『拝金』(後半) | 新人経営コンサルタントの奮闘記録-読書を通じての徒然日記-

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経営コンサルタントとして活動し、早5年目。そんな新人が、ビジネスという魑魅魍魎がうようよ跋扈する世界で活躍するために、自己研鑽・自己武装(『読書』)をしております。その記録を記載していきます。どうぞ宜しくお願い致します。

堀江貴文(2010) 『拝金』 徳間書店


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それでは前回の【前半】 を受けて、今回は後半として、本書を読んで私が学んだ点を記載していきたいと思います。


なお、本エントリーの「キーメッセージ」は、以下の通りです。


「ビジネスの要諦は、『収集』⇒『思考』⇒『実践』のサイクル。これだけ!」


今回も少々長文になっておりますが、どうぞ宜しくお願いいたします!


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『拝金』の「あらすじ」
『拝金』が教える「ビジネスの原則」
実業家・堀江貴文氏から学んだ「ビジネスの3つの要諦」


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『拝金』の「あらすじ」


まずは本題に入る前に、本書『拝金』のあらすじをご紹介します。


主人公は20歳の藤田優作。北関東の田舎から上京してきた年収200万円のフリーターです。そんな彼がある日、古ぼけたゲームセンター・ゲーパラ(ゲームパラダイス)で、「オッサン」こと堀井健史と出会います。


最初、優作はオッサンと距離を置きますが、ゲーパラ近くの公園で鳩の雑談(内容は「鳩ボール」)をしたことがきっかけで、徐々に親しくなっていきます。


ある日、オッサンが優作に「今度飯でも食べに行こうか」と誘い、2人は西麻布へ向かいます。


まず「KEYAKI」という占いワインバーで食前酒としてワインを飲み、次に季節料理屋でふぐのコースを食します。そして最後に、高級カラオケボックスに行きますが、そこで優作は、以下のようなやり取りで、オッサン(「悪魔」)と契約を結びます(pp.56-57)。


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「なぁ、優作。金持ちになりたくないか?」「金持ちにしてやろうか」


「金持ち?ハハハハ。なんで、俺を?」


「優作が金持ちになると、いったい、どうなるのか見てみたくなった」


「いいよ、金持ちになってやっても。で、そのお礼に俺は何をすればいいの?」


「そうだな、優作が金持ちになったら、ひとつ頼みごとをさせてもらおうかな」


「金貸して、とか?」


「どれくらいの金持ちになりたい?」


「そうだな、金で買えないものはない、そういえるくらいかな」


「わかった、それでいこう」「契約、成立だな」


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そして、ここから優作はオッサンから200万円を借り、その資金を元手に、オッサンからアドバイス(指示)を貰いながら、「ITの若き帝王」に駆け上がっていきます。


『拝金』が教える「ビジネスの原則」


本書の物語は、上記のような出だしでスタートしていきますが、私はこの書籍を読んで、本書は大きく「前半」「後半」の2つに分けることができると考えています。


まず前半は、「起業」がメイントピック。そして後半は、いわゆる「ライブドア事件」がメインで、野球球団や放送局の買収の攻防戦が、スピーディーに綴られていきます(ちなみに、会社のライフサイクルでたとえると、前者が「導入期」(オン・ザ・エッジ時代)で、後者が「成長期」(ライブドア時代)といえるかもしれません)。


ワイドショーの視点から見れば、言わずもがな、後半の記述に焦点が当てられると思います。しかしながら、やはり実務の現場に立つモノからすると、後半よりも前半に目が向きますし、そちらのほうが断然面白い!


オッサンは、初めて起業する優作に対して、様々な「アドバイス」をします。


例えば、オッサンは、優作にビジネスの「やり方」について語ります。


《「ビジネスにビビリすぎだ。いいか、誰だってやり方さえ間違わなければ、年商1000万円の会社くらい簡単に作れるんだ。少なくとも会社勤めの給料分くらいの利益は出せる。でなければ、世の中にこれだけ会社があるはずないじゃないか」》(p.64)


その内容を聞き、優作は思考停止状態から、徐々に頭を回転させ始める。


《軽トラを借りて1日2台のバイクを回収できれば、売上2万円。これを2人して月25日やれば100万円の月商だ。経費はたかが知れているだろう。とにかく、確かに年商1000万円の「会社」ができる。》(p.65)


