ACT205妄想【12】 | 妄想最終処分場

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10/19発売の本誌ACT205の続き妄想です

ネタバレものなので、未読の方、コミックス派の方はバックプリーズ!!


今回の続き妄想に関しては別途お知らせがあります。読み進めの前にこちらを一読の上お願いいたします→ACT205妄想についてお知らせ
※お知らせを未読の状態でのご意見・質問(特にクレーム)に関しては厳しい反応を返すやもしれません。必ずご確認ください。




それでは自己責任でご覧くださいませ↓








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『またね、兄さん』


『また』なんてない事は分かっている

けれど『さよなら』とは言えず別れ際そう口にした

私にとってカインとセツカとはこれでさよならだけど、演じている彼らは今後もずっと二人でいる日常が続いていくはず


『セツ、気を付けて』


背後から抱きしめられて、息が止まるかと思った



ACT205妄想【12】



「ね!今日の隣のスタジオ、敦賀さんがゲストなんだって!」

「ホント!?」

「け、見学とか…できないかなぁ~?」

「何言ってるの!向こうが収録中こっちだって収録よ?」


(相変らずのモテっぷりね…)


控室で沸き立つ共演者に、キョーコは思わず溜息をついた。


(メールはしたけど、ちゃんとご挨拶できてないの、不義理な後輩って思われちゃうかな…)


グアムから帰国して1ヶ月。キョーコより長くグアムに滞在する予定だった蓮とヒール兄妹の姿で別れて以来、キョーコは蓮と直接会う機会に恵まれてなかった。


(ちゃんとご飯食べてるかな…?)


春になったとはいえ、南国から戻ってから温度差のせいかほんのちょっと落ち着かない体調。一度社から依頼があった蓮の食事依頼もその時も微熱があり断ってしまった。初海外での疲れも出てきたのかしらと思いつつ、キョーコは日々の仕事を通学を続けていた。仕事も現在は切れ目でドラマなど長い拘束期間のモノはなく、単発の仕事ばかりで気が抜けたのかもしれない。休むほどではないが直り切らない風邪症状は長引いていた。


(病院…行った方が良いかなぁ?敦賀さんも大丈夫かしら?)


風邪でうつすわけにはいかないと断った食事依頼だが、変に心配させるといけないからと仕事を理由にした。比較的規則正しい生活・バランスのとれた食事をしている自分ですらこの状態なのだから、不摂生の塊のような蓮の体調も気にかかる。


(風邪ひいてませんか?なんて…聞けないしなぁ…)


キョーコはぱちりとケータイの画面を開いては閉じるを繰り返す。蓮への恋心を自覚して以来、素の状態で蓮とちゃんと接する時間が持てないことをほっとしている反面、やはり寂しいと感じてしまうのは自分が貪欲になっているからだろうか。

頬を紅潮させて騒ぐ共演者を前に、カインの時は私だけの兄さんだったのにとか、今は嫉妬しても堂々と牽制なんかできやしいとかそんな考えが頭の中をめぐる。


(…重症だわ)


蓮の話題を耳にしたり、画面越しにその姿を見ればついつい思い浮かべてしまうかの先輩にキョーコはフルフルと頭を振った。挨拶は重要と指導されたのにそれすらちょっと至らないなと思ってはいるが、会いたいと思う反面会いたくないとも思う。些細なことで蓮のことを思い出してしまう上、カインを演じてた頃時折の苦しそうな表情が南国で見た白昼夢と重なってしまい頬に別の意味で熱が上がりそうだ。


(敦賀さんが好きなハズなのに、私、夢でコーンと……)


会いたくないとも思う気持ちの中にはなんとなく後ろめたさもある。


(夢なんて好きに見れるものでもないし!でも、なんか…)


「いいの?ご挨拶とか行かなくって」

「え?」


ナツの表情の下で、百面相しているキョーコは不意をつかれて声の方向を振り返った。


「だって、ロケ中は近くにいるからって挨拶に行ってたりしてたでしょ?敦賀さんのとこ」


ふと見上げれば、椅子に座ってケータイを眺めていたキョーコの隣には千織がいた。今日は撮影の終わったBOX-Rの番宣でのバラエティの仕事。撮影前の打ち合わせが終わり控室で休憩中だ。ドラマの撮影が終わってほっとしているものの、ドラマ自体は放映真っ最中で撮影終了後はこういった番宣の仕事が増えてくる。このドラマの評価から次の仕事に繋がるのがこの世界の常だ。


「え…あ、今日隣のスタジオでお仕事だなんて知らなかったし。それに急に押しかけたら迷惑かもしれないから」

「ふぅん」


『敦賀さん』の名前だけ声を潜めた千織は、蓮のファンらしい共演者の手前配慮してくれたらしいが自分は全く興味が無いようだ。


「そういえば京子さん、今日はナツじゃないの?」

「え?」

「京子さん、この仕事の時最初っからナツ入ってること多いからさ。今だってソレ、ナツの私服でしょ?ナツなら敦賀さんみたいな面白そうなイイ男なんて格好のオモチャじゃない?」


