事件の陰に女あり。映画「アメリカン・ハッスル」紹介 | 忍之閻魔帳

忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)



▼事件の陰に女あり。映画「アメリカン・ハッスル」

「ザ・ファイター」「世界にひとつのプレイブック」と
立て続けに傑作を送り出してきた
デヴィッド・O・ラッセル監督の最新作が明日公開。
本年度のアカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、
助演男優賞、助演女優賞、脚本賞など最多の10部門にノミネートされている話題作。

出演は「ザ・ファイター」からクリスチャン・ベイル、エイミー・アダムス、
「世界にひとつのプレイブック」からブラッドリー・クーパー、
ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ=ニーロと
ラッセル作品への出演歴があるキャストを総動員して醸し出す
ファミリー感も見どころのひとつだ。



映画は1979年に実際に起こった大物政治家らによる収賄スキャンダル
「アブスキャム事件」をベースにしたフィクション。
嘘のような本当の話と言えば、第85回のオスカーで作品賞を受賞した
ベン・アフレック(監督・主演)の「アルゴ」を思い出すが
緊張感たっぷりの「アルゴ」とは対照的にこちらはあくまでもコミカル。
劇中で行われていることは立派な犯罪行為にも関わらず
ラッセル監督らしい遊び心が至るところに散りばめられ
仕掛ける側も仕掛けられる側も愛嬌たっぷりのキャラクターばかり。

ストーリーについてあまり書いてしまうと面白味半減なので
俳優陣を使ってざっくり説明すると、
クリスチャン・ベイルとエイミー・アダムスが共謀して詐欺を企てる。
最初のうちは順調に稼いでいたが、ブラッドリー・クーパー演じる
パンチパーマのFBI捜査官に見つかってしまい、
あわやお縄というところである条件を提示される。
その条件とは、ジェレミー・レナー演じるリーゼント市長の化けの皮を剥がすために
おとり捜査に協力しろというもの。
かくして凸凹コンビが誕生するが、クリスチャン・ベイルには
手の付けられない暴れ馬のような妻がいたのだった。
この妻を演じるのが、今年の映画賞を席巻しているジェニファー・ローレンスである。

男の欲望や浅知恵が渦巻くおとり捜査の裏で
本作の裏テーマになっているのが、クリスチャン・ベイルを挟んだ二人の女性。
エイミー・アダムス演じる愛人とジェニファー・ローレンス演じる本妻が
それぞれの立場からどう生きることが最良であるのかを模索するストーリー。
若干23歳にして大女優の貫禄すら漂わせるジェニファー・ローレンスは
2年連続のオスカー受賞も達成してしまいそうな名演の連続。
自分で自分の感情を上手くコントロールできずヒステリックになってしまう
ロザリンという女性像を、ただの「扱い辛いバカ女」で終わらせず
チャーミングにすら見せてしまうのだからまったく素晴らしい。

鑑賞前は芝居のアンサンブルで押し切る映画かと思っていたのだが
米上院議員と5人の下院議員が汚職で有罪となった大事件にヒントを得て
これほど秀逸なストーリーを紡ぎ、ちょっといいオチまで付けてしまう
デヴィッド・O・ラッセルはタダ者ではない。

映画「アメリカン・ハッスル」は本日1月31日より公開。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:アメリカン・ハッスル
    配給:ファントム・フィルム
   公開日:2014年1月31日
    監督:デヴィッド・O・ラッセル
   出演者:クリスチャン・ベイル、他
 公式サイト:http://american-hustle.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



発売中■Blu-ray:「スティング コレクターズ・エディション」
発売中■Blu-ray:「スティング」
発売中■DVD:「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」
発売中■BOOK:「百万ドルをとり返せ!」

コン・ゲームものの名作と言えば「スティング」。




発売中■CD:「American Hustle Original Soundtrack」




発売中■Blu-ray:「世界にひとつのプレイブック」

デヴィッド・O・ラッセル監督の直近2作を軽く紹介。

「世界にひとつのプレイブック」は
欠けた部分を補い合って生きる人々を描いたハートフルなドラマ。
主演は「ハングオーバー!!」シリーズのブラッドリー・クーパーと
「ハンガー・ゲーム」のジェニファー・ローレンス。
共演はロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーヴァー、
「ラッシュアワー3」以来5年振りのスクリーン復帰となるクリス・タッカーなど。

