzaro Serao)に学ぶ。
1878~1882年、ナポリ音楽院
(サン・ピエトロ・ア・マイエッラ音楽院)(Conservatorio di musica San Pietro a Majella)
で、ピアノ、和声法、対位法、作曲を学ぶ。
1885年、フランスのパリに留学。
ルドヴィコ・スピネッリ(Ludovico Spinelli)と共に、
歌劇団「ギリシャのメロドラマ」(Μουσικό θίασο "Ελληνικό Μελόδραμα")を創設。
オスマン帝国のイスタンブル(İstanbul, Κωνσταντινούπολη)、イズミル(İzmir, Σμύρνη)、
ウクライナのオデッサ(Одеса, Οδησσός)、ルーマニアの諸都市、
エジプトのアレクサンドリア(اسكندريه, Αλεξάνδρεια)、カイロ(القاهرة, Κάιρο)などを巡業する。
1905~1910年、アテネ音楽院(Ωδείο Αθηνών)と、ピレアス(Πειραιάς,)で、
ピアノ、和声、合唱を教える。
1919~1924年、ギリシャ国立音楽院(Εθνικό Ωδείο)のオペラスタジオで働く。
1926~1934年、国立音楽院で、ソルフェージュ(譜読み)を教える。
1900年より、音楽誌『フェクスィス』(Φεξης)にて音楽評論活動を行う。
ゲオルギオス1世金十字勲章(Χρυσούς Σταυρός του Τάγματος του Γεωργίου Α΄)受賞
芸術と文学の分野における国家賞受賞
1941年7月18日、死去。
【著作】
・和声法の教科書(1903年)
・譜読みの参考書(1917年)
・音楽芸術の参考書(1937年)
・回想録(Τ'απομνημονεύματα μου)(1937年、1940年)
※イオニア諸島地震(1953年)で原稿の一部が失われたらしい
【歌劇】(Όπερα)
・人生は夢(1887年)
La vita è un sogno
・2人の兄弟(1900年)
Δύο αδέλφια
・魔女(1902年)
Μάγισσα
・ディードー(1909年)
Διδώ
・白髪(1914年)
Άσπρη τρίχα
・二重の炎(1915年)
Διπλή φωτιά
・小さな蝶々(1928年)
※黒い蝶(Μαύρη Πεταλούδα)と同一か?
Μικρή πεταλούδα
・おとぎ話(1930年)
Ένα παραμύθι
【管弦楽作品】(Ορχήστρα)
・交響的前奏曲(1905年)
※1972年に復元されたらしい
Συμφωνικό Πρελούντιο
・2つのギリシャの主題による序奏とフーガ(1918年)
※初演:1918年12月15日 アテネ市立劇場(Δημοτικό Θέατρο Αθηνών)
"Εισαγωγή και φούγκα σε 2 ελληνικά θέματα" για μεγάλη ορχήστρα
・宗教的印象(1920年)
Θρησκευτικές εικόνες
・2つのギリシャの主題による奇想曲(1921年) - ヴァイオリンと管弦楽
"Καπρίτσιο σε δύο ελληνικά θέματα" για βιολί και ορχήστρα
・ギリシャ舞曲第1番、第2番
2 Ελληνικές Σουίτες
・序曲(東洋的序曲?)