素のキョーコにしては大人びた服装にナツメイクのキョーコに千織は首をひねる。キョーコは日によるがBOX-Rの現場ではカメラが回っていなくてもナツで割合の方が高い。千織に言われてキョーコは楽屋入りした時にはナツだったはずの自分がいつの間にか素になっていたことに気が付いた。


「…事務所からは、素の私のギャップも見せといたほうがいいって言われてるし」

「それもそうね。キョーコさん、あんな役演っておいて素は天然なんてオイシイキャラしてるから」

「おいしいって…」


キョーコは千織の言い分に苦笑いする。BOX-Rの放映でダークムーンの時からの相乗効果で京子の注目度は上がっている。トラジックマーカーでのセツカの仕事もあり、次クールのドラマの仕事は受けなかったが、椹からは番宣で出る仕事については演技での役柄の他に地を見せる様にと指示も出ている。

蓮の話題を耳にしてナツ魂が抜けてしまった事に気が付いたキョーコは、本当に重症だわと心の中で呟いて強引に思考を別の事に切り替える。


(そういえば、その先クールのドラマの仕事、いくつか打診が来てたっけ…?)


まだ詳細は出ていないが、グアムから帰国してほどなく椹からいくつかオファーが来ているという話を聞かされていた。近いうちに事務所で詳細を聞かねばならないと考えながら、キョーコはダークムーン、今放映中のBOX-Rと改めてテレビドラマの宣伝効果の威力を思い知っている最中だった。


「いいな~、生敦賀さん拝めたら鼻血出ちゃうかも!」

「ちょっと!いくら憧れてても同じ俳優業で対面して鼻血とか止めてよね!もし共演で来た時どうするの?」

「やーねぇ、モノの例えよー」


話に加わってこないキョーコと千織の事には頓着せず、主演の留美や薪野達は雑談で盛り上がってる。


「きゃっ!やだ、ねぇ血がついてるけどまさかホントに鼻血出したわけ?」

「え!?」


まだ続いている蓮の話題に会話に参加する気にもなれず聞き流していたキョーコだったが、穏やかでない会話のに思わず共演者の団体に目を向けた。キョーコの視界の先では、留美のオフホワイトのスカートに点々と赤い染みがついている。


「やだ~!こんな時にぃ」

「何?生理?」

「かなぁ?」

「かなぁ…?って!」


留美のマネージャーが「大変!」と言って真っ先に部屋を飛び出したのだが、当の本人はけろりとしている。


「留美ね?もともとかなり不順だからいきなり来たりとかしばらく来なかったりとかよくあるのー」

「マルミー!そんなこと言ってないで早くっ!シミが広がってきてるよ!?」

「んー…でも、ナプキン持ってないしなぁ」


さすがに女だけの空間では大きな緊迫感はないが、留美の呑気な様子に会話を交わしていた薪野達の方が慌てていた。


「ねぇ、誰かナプキンもってない?」

「マネージャーさんが多分着替えと一緒に持ってくるよー?」


留美はどこまでも呑気だが、意外に世話焼きな共演者は留美のマネージャーを待つだけでは納得しなかった。


「あ、私持ってますよ」


呼びかけられてキョーコは持参のバックの中に常備しているモノの中にそれがあったことを思い至り声を上げた。キョーコが椅子に預けたカバンのポケットを探れば連想した女子アイテムはやはりそこにあった。


「良かったら使って」

「ナツサンキュー!とにかく!マルミーはトイレいってきて!」


バック内のポーチからそれを取り出したキョーコが手渡すと、留美は急かされるままパタパタと控室から出て行った。


「もう~!人騒がせなんだから、マルミーって」

「まぁまぁ、不順の人って結構大変だって聞いた事あるよ?」

「いつ仕事に当たるか分かんないんだから、薬飲んでる子も結構いるよ?軽くなるし期間も短くなるし。そっち目的でもほら、あっちにも効果あるし。失敗しても出来ちゃったりしないから安心じゃない?」

「ええ~!?マルミーに限って、そんな事ないんじゃない?」

「違うわよ!マルミーがっていうのじゃなくて、例えと本当のこと言っただけじゃない!」


当の本人が不在になればもともと女子の団体、あけすけな会話が飛び交う。ナツでなく天然記念物モノの純情乙女の素のキョーコなら耳まで赤くなって顔を伏せてしまうだろうことを予測した千織は、面白半分にキョーコの反応を伺った。しかし、この時のキョーコはナツでなかったが、予想と違う反応のキョーコに千織は訝しむ。


「京子さん?」

「え…?あっ…」


手元のポーチを見つめたままのキョーコを不審に思った千織の呼びかけに反応したものの、キョーコの視線は考え込むように自分の手元を彷徨っていた。



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こっからありがちなネタに突入なので2話アップです。


・・・ごめんなさい石投げられる覚悟です・・・