スペインの国民楽派は、
アルベニス(Albéniz)、グラナドス(Granados)、ファリャ(Falla)
などがよく知られ、スペイン人以外でも、
グリンカ、リムスキー=コルサコフ、シャブリエ、ラロなどが、
スペイン国民楽派の手法による管弦楽曲を書いている。
が、スペインとは言語的にも地理的にも近い
ポルトガルはどうなのかというと、
一般的には殆ど知られていない。
以前から、
「ポルトガルの19世紀の音楽はどうなのか?国民楽派は?」
と思っていた私ではあったが、
「交響曲読本」(ONTOMO MOOK・音楽之友社・1995年)で
「ジョアン・ドミンゴス・ボンテンポ」と「ダ・モッタ」
が簡単に紹介されるに留まっているだけの情報しか
手に入れていなかった。
が、ネットのお陰で少しではあるけれど、
情報を幾つか手に入れられたので、
紹介する事にしよう。
ジョアン・ドミンゴス・ボンテンポ
João Domingos Bomtempo
(1775.12.28-1842.8.18)
João Domingos Bomtempo – Wikipédia
古典期からロマン派の時代にかけて活躍した作曲家。
NAXOSから交響曲第1、2番のCDが出ています。
古典派は守備範囲ではないので、
実はNAXOS音楽配信サイトで曲の触りだけしか聴いていないのですが、
噂によれば、中々悪くない出来らしいとのこと(いい加減ですいません)。
第1番は1810年作曲なので、思いっきり古典派ですけど、
第2番は初期ロマン派時代だけあって、古典派的なものの中に、
ロマン派の萌芽が垣間見える作風のようです。
【NAXOS 8.557163】
ジョゼ・ヴィアナ・ダ・モッタ
José Vianna da Motta
(1868.4.22-1948.6.1)
サントメ(São Tomé)生まれ。
リスボン(Lisbon)歿。
ポルトガル国民楽派の作曲家にしてピアニスト、教師。
シャルヴェンカからピアノを学んだ。
フランツ・リストの最後の弟子でもある。
その後、シェーファーから更に学んだ後、ピアノストとして活躍。
ブゾーニと親交を結ぶ。
ヨーロッパや南米等、各国で演奏活動を行い、
絶賛を受けたという。
作風は、後期ロマン派風の華麗な作風。
彼の曲のCDは少し出ているようだ。
交響曲「祖国へ」のCDが出ている。
資料によって、
作曲年が「1894年」「1895年」「1908年」と違っているので、
一体どれが正しいのやら・・・。
ピアノ協奏曲のCDは、比較的手に入り易い。
以下、その収録曲。
○ピアノ協奏曲
Concerto em Lá maior, (1886-1887)
未だ10代の頃に書かれた早熟の天才振りを感じる作品。
若書きにしては、遜色が感じられない所か、
既に民族的要素も感じられる。
10代で既に完成された
民族主義的管弦楽曲を書いた驚異的作曲家は、他に
ジョルジェ・エネスク(George Enescu)や
ヘイミッシュ・マッカン(Hamish MacCunn)などがいる。
エネスクはWikipediaドイツ語版によると、
台詞無し男性合唱を伴う
「ルーマニア詩曲」作品1(1897)の他に、
2つのルーマニア組曲(1896, 1897)
というのを10代で書いているという。
話を元に戻します。
全2楽章だが、第2楽章は、
提示部(主題)とその5つの変奏となっている。
この第2楽章が、
なんとも情感溢れるファドかと思うような旋律なのだ!!
