ACT205妄想【13】 | 妄想最終処分場

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10/19発売の本誌ACT205の続き妄想です

ネタバレものなので、未読の方、コミックス派の方はバックプリーズ!!


今回の続き妄想に関しては別途お知らせがあります。読み進めの前にこちらを一読の上お願いいたします→ACT205妄想についてお知らせ
※お知らせを未読の状態でのご意見・質問(特にクレーム)に関しては厳しい反応を返すやもしれません。必ずご確認ください。




それでは自己責任でご覧くださいませ↓








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ACT205妄想【13】



「…もうっ、よりによって!」


キョーコは控室で今日の仕事の進行表を見て愕然とした。わなわなと進行表を震わせる手羽先を本日の仕事の相棒である鶏の頭部がじっと見ている。


「…分かってるわよ。仕事は仕事!ちゃんとこなすわよ…こなして見せるんだから!」


その視線にキョーコが相棒に目をやればどことなく眉尻が下がったように見え、びしりと坊の頭部に指を突きつけてそう宣言する。滑稽な独り言ではあるのだがその声を聞く者はなく、キョーコの一人毎はなおも続く。


「そりゃ挨拶しなきゃとか、会いたいなとか思ったわよ!でも、こんなのって…!」


そう、坊の衣装があるということは…今はキョーコの週一レギュラーの番組の収録日。まだ整わない体調で臨んだ収録は少々きつかった。しかも朝は電車事故に巻き込まれ遅刻ギリギリで収録に滑り込み、2本目のゲストの欄までしっかり進行表を見ることができなかったのだ。2本撮りの1本目を終え、2本目のゲストが到着するまでの休憩時間にそれを把握したキョーコは動揺していた。


(恐れていたことが、ついに現実に…!!)


2本目のゲストの欄にはキョーコの会いたくて会いたくなかった人物の名前…『敦賀蓮』の文字。坊として何度か蓮に接してはいるものの、中身との関係性はバレる訳にはいかない。会うとは言ってもあくまで『坊』としてだ。


「これで出演番組もバレちゃうし、口止めしてるとはいえ用心するに越したことないわね!」


蓮はテレビ局内で接した坊の事は知っていても、具体的にどの番組のマスコットかとかまでは知らないはずだ。ダークムーン撮影中に適当な番組名まででっち上げて蓮のもとを訪ねたりもしたが、それは蓮がバラエティ番組などもともとほとんど見ないことをキョーコが知ってるから吐けた嘘なのだ。

キョーコが時計を見上げれば、2本目のゲストを迎えに行くまでまだ1時間以上ある。倦怠感もありキョーコはポスンと、控室内のクッションに倒れ込んだ。


(……会いたかった、のにな…)


約1か月ぶり。しかも最後はグアムでのヒール兄妹だったのだから素の蓮と会うのは、社長に恋心を見抜かれたホワイトデー以来だ。トラジックマーカーの現場で見たCG多様の映画撮影は興味深かったし、およそ縁のないだろうキャラクターを演じられたのはとても勉強になったと思う。毒悪な感情云々は置いといても蓮にちゃんとお礼を言いたいと思っていても、坊として会う今日はそんなことも言えやしない。


(でも、坊としてなら…敦賀さんの本音の部分とか、聞けるのかな…)


坊に話してくれた内容は、ある意味敦賀蓮のトップシークレットだ。あの顔にして恋愛音痴で、気になり始めた人が女子高生で初恋で、世間一般が抱く敦賀蓮のイメージとはかけ離れている。


「重…、汗くさ…」


重い頭のままクッションにもたれていると、頭部は外したモノのボティは坊のままで鼻先にむっと汗の不快なにおいが染みた。戻らない体調での着ぐるみでのハードアクションはかなりキツイ。短時間でも汗を拭いておかなければ体調が悪化しそうだった。


(次がここ一番なんだから、少しでも体調よくしとかなきゃボロを出しちゃうわ)


ノロノロと起き上がり背中のチャックを下げて暑苦しい着ぐるみから抜け出す。その時着ぐるみに染み付いた匂いをまともに吸い込んでしまったキョーコは、その匂いに眉を顰めた。