そこで、オッサンは「商売の極意」について教えます。


《「商売の極意はやりたいことをするんじゃない。やっちゃいけないことを、しないことだよ」(中略)「発想を変えるんだよ。成功しようとするのではなく、失敗しないようにする。難しいことじゃないだろ。大切な選択は消去法で考えるほうがうまくいく」》(p.67)


そして、極めつけは、「オッサン直伝のビジネス初心者4カ条」


《1つ、元手をかけない。2つ、在庫ゼロ。3つ、定期収入。4つ、利益率。》

(p.71)


これはまさに、ビジネスをする上で欠かすことのできない「原則」ではないでしょうか(この辺を、”サラッ”と書いてしまうところが、憎らしい(笑))。


例えば、「在庫」を極力持たない、というかむしろ「ゼロ」にすることについて。


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モノを扱う商売では、確かに在庫(「棚卸資産」)は不可欠です。というのも、在庫がなければ機会損失が生まれるからです。


しかしながら、これは極力少ないほうがいいし、また在庫を持たずに商売ができればそれに越したことはない。それは、たとえ在庫が豊富にあっても、無くなったり盗られたりしてしまえば、その在庫は減少してしまうし(「棚卸減耗損」)、また、劣化等して在庫の価値が低下すれば、仕入れた金額よりも安くなってしまうからです(「商品評価損」)。


さらに、在庫を仕入れた際には、仕入先に支払いが生じますが(「キャッシュ・アウト」)、その在庫が必ず売れるとは限らず、そのため、売上が入ってこない(「キャッシュ・イン」なし)。売上が入ってこなければ、支払いは滞りますので、早晩、会社倒産は必至。


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まさにこれが、「在庫は罪庫である」といわれる「所以」(ロジック)ですね。


堀江氏は、常にこのような「ビジネスの基本」を、またいかに売上を上げ、一方でどれだけ費用を抑えるかといった「儲けの仕組み」(ビジネスモデル)を、頭の中でいくつも考えているそうです。


そして、氏はその一部を、本書の中で「ビジネスの原則」(例えば、先の「4ヵ条」)として提示してくれているのでした。


実業家・堀江貴文氏が教えてくれた「ビジネスの3つの要諦」


このように堀江氏は、本書前半で、上記した「ビジネスの原則」をわかりやすく優作に、そして優作を通じて我々読者に伝えています。


このような内容に触れると、やはり私は氏に対して興味を抱かざるを得ない。


というのも、氏の書籍を読んでいると、どうも以下のことを考えざるを得ないから。


それは、少々極論かもしれませんが、「ビジネスにセンスのある人間というのは、ビジネス書なんか読まないし、というか必要ないよ」ということ。


そう考えていたら、氏は『君がオヤジになる前に』(徳間書店)で述べていた。


《成功者の自慢話がタレ流しのビジネス書なんか読まなくていい》(p.18)


上記した「ビジネス初心者4カ条」が良い例ですが、氏はそれら「4カ条」をビジネス書等で学んだのではなく、自らの実務経験を通じて把握し、それを素材にさらに考え、その考えを迅速に実行し、自分の会社の成長につなげてきた。ただ、それだけ。


ここからわかることは、当然のこととして、「一生懸命ビジネス書を読んでも、特に意味があるわけではない」ということ。重要なのは、自分で行動(例えば、起業)して、そこで考え何かを見出し、そこからまた行動すること。そして、それをしない限り、ビジネスでの成功はありえない、という1つの「真実」


要は、「ビジネス書を読んで満足しているような、そんなヘタレになんかなるな!」ということでしょう(うっ、小生のことか…(苦笑))。


『拝金』に限らず、氏の著作を読んでいて思うのですが、堀江氏は「ビジネスでは、3つのことだけすればいい」と、そう教えてくれているような気がします。


それは、常に「情報を持つこと」(「収集」)「そこからアイデアを考え、生み出すこと」(「思考」)、そして「そのアイデアを実行すること」(「実践」)