○バラード Ballada Op 16, (1905)
Hyperionのロマン派ピアノ協奏曲シリーズ収録ではあるが、
ピアノ独奏曲である。
「Tricana da Aldeia」と「Ave Maria」という2つの民謡が、
華麗な技巧的ピアノ曲にドレスアップされている。
情感溢れる哀愁の旋律。
○劇的幻想曲 Fantasia Dramática, (1893)
全3楽章の、実質ピアノ協奏曲。
「劇的」と銘打ってある通り、ドラマティックな要素があり、
何となく民族的な要素も感じる。
ヴィアナ・ダ・モッタ:ピアノと管弦楽のための作品集
Romantic Piano Concerto 24:
Da Motta Piano Concerto in A minor / Fantasia Dramatica / Balada, op 16
ピアノ:アルトゥール・ピサロ Artur Pizarro
指揮:マーティン・ブラビンズ Martyn Brabbins
演奏:グルベンキアン管弦楽団
Orquestra Gulbenkian
【Hyperion CDA67163】
Wikipediaに於ける、題名から国民楽派の手法であると分かる作品。
ポルトガル狂詩曲 Rapsódias portuguesas (1891-1893)
ポルトガル歌集 Canções portuguesas Op. 10 (1893-5)
ポルトガルの情景 Cenas portuguesas (1893, 1905, 1908)
交響曲「祖国へ」 Sinfonia em Lá maior Op. 13 "À Pátria"
(1994, 1995, 1908?)
狂詩曲フェチの私は、「ポルトガル狂詩曲」がとても気になる。
楽器編成は何だろうか?ピアノだろうか?
管弦楽曲であって欲しい!!
そして聴きたい!!
(追記:「ポルトガル狂詩曲」はピアノ独奏曲で、
1891~1895年の間に5曲書かれたそう。ポルトガル語Wikiより)
(追記:交響曲「祖国へ」のCDレビューを後に書きました)
ジョゼ・ヴィアナ・ダ・モッタ José Vianna da Motta(2)ポルトガルの作曲家
2009年3月9日
【NF/PMA 9938】
アルフレード・ケイル
Alfredo Keil(1850.7.3-1907.10.4)
リスボン生まれのドイツ系作曲家、画家。
ハンブルク(Hamburg)歿。
ポルトガル国民楽派で、
ポルトガル民族オペラの創始者であるという。
歌曲とピアノ曲を収録したCDが出ている。
【PORTUGAL SOM PS5003】
何と、ポルトガル国歌(1890)の作曲者でもある!!
元々は「ポルトガルの歌」(A Portuguesa)というタイトルで、
1910年より国歌として使用されている
(作詞:エンリケ・ロペス・デ・メンドンサ Henrique Lopes de Mendonça)。
(追記:後にレビュー記事を書きました)
アルフレード・ケイル (Alfredo Keil) ポルトガルの作曲家
2008年9月9日
フランシスコ・デ・ラセルダ
Francisco de Lacerda
(1869.5.11-1934.7.18)
Francisco de Lacerda – Meloteca – Sítio de Músicas e Artes
リベイラ・セカ(カリェタ)Ribeira Seca(Calheta)生まれ。
リスボン歿。
詳細は、まだ不明(というか、翻訳が面倒)。
管弦楽のための4つの小品と民謡集のCDが出ている。
【PORTUGAL SOM PS5003】
(追記:フランスに留学した経験からか?
作風は印象派と国民楽派の折衷となっています。
管弦楽のための4つの小品(Quatro Peças Para Orquestra)
・アルモウロル(Almourol)
・パントマイム(Pantomima)
・月明かりの下で(Dans le clair de lune)
・英雄的第3番(墓碑)(Heroiques nº 3 (Épitaphe))
は、輪郭のはっきりしない印象派絵画を見ている様で、
おぼろげな雰囲気。
民謡集(Trovas)
は、極めて明解で親しみやすく国民主義的作風。
上記の作品、
2021年2月28日の時点で全てYouTubeに出ているのを確認)