Ουβερτούρα
・キプロス舞踏組曲
Σουΐτα από Κυπριακους χορούς
【バレエ音楽】(Μπαλέτο)
・セビリアの幾夜(1933年)
Κάποια Νύχτα στη Σεβίλλη
・ペルセポネー(1936年)
Περσεφόνη
【声楽作品】
・独唱、合唱、管弦楽のための『五種競技』(1896年)
Φωνητικά για χορωδία και ορχήστρα όπως το 'Πένταθλον'
・歌い手
Ο τραγουδιστής
・苦い水
Της πίκρας το νερό
・イオニア海の船乗り
Ο ναύτης του Ιονίου
・船の帆を開く
Καράβι ανοίγει τα πανιά
【映画音楽】
・羊飼いの娘(1932年)
Ο αγαπητικός της Βοσκοπούλας
※作品情報(作曲年など)の内容は、情報源によって食い違っているものがある。
食い違った内容は、括弧して?付きで紹介。
舞台作品情報は、主にWikipediaギリシャ語版に基づく。
【資料】
Лаврангас, Дионисиос - Wikipedia Русский
Διονύσιος Λαυράγκας - Wikipedia Ελληνικά
2つのギリシャの主題による序奏とフーガ
Εισαγωγή και φούγκα πάνω σε δύο ελληνικά θέματα
http://www.youtube.com/watch?v=Lxg4OoZFVbo
ギリシャの国民楽派と言えば、
マノリス・カロミリス(Μανώλης Καλομοίρης, 1883-1962)が最も知られています。
(とは言うものの、日本では一般的には知られていませんが)
カロミリスは、ギリシャ国民楽派の確立を生涯の目標としていたそうですが、
それ以前からギリシャ国民楽派の作曲家はいました。
カロミリス以前のギリシャの作曲家を以前弊ブログで取り上げた事がありますが、
その中の何人かは、ギリシャ国民楽派の作曲家と思われます。
超マイナークラシック曲情報(4)ギリシャ編
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11283900280.html
今回紹介する作曲家も、そういった傾向の作曲家です。
ギリシャの国民オペラの発展に貢献したのみならず、
純粋器楽の管弦楽作品を幾つも書いている様です。
YouTubeにその管弦楽作品の一つが出ていたので、
ブログに貼らせていただきました。
オペラを作曲していただけあり、
劇的で情感豊かな表現が中々聴き応えあると思いました。
◎映画音楽
映画音楽も書いているそうで、劇作家の、
ディミトリオス・コロミラス(Δημήτριος Κορομηλάς)が1891年に書いた作品、
『羊飼いの娘』(Ο αγαπητικός της Βοσκοπούλας)
Δημήτριος Κορομηλάς - Wikipedia Ελληνικά
が映画化され、1932年1月25日に公開されたそうなのですが、
その音楽を担当しているそうです。
ギリシャで最も早い映画音楽の一つの様です。
YouTubeに出ていましたので、ここに貼らせていただきます。
http://www.youtube.com/watch?v=g-Da1WQQ0b8
因みに『羊飼いの娘』は、1955年にも映画化されているそうです。
http://www.tainiothiki.gr/v2/filmography/view/1/93/
◎CD化について
少し前に、ディミトリオス・レヴィディス(Δημήτριος Λεβίδης)
というギリシャの作曲家を取り上げましたが、
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11821067636.html
その時、もにりくちなしさんの情報提供による、収録CDの話を追記しました。
『辺境・周縁のクラシック音楽2』(青弓社)の119頁にて、
箱入りの豪華な解説書付きの12枚組CD
『19世紀から20世紀のギリシャ音楽』(同書での略称、ギリシャ箱)
が紹介されているのですが、このCD集の中に、
レヴィディスの作品も収録されているそうです。
《正式名称》
『夢のためのアディス / 19世紀から20世紀のギリシャの作曲家の作品集 12CD』
(Αντίς για Όνειρο / Έργα Ελλήνων Συνθετών 19ου και 20ου αιώνα, 12. CD)
http://www.studio52.gr/info_gr.asp?infoID=00000s8p
http://www.musical.gr/cddetails.php?gui_language=1&CD_code=2440100-2
※「アディス」はアムハラ語で「新しい」(አዲስ)という意味ですが、
そうすると「Αντίς για Όνειρο」は、
「夢の新た」と訳すべきでしょうか?
「新たな夢」と訳すべきでしょうか?
よく分からないので、仮に「夢のためのアディス」としました。
そこで僭越ながらも、ラヴランガスの作品も「ギリシャ箱」に収録されているのかどうか、
もにりくちなしさんにコメント欄にて質問したところ
「Τραγουδιστηζ」という声楽作品があるとの事でしたが、
この単語をGoogleで検索してもヒットが0件であるため、
恐らく綴りが少し違うのかも知れないと思い、
ギリシャ語は確か語尾が「ς」(s)の単語が多かったよなと思って、
「Τραγουδιστης」で検索してみたところ、
「Τραγουδιστής」という単語が存在する事を確認。
その意味を調べてみると、英語で「Singer」(歌手)と出ました。
「歌い手」という題名の作品なのだろうか?