氏は、『君がオヤジになる前に』で述べます(「収集」について)。


《情報だ。情報を所持するということは、未来を見ることだ。僕は10年前から情報を人よりも多く所持するために、あらゆる手段を尽くしていた。10年前には現在の電子書籍市場の活況を言い当てていた。すごいですね!と驚かれることもあるけど、僕には当然のことだった。情報を知っているから、ある程度の未来を見通すことができる。だから、失敗のリスクを最小限に減らせて、会社を大きく成長させられた。(中略)情報を多く持っていれば、さまざまな場面で主導権を握ることができる。》(pp.83-85)


また、同書の中で、以下のように檄を飛ばします(「思考」について)。


《常に思考を埋めろ。飛行機や新幹線で移動するとも、ボッーと窓の外の風景を見ていちゃいけない。携帯電話でニュースを読んだり、仕事の計画書をまとめたり、頭の中をいつでも思考で満たせばいい。思考を埋めていれば、新しい情報がどんどん入ってくる。》(p.110)


さらに、『稼ぐが勝ち』(光文社)では次のように語ります(「実践」について)。


《やはり、僕たち世代やもっと若い世代がチャレンジしていかなければだめなのです。向こう見ずでも、いけいけドンドンでもいい。失敗しても一番下は「ゼロ」です。いまの自分に戻るだけ。上は100億円、1000億円ときりがありません。チャレンジすれば必ず結果は生まれてきます。チャレンジしてください。若いうちほどリスクが少なくてカンタンなのですから。》(pp.200-211)


もちろん、「チャレンジ」するにも、「タイミング」「ターゲット」といった問題もあります。けれども、そもそも情報を収集し、そこからビジネスのアイデアを思考し、それを実践しなければ、何事も始まりません。


こうして堀江氏は、様々な書籍を通じて、私たちに「ビジネスの要諦」を教え、そのビジネス(起業)を始めるハードルを下げてくれているのでした。


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このように堀江氏は、自身の経験をもとに複数の書籍を執筆し、ビジネスで成功する、その確率を上げるための「ヒント」を記載しています。


そのため、ビジネスに興味のある全ての人にとって、氏の書籍は参考になることでしょう。


ただ、氏の書籍を全て読めと、そんなことは流石に言いません。というのも、読者の関心によって、書籍にはアタリハズレがありますので(苦笑)。


それでも、誰もが認めることだと思いますが、氏はビジネスの類まれな能力をお持ちの方ですので、もし氏の書籍を読まれていない方がいらっしゃれば、その能力を垣間見るためにも、何か1冊手に取ることをおススメします。


「なんとなく、嫌いだから読まない」という「食わず嫌い」は一番宜しくない。何はともあれ、取りあえず食らっておく。それをしたからといって、決して命を取られるわけではありませんので(笑)。


断言はできませんが、そうすることで、それこそ「新しいアイデア」が生まれてくるかもしれません。是非とも、「チャレンジしてください」


他方、既に読まれている方であれば、氏の書籍からビジネスのアイデアを考え生み出して、それを極力速やかに実行する。


何よりも、それを氏は、「ビジネスの要諦」として教えてくれているのですから(もしそれをしなければ、その人は氏の書籍から何も学んでいないということになります)。


私も、どこまでできるかは別として、氏の「教え」を確実に(一方で、批判的に(苦笑))受け止め、可及的速やかに行動していきたいと思います!


皆さんも是非!!


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ここまでの長文に目を通して頂きまして、本当にありがとうございました!


最後に、「本エントリーのエッセンス」を記載して、締めたいと思います。


本エントリーのエッセンス

「ビジネスで肝心なのは、情報を集め(『インプット』)、それを基に考え(『プロセス』)、考えた結果を実行すること(『アウトプット』)。


つまり、ビジネスの要諦としていえることは、『収集』と『思考』、そして『実践』。何も難しいことはない、たったこれだけ。


そして付け加えるならば、このサイクル(『収集』⇒『思考』⇒『実践』)をどれだけスピード感を持って、継続的に反復し、成果に結びつけられるか。


それができるか否かが、ビジネスの成功の分かれ道である。」


追伸:
今後、堀江氏が収監されると、このような興味深い書籍が暫く生まれないことになります。しかし、氏はそれでも何らかの方法で、収監先から自らの「思考の産物」を発信していくようですので、これからは、それに私は注目したいと思います。


All the best to you !!


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