「獄中ビジネスはもう考えてます」
AERA 2011/06/06(pp.57-59)
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それではだいぶ時間が経ってしまいましたが、前回の【前半】 に引き続きまして、早速後半の内容に入っていきたいと思います。
私の悪いクセで、相変わらず今回も長文になっておりますので、少し趣向を変えて、ここで本エントリーの【結論】を先取りして述べておこうと思います。
【結論】:「歴史っていうのは読むものじゃなくて、創るもんなんだよ!」
ということで、確かにこの人、「タダモノ」じゃないんです・・・。
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■「獄中ビジネス」って、何をするんですか?
■哲学書や歴史書って、「何か意味あるんですか」?
■ホリエちゃんの「野望」
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■「獄中ビジネス」って、何をするんですか?
見出しにもあるように、本記事のメイントピックは「獄中ビジネス」。そして、ホリエちゃんは、そのビジネスを「もう考えています」とのこと。
でも、「獄中ビジネス」って、一体何をするのでしょうか?
ここでは、その少しを簡単に紹介したいと思います。
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現在、氏は週刊誌への連載はもちろんのこと、メルマガの定期配信も抱えています。けれども今後、氏が刑務所で生活するとなると、そのメルマガはどうなってしまうのでしょうか?
氏は述べます。
《メルマガでは獄中記を発信するつもりです。獄中記は手紙で編集者に送ります。出せる手紙に制限があるので、手紙のナマ原稿をそのままタイピングして載せるなんてもったいないことはしません。書きためてある原稿などと合わせ、編集者が記事を仕立てます。メルマガの会員は1万3千人。毎月の購読料が840円なので結構な売り上げです。さらに本人原稿で100%埋め尽くす必要はない。寄稿もしてもらい、『堀江貴文責任編集』という形も考えています。》(p.57)
『獄中記』というのであれば、既に佐藤優氏が刑務所での思索活動の内容を岩波書店から出版していますので、「稀少性」には少々欠けてしまいます(ただ、書の内容は180度異なるでしょう)。
けれでも、リアルタイムで、かつ氏オリジナルの視点からの獄中生活の描写であれば、そこには当然ながら「魅了性」が生じるわけで、そうすれば確かに「付加価値」は増します。
さらに、自分で執筆するだけではなく、他人執筆の原稿を獄中で自ら編集し、1つのコンテンツとして発信するというのだから、これは「新奇性」がある。
だた、ここで何よりも驚愕するのが、氏のメルマガの購読者が「1万3千人」もいるというコメント。購読料が月840円ということなので、シンプルに考えても月当たりの総売りが…、ナント、いわゆる「1本」たってしまっている!
これで氏がメルマガの配信を辞めない理由が、ハッキリと認識できました(これは、確かに美味しすぎてヤメラレナイ(苦笑))。
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その他にも、氏は「ダイエット本」の出版にも意欲的なようで、獄中期間に30キロの減量にチャレンジするようです。
きっとその減量が達成できれば、『ホリエモンの「私はこうして痩せました!」-獄中ダイエットの秘訣10ヶ条』みたいな書籍が作られるのかもしれません。
氏は《(刑務所から)発信する量に制限があっても、コンテンツを増やす方法はちゃんと考えてありますから大丈夫です》(p.58 カッコは小生追加)と豪語するように、確かに「獄中ビジネス」を色々と考えていらっしゃる。
このアグレッシブさには頭が下がる思いなのですが、それでもこれ以上に、小生が感銘を受けたのが、以下に記載する氏の「考え方」なのでした。
■哲学書や歴史書って、「何か意味あるんですか」?
ホリエちゃんはインタビューのなかで、聞き手と次のような「やり取り」を展開します(p.58)。
聞き手:《哲学とか歴史とかの本を読もうとは思いませんか。》
堀江:《それって何か意味あるんですか。聖書なんて読む人もいるようですが、面白いんですかね。そういう話をされることが良くあるので、サワリ程度は知らなければいけないな、と思って、『まんがで読破』っていう名作シリーズで読もうと思っています。》
オッ~、なんとも挑発的なコメント。
これでは、【以前本ブログでも取り上げた】 何かと『原著』(古典)をススメル(もちろん、その通りなのですが)大前研一氏から、「堀江クン、漫画じゃなくてさ~、原著読めよ!」と言われかねない(笑)。
ましてや、歴史を重視してきた「重鎮」、例えば、現在大人気の故・ドラッカー(経営学者)や故・松下幸之助翁(経営者)等の歴史を学ぶことで、色々な「概念」や「事業」を世に発信してきた人々を敵に回しかねない。
それでも、氏にとっては、哲学も歴史も、それらは決して「読むもの」ではないのです。
■ホリエちゃんの「野望」
小生であれば、哲学や歴史は「大好物」の1つですので、時間があれば貪るように読みまくります(ドイツ宰相・ビスマルクが述べたと言われる、「賢者は歴史に学び、愚者は体験に学ぶ」を「座右の銘」にしているぐらいですから)。
けれども、ホリエちゃんは、そうではないのです。
それでは一体なぜ、氏は哲学や歴史に興味を示さないのでしょうか?その理由は、一体何なのか?