主人公の二人はどちらも双極性障害を抱えている。
パット(ブラッドリー・クーパー)は妻の不貞をきっかけに
感情の抑制が利かなくなり、精神病院へ入院させられている。
映画ではパットが退院するところから始まるのだが
復縁どころか妻からは接近禁止令が出されており
父と母の暮らす実家に戻って、まずは社会復帰を目指すことに。
片やティファニー(ジェニファー・ローレンス)はというと
こちらも不慮の事故で夫を亡くして以来、哀しみと自責の念で心を病んでしまい
勤めている会社の男性社員全員と関係を持ってしまうなど
常に不安定な状態で生活を送っている。
そんな二人が共通の友人を介して出会い、目標(ダンス大会出場)を共有することで
少しずつ距離を縮めてゆく。

体が健康でも、心が不健康でも、人は皆どこかが足りない。
最初から足りないのか、何かきっかけがあって欠けたのか
人によって事情は違えど、傷ついた人間にも誰かの傷を癒やす力はある。
「誰かに助けて欲しい」は「誰かを助けたい」と実は似ていて
誰かを助けることが、最終的に自分自身を癒すことにも繋がるのかも知れない。
失った心のカケラとカケラを埋め合った時、人はまた恋をする。

取り立てて大きな事件が起こるでもなし、オチの付け方もベタそのものではあるが
とてもハッピーな気持ちになれる良作。




発売中■Blu-ray:「ザ・ファイター」

クリスチャン・ベイルが助演男優賞、メリッサ・レオが助演女優賞をWで獲得し、
同じくエイミー・アダムスも助演にノミネートされたのが「ザ・ファイター」。

貧乏のくせに子だくさんで、ろくな稼ぎ手がいない家族。
そこに生まれた大スターの兄ディッキー(クリスチャン・ベイル)は
栄光を手にしたのも束の間、薬物に手を出してあっという間の転落人生まっしぐら。
残された弟ミッキー(マーク・ウォールバーグ)は、
マネージャーの母と6人の姉妹達を養うために
金額優先で組まれた試合に出ては、黒星が増えていく生活を送っている。
そこに現れたひとりの女性(エイミー・アダムス)が家族の元を離れることを進言し、
事態は上手く回り始めたかのように見えたが、稼ぎ頭を泥棒猫に盗られたと思った母親達が
素直に引き下がるわけもなく・・・というお話。

貧乏、ドラッグ、転落、復活という構成はこの手の映画の定番なので
ストーリー自体は「またか」というものなのだが、
あぶなっかしいけれどどこか憎み切れない兄を演じたクリスチャン・ベイルや、
拝金主義のステージママを演じたメリッサ・レオのインパクトが凄まじく、
役者の力でグイグイと観客を引っ張っていく。

恋人のシャーリーン(エイミー・アダムス)は
トラブルメーカーの兄や稼ぎにぶら下がって寄生するしか能のない母親や姉妹達と
縁を切るべきだと主張するが、ミッキーは頭の半分で理解しながらも
残り半分では「やはり家族が必要だ」という思いを捨て切れない。
傍から見ればマイナスにしか見えない関係が
当人にとっては命綱になっていたりすることは確かにあって、
この映画は、家族というコミュニティが持つ微妙なニュアンスを良く描いている。

こうして2作を振り返ると、
ラッセルはつくづく人間が好きなのだと思う。
傷ついたり躓いたりしながら互いに手を差し伸べ合い、
時に煩わしく思うことがあっても、必ずどこかで繋がっている。



▼iTMS/APPストア情報(1月30日付)

FINAL FANTASY IV: THE AFTER YEARS 月の帰還
配信中■iOS:「FINAL FANTASY IV: THE AFTER YEARS 月の帰還」(ユニバーサル)
配信中■iOS:「FINAL FANTASY IV」(ユニバーサル)
配信中■iOS:「FINAL FANTASY V」(ユニバーサル)

iOS用の移植作がどれも高い評価を受けている
スクエニの「FF」シリーズから、昨年11月より配信が開始された
「FINAL FANTASY IV: THE AFTER YEARS 月の帰還」が初の値下げセール中。
章ごとに分割購入制であったコンシューマー版を見直し
完全買い切り&全部入り&3D対応のリメイク移植。
この仕様で1,200円(通常1,800円)ならお買い得。
コンシューマー版を未プレイで「IV」好きならお薦め。



iOS Fate/Zero
配信中■iOS:「Fate/Zero The Adventure / フェイト/ゼロ」

原作ルート、アニメルート、新規オリジナルシナリオを搭載した
「Fate/Zero」初のアドベンチャーゲーム化タイトルが
通常3,000円から1,500円の半額セール中。
元値が高額のため、値引き幅もかなり大きい。
セール期間は2月7日まで。