月明かりの下で
Dans le Clair de Lune
【記事改訂2008年9月19日】
【追記:2021/2/28】
ヴィアンナ → ヴィアナ
肖像画像、CD画像、「交響曲読本」の画像追加
ダ・モッタのCD画像差し替え
メンドゥーサ → メンドンサ
ラセルダ「月明かりの下で」YouTube貼り付け
文中に追記
ダ・モッタの交響曲の表題は、
日本語Wikiでは「祖国」となっていますが、
英訳では「To the fatherland」となっているため、
「祖国へ」と訳しました。
ポルトガル語の「a」は、
男性名詞の前に付く場合「~へ、~に」(間接目的語)となり、
女性名詞の前に付く場合定冠詞となります。
ポルトガル語は、
規則的だが母音が表記通りに発音されないものがあるが、
煩雑さを避けるために敢えて
表記に対応したカタカナ表記をしました。
スペインの国民楽派は、
アルベニス(Albéniz)、グラナドス(Granados)、ファリャ(Falla)
などがよく知られ、スペイン人以外でも、
グリンカ、リムスキー=コルサコフ、シャブリエ、ラロなどが、
スペイン国民楽派の手法による管弦楽曲を書いている。
が、スペインとは言語的にも地理的にも近い
ポルトガルはどうなのかというと、
一般的には殆ど知られていない。
以前から、
「ポルトガルの19世紀の音楽はどうなのか?国民楽派は?」
と思っていた私ではあったが、
「交響曲読本」(ONTOMO MOOK・音楽之友社・1995年)で
「ジョアン・ドミンゴス・ボンテンポ」と「ダ・モッタ」
が簡単に紹介されるに留まっているだけの情報しか
手に入れていなかった。
が、ネットのお陰で少しではあるけれど、
情報を幾つか手に入れられたので、
紹介する事にしよう。
ジョアン・ドミンゴス・ボンテンポ
João Domingos Bomtempo
(1775.12.28-1842.8.18)
João Domingos Bomtempo – Wikipédia
古典期からロマン派の時代にかけて活躍した作曲家。
NAXOSから交響曲第1、2番のCDが出ています。
古典派は守備範囲ではないので、
実はNAXOS音楽配信サイトで曲の触りだけしか聴いていないのですが、
噂によれば、中々悪くない出来らしいとのこと(いい加減ですいません)。
第1番は1810年作曲なので、思いっきり古典派ですけど、
第2番は初期ロマン派時代だけあって、古典派的なものの中に、
ロマン派の萌芽が垣間見える作風のようです。
【NAXOS 8.557163】
ジョゼ・ヴィアナ・ダ・モッタ
José Vianna da Motta
(1868.4.22-1948.6.1)
サントメ(São Tomé)生まれ。
リスボン(Lisbon)歿。
ポルトガル国民楽派の作曲家にしてピアニスト、教師。
シャルヴェンカからピアノを学んだ。
フランツ・リストの最後の弟子でもある。
その後、シェーファーから更に学んだ後、ピアノストとして活躍。
ブゾーニと親交を結ぶ。
ヨーロッパや南米等、各国で演奏活動を行い、
絶賛を受けたという。
作風は、後期ロマン派風の華麗な作風。
彼の曲のCDは少し出ているようだ。
交響曲「祖国へ」のCDが出ている。
資料によって、
作曲年が「1894年」「1895年」「1908年」と違っているので、
一体どれが正しいのやら・・・。
ピアノ協奏曲のCDは、比較的手に入り易い。
以下、その収録曲。
○ピアノ協奏曲
Concerto em Lá maior, (1886-1887)
未だ10代の頃に書かれた早熟の天才振りを感じる作品。
若書きにしては、遜色が感じられない所か、
既に民族的要素も感じられる。
10代で既に完成された
民族主義的管弦楽曲を書いた驚異的作曲家は、他に
ジョルジェ・エネスク(George Enescu)や
ヘイミッシュ・マッカン(Hamish MacCunn)などがいる。
エネスクはWikipediaドイツ語版によると、
台詞無し男性合唱を伴う
「ルーマニア詩曲」作品1(1897)の他に、
2つのルーマニア組曲(1896, 1897)
というのを10代で書いているという。
話を元に戻します。
全2楽章だが、第2楽章は、
提示部(主題)とその5つの変奏となっている。
この第2楽章が、
なんとも情感溢れるファドかと思うような旋律なのだ!!