小生にはその「答え」が、本記事の後半を、虚心に読み進めていくうちに徐々に見えてきたのでした・・・。
氏は、次のように述べます。
《宇宙というと最先端技術に思いますが、宇宙空間に出るだけならありふれた技術で可能です。スペースシャトルのように地球の周りを回って帰ってくるのは難しくはない。安く正確に打ち上げることは日本の技術力があればできる。いままでやろうとした人たちがいなかっただけです。それを僕たちベンチャーがやる。いまはまずロケットを自前でつくることからはじめています。ロケット好きたちが熱い思いで取り組んでいます。(中略)
宇宙で格安料金でいける事業を作れば、宇宙旅行は一挙にブレークすると思う。研究室で眠っている日の当たらない先端技術に資金や関心が集まり、新しい産業が生まれます。夢のようなこと、と思われるかもしれませんが、夢想したことを実現してきたのが人類の歴史です。》(P.59)
そう!これなんです。
つまり、《夢想したことを実現してきたのが人類の歴史です》との発言から分かるように、氏は「歴史というのは読むものではなく、むしろ、自らが抱く『夢想』を通じて創りあげていくものである」と考えているのです。
このように考えることができるホリエちゃんという人は、本当に「熱い」ですよ。
「ロマン」を求めて(「金脈」求めて?)、仲間と共に「宇宙ビジネス」を目指す(「ゴールドラッシュ」?)そのスタンスは、「フロンティア精神」よろしく、まさに「開拓者」の気構えそのもの。
「坂本龍馬」とまではいかなくても、氏は「宇宙」という切り口で、自らが行った「事」(事業)を歴史の一ページとして、後世に残そうとしている。
これを「野望」(野心)と言わずして、一体なんと喩えましょうか!
そして、さらに小生の「想像」(仮説)を展開させて頂くならば、氏は、日本の政・官・財に多種多様な行為(「仕打ち」?)を受けてきたにも関わらず、それでもなお日本での事業を実践している。
それは、一体なぜなのか?海外ではなく、こと日本で活動する、その理由は何か?もしかしたら、その背景として、氏の中に次のような「夢想」があるのかもしれない。
《今一度日本を洗濯いたしたく候》
もしそうであるならば、堀江殿、アナタは本当にドエライ「野望」(野心)を持っているゼヨ!!
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小生は以前、ツイッター上で以下のことを述べました【原文はこちら】 。
《10年後の未来を予想する」なかなか面白い試みだが、未来を予想したって、ほぼ当たることなど無い。けれども、”必ず”未来を当てることができることもある。それが、自らが予想する未来を、自らが創ってしまうことだ。「こんな未来がきて欲しい!」というのであれば、そんな未来を創ってしまえ!》
テレビや新聞・雑誌等のメディアでは、知識人やその道の専門家たちが「大予測」なんて謳って(特に年末年始に)、これから起こる政治、経済、文化の話題(未来)を、「過去」(歴史)を振り返りながら面白おかしく語ります。
しかし、分かっている人には分かっているのだと思います。良い予測であれ、悪い予測であれ(後者はあまり起きて欲しくないですが)、上記したように「過去を振り返りながら、『こうなる!』とあ~だこ~だと予測する暇があるんだったら、何よりもお前がそれを実現しろ!カタチにしてみろ!」ということが(無論、実現するために「過去」を学ぶということもありますよね)。
ホリエちゃんも、きっとその「分かっている」一人なんだと思います(そう、小生が勝手に「センスメイク」しているだけなのですが(笑))。
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世間には残念ながら、本人にも会ってもいないのに、氏に対して嫌悪感を剥き出しにする人がいます(そういう人が、小生のまわりにも存在します)。
氏にとって、こういった「食わず嫌い」から色々と言われるのは、あまり喜ばしいことではないでしょう。
けれどもポジティブに捉えれば、「どうでもいい」や「なんとも思わない」と言われるよりかは、「嫌われ者」のほうが「無関心」よりも注目されているという意味で良いかと思いますので、今後とも、自らの「夢想」の実現に向けて、モチベーション全開で邁進していってほしいと思います。
どこまで氏の夢想がカタチになるのかは不明確ではありますが、それでも小生は、その夢想を追いかける氏の姿に本当に気づかされるポイントが豊富にありました。
これからも山アリ谷アリのキャリアになるかとは思いますが、ガンバレ、ホリエちゃん!そして、ビバ、宇宙ビジネス!!
Let's get psyched up !!
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【本エントリーのエッセンス】
「歴史は読むものではありません、創るものなのです」
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【関連記事:大前氏、「古典」の重要性を説く…けど、そこは要注意!】
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【関連記事:堀江氏の「ビジネスセンス」を知りたい方へ】
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