「う…気持ちわる…シャワー…」


着ぐるみを脱いでも汗に濡れたシャツからもその匂いが漂ってくるようで、キョーコはむかむかとする胃部をおさえながら控室に備えるけられているサニタリーに向かった。またアレを着なければならないと思うと気が重い。


(うっ…)


ノロノロと動いていたキョーコだったが、不意に胃がせり上がり胃酸が上がってくる感覚に口元を抑えてトイレに駆け込んだ。


「か、はっ…うっ……げぇ…っ…」


なんとか漏らさずトイレに駆け込こみ口を開くと、上がってきた胃内容物と胃酸で喉が焼ける。食欲も落ちていてなんとか朝に詰め込んだおにぎりが、未消化のまま流された便器に吸い込まれていった。


「はぁ…、はぁ…、やだ…本格的に風邪かな…」


だとしたら人の集まる仕事場ではよろしくない。喉の痛みや咳もなく微熱と倦怠感が主だった体調不良だったから様子を見ていたのに消化器症状まで伴うとなれば感染性の風邪かもしれない。仕事に穴は空けられないが、かといって人に移す病気を抱えて仕事をするのも迷惑の極みだ。吐ききったのか一度落ち着いた嘔気に、キョーコは洗面所で不快な酸味の残る口を濯ぎ顔を洗う。


(あ、タオルタオル…)


濡れた前髪のままタオルを取ろうとカバンを開けた時、キョーコの動きが停止した。


(あ…れ…?)


キョーコの顎先からぽたりと水滴が滴った。

目的のタオルが開いたカバンの中にあるにもかかわらず、キョーコの視線は一点で制止していた。視線の先には昨日中身を留美に手渡したポーチがあった。


(…これ、前に詰め替えたの…いつだったっけ…?)


唐突にフラッシュバックした違和感がキョーコを襲う。

キョーコは自分がこのポーチを使った時の記憶をたどり寄せる。確か…そう、テスト期間中に腹痛と戦いながら試験を乗り切った覚えがある。


「……生理…来てない…?」


初潮を迎えて以降、尚と暮らしてバイトに明け暮れてボロボロだったときも決して狂わず毎月同じ時期に来ていたソレ。


「うぷ…っ」


思考が停止しかけていても身体は別の方向で動いていて、一度は治まった嘔気がまた上がってきてキョーコはまたトイレに戻る。吐き気に任せて口を開いても、出てくるのは不快な酸味の胃液だけで空吐き繰り返して苦しさしか残らない。


訪れていない月のさわり

ずっと続く体調不良

そして吐き気


これだけの条件が揃うと、嫌でも連想されるモノがある。


苦しさの中で自分を見据えた苦しげな碧眼と身体の奥に灯った熱がキョーコの中でフラッシュバックする。


(…夢、じゃ…無かった…?)


キョーコは毎月定期的に痛む下腹部に手を当てて茫然とするが、不規則に襲ってくる吐き気が現実を見ろと呼びかけてくるようだった。


「キョーコちゃん?次まで時間あるから良かったら…」


不意に控室のドアがノックされ、外から声がかかる。

今まで共演していたブリッジロックの石橋光が休憩時間にキョーコを食事に誘いに来たのだ。ノックに返信が無く内側から苦しげなキョーコのうめき声が聞こえ、光は悪いと思いつつもそのままドアを開けた。


「キョーコちゃん!大丈夫!?」


トイレで苦しげに嘔吐するキョーコを見つけた光は驚いた表情で駆け寄ってきた。


「びょ、びょーいんっ、キョーコちゃん病院行かなきゃ!」

「ま、、待って下さい。大丈夫です…多分吐いたので、治まるし…まだ、仕事…」

「何言ってるの!?具合悪いんでしょ!救急車…っ!」


動転した光に救急車はやめてくださいと、吐き気と戦いながらキョーコは制止する。


「大丈夫…ですか…ら…」

「きょ、キョーコちゃん~!!??」


焦る光を見たのを最後に、キョーコの意識はぷつりと途絶えた。



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…突っ込みナシの刑でお願いします…orz