○バラード Ballada Op 16, (1905)
Hyperionのロマン派ピアノ協奏曲シリーズ収録ではあるが、
ピアノ独奏曲である。
「Tricana da Aldeia」と「Ave Maria」という2つの民謡が、
華麗な技巧的ピアノ曲にドレスアップされている。
情感溢れる哀愁の旋律。
○劇的幻想曲 Fantasia Dramática, (1893)
全3楽章の、実質ピアノ協奏曲。
「劇的」と銘打ってある通り、ドラマティックな要素があり、
何となく民族的な要素も感じる。
ヴィアナ・ダ・モッタ:ピアノと管弦楽のための作品集
Romantic Piano Concerto 24:
Da Motta Piano Concerto in A minor / Fantasia Dramatica / Balada, op 16
ピアノ:アルトゥール・ピサロ Artur Pizarro
指揮:マーティン・ブラビンズ Martyn Brabbins
演奏:グルベンキアン管弦楽団
Orquestra Gulbenkian
【Hyperion CDA67163】
Wikipediaに於ける、題名から国民楽派の手法であると分かる作品。
ポルトガル狂詩曲 Rapsódias portuguesas (1891-1893)
ポルトガル歌集 Canções portuguesas Op. 10 (1893-5)
ポルトガルの情景 Cenas portuguesas (1893, 1905, 1908)
交響曲「祖国へ」 Sinfonia em Lá maior Op. 13 "À Pátria"
(1994, 1995, 1908?)
狂詩曲フェチの私は、「ポルトガル狂詩曲」がとても気になる。
楽器編成は何だろうか?ピアノだろうか?
管弦楽曲であって欲しい!!
そして聴きたい!!
(追記:「ポルトガル狂詩曲」はピアノ独奏曲で、
1891~1895年の間に5曲書かれたそう。ポルトガル語Wikiより)
(追記:交響曲「祖国へ」のCDレビューを後に書きました)
ジョゼ・ヴィアナ・ダ・モッタ José Vianna da Motta(2)ポルトガルの作曲家
2009年3月9日
【NF/PMA 9938】
アルフレード・ケイル
Alfredo Keil(1850.7.3-1907.10.4)
リスボン生まれのドイツ系作曲家、画家。
ハンブルク(Hamburg)歿。
ポルトガル国民楽派で、
ポルトガル民族オペラの創始者であるという。
歌曲とピアノ曲を収録したCDが出ている。
【PORTUGAL SOM PS5003】
何と、ポルトガル国歌(1890)の作曲者でもある!!
元々は「ポルトガルの歌」(A Portuguesa)というタイトルで、
1910年より国歌として使用されている
(作詞:エンリケ・ロペス・デ・メンドンサ Henrique Lopes de Mendonça)。
(追記:後にレビュー記事を書きました)
アルフレード・ケイル (Alfredo Keil) ポルトガルの作曲家
2008年9月9日
フランシスコ・デ・ラセルダ
Francisco de Lacerda
(1869.5.11-1934.7.18)
Francisco de Lacerda – Meloteca – Sítio de Músicas e Artes
リベイラ・セカ(カリェタ)Ribeira Seca(Calheta)生まれ。
リスボン歿。
詳細は、まだ不明(というか、翻訳が面倒)。
管弦楽のための4つの小品と民謡集のCDが出ている。
【PORTUGAL SOM PS5003】
(追記:フランスに留学した経験からか?
作風は印象派と国民楽派の折衷となっています。
管弦楽のための4つの小品(Quatro Peças Para Orquestra)
・アルモウロル(Almourol)
・パントマイム(Pantomima)
・月明かりの下で(Dans le clair de lune)
・英雄的第3番(墓碑)(Heroiques nº 3 (Épitaphe))
は、輪郭のはっきりしない印象派絵画を見ている様で、
おぼろげな雰囲気。
民謡集(Trovas)
は、極めて明解で親しみやすく国民主義的作風。
上記の作品、
2021年2月28日の時点で全てYouTubeに出ているのを確認)
月明かりの下で
Dans le Clair de Lune
【記事改訂2008年9月19日】
【追記:2021/2/28】
ヴィアンナ → ヴィアナ
肖像画像、CD画像、「交響曲読本」の画像追加
ダ・モッタのCD画像差し替え
メンドゥーサ → メンドンサ
ラセルダ「月明かりの下で」YouTube貼り付け
文中に追記
ダ・モッタの交響曲の表題は、
日本語Wikiでは「祖国」となっていますが、
英訳では「To the fatherland」となっているため、
「祖国へ」と訳しました。
ポルトガル語の「a」は、
男性名詞の前に付く場合「~へ、~に」(間接目的語)となり、
女性名詞の前に付く場合定冠詞となります。
ポルトガル語は、
規則的だが母音が表記通りに発音されないものがあるが、
煩雑さを避けるために敢えて
表記に対応したカタカナ表記をしました。