と思い、更に調べてみると、Wikipediaギリシャ語版に、
まさに「Ο τραγουδιστής」という声楽作品が紹介されているのを確認。
でも、私の手許にはこのCD集がありません。
「ギリシャ箱」の正式名称やその他の情報を割り出せたのは、
「辺境・周縁のクラシック音楽2」に「ギリシャ箱」の画像が出ているのですが、
そこにその名称も出ていたからです。
(この程度の事で、探偵になれるかな?とは思いませんが)
まあ「Ο τραγουδιστής」という作品を聴いた事が無いので何とも言えないのですが、
個人的には、ラヴランガスの管弦楽作品を収録して欲しかったですね。
彼の代表作が何なのかはよく分からないのですが、
「2つのギリシャの主題による序奏とフーガ」は恐らく、
代表作の一つなのではないでしょうか。
◎「エプタニスィア」とは
「エプタニスィア」(エプタニシア)とは、ギリシャの西側に点在する、
「イオニア海の7島」を意味します。
1:ケルキラ島(Κέρκυρα)
2:パクスィ(パクシ)島(Παξοί)
3:レフカダ島(Λευκάδα)
4:イタキ島(Ιθάκη)
5:ケファロニア島(Κεφαλονιά)
6:ザキントス島(Ζάκυνθος)
7:キティラ島(Κύθηρα)
「エプタニシア派」には「画派」もある様で、
その「エプタニシア画派」に関する論文を書いている教授が、
日本にいる様です。
木戸 雅子(キド マサコ) | 学術論文 - 共立女子大学・共立女子短期大学
18世紀初頭のギリシャは、絵画の近代化を考える上で重要な時代だそうで、
その当時のギリシャは、ビザンティンのイコン画の伝統がある一方で、
エプタニシアは、長い間ヴェネツィアに支配されていた関係か、
イタリアのルネサンス以来の美術の影響を強く受けていたそうです。
ヴェネツィアには、エプタニシアの画家たちが出向き、
ギリシャ正教のイコン画を制作していたそうですが、その中の1人、
パナイオティス・ドクサラス (Παναγιώτης Δοξαράς, 1662-1729)
は、理論的指導者的存在として、西欧の影響を受けながらも、
伝統的なイコン画の新しい表現方法を模索・追求していたそうです。
Επτανησιακή Σχολή (ζωγραφική) - Wikipedia Ελληνικά
因みに、小泉八雲は、レフカダ島生まれです。
◎イオニア諸島大地震
Wikipediaロシア語版に、「イオニア諸島地震で著作の原稿が失われた」
云々と出ていたので、調べてみた所、
日本語でこの地震について紹介している頁を発見。
http://www.greecejapan.com/jp/?p=8124
発生は1953年なので、昨年は60周年でした。
地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、
地震への備えはしておく事に越した事は無いと痛感いたしました。
【関連エントリー】
フィリップ・フォン・シャンツ(Filip von Schantz)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11867336607.html
エルンスト・ファブリティウス(Ernst Fabritius)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11866572392.html
ディミトリオス・レヴィディス(Δημήτριος Λεβίδης)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11821067636.html
アウゴスト・ヘンドリク・ヴィニング(August Hendrik Winding)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11819202288.html
エドヴィン・カルステニウス(Edvin Kallstenius)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11683155117.html
ヤン・ヴィレム・フランス・ブランツ(ブランズ)・ベイス(ブイス:バイス)
(Jan Willem Frans Brandts Buys)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11765323839.html
ゲオルギ・ペトロフ・シャグノフ(Георги Петров Шагунов)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11748665983.html
リカルド・ビリャ・ゴンサレス(Ricardo Villa González)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11766446691.html
ニコラ・アタナソフ・キタノフ(Никола Атанасов Китанов)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11745652545.html
ヨゼフ・リハルト・ロスコシュニー(Josef Richard Rozkošný)
http://ameblo.jp/ssatoloux-1987/entry-11651647725.html
マイナークラシック音楽紹介記事アドレス保管庫(10)