ルールのお勉強 PCS・SSその③ | siennaのブログ 〜羽生君応援ブログ〜

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羽生結弦選手の現役時代をリアルタイムで体験できる幸運に心から感謝しつつ、彼のスケートのここが好きあそこが好きと書き連ね、ついでにフィギュアにも詳しくなろうと頑張る欧州住まいのブログ主です。

The Skating Lesson の聞き取りを続ける前に、自分用にちょっと復習します。

第一回の記事で、多方向(multi-direction)の意味がよくわからないと書きました。
時計回り・反時計回りとは、狭い意味でターンの次元を指しているの? 
それとも、もっと範囲の広い滑走の進行方向を指してるの?
混乱してしまったので、ISUのコンポーネンツ解説動画を覗いてみることに。





どちらも当てはまるみたいですねー。

例えば反時計回りで弧を描きながら、同じく反時計回りの回転のジャンプを跳ぶと、多方向性は満たされません(動画の少年の例)。

反時計回りで大きく弧を描いて、逆の時計回りの回転のジャンプを跳べば多方向性は満たされます(動画の青年の例)。
2つ目の例の方がもちろん難度が高いんですよね。
ジャンプの入りだけではなく、スピンの入りも同じように評価されます。

さらに、例えば連続するターンがLBO→RFI、あるいはRBO→LFIのように逆回転であれば、その次元でも多方向性が満たされていることになる(青年の二つ目の例)。

すっきりしました♪

ISU動画はちょっと無味乾燥なので、あまりちゃんと見たことなかったのですが、今回のようにピンポイントな疑問を解決したい時は、その簡潔さがかえってありがたいグッド!





では聞き取りを続けます♪

今回分析対象のスケーターは、ロス・マイナー。2013年スケートカナダ、FSの演技が取り上げられます。


J:この演技のSSにジャッジは7.11をつけたんだけど、私はちょっと同意できないな。もう少しいいスケートをしたと思うので7.50をつけるわ。あなたはどう思う?

D:7.00と7.25、どちらかと考えたんだけど、直感に従って7.00。彼は特別悪いとも優れているとも言えないスケーターなんだよね。

J:まさに「可」ね。安定の「可」。

D:そこら辺のレベルだね。オリンピックチームに誰かを選ぶ場合、ロスがなぜ世界の男子のトップ10に入るんだろうなあと不思議に思う。彼って夏の間3Aとか4Sなどのジャンプを揃えようとたくさん時間を取るタイプだし、スケーティングを頑張って自分をスケーターとして高めようともしているだろう。スケートへのアプローチとして、ジャンプとスケーティング、どちらを優先するか。ロスの場合ジャンプやスピンなどのエレメンツが優先されて、いろんなことが少し後回しになってる感じ。君は実際のスケーティングを見てどんなことに気がついた?

J:この演技には所々ちゃんとした片足滑走があったと思う。冒頭…4Sとか3Lー3Tの入りで片足をたくさん使っていた。
一つ気がついたのは彼の足の小ささなの。そのせいでエッジをより深くすることが難しいのかどうかわからないけど、パトリックがワンストロークするところを彼はトゥーストロークしなきゃいけないように見える。これって彼が小柄だからなのかな?よくわからないわ…
でもフローはいいのよ。エッジはもっと深くできると思うけれど。
あと、最後の3Fに向かうところではテンポの変化もあったわね。音楽に合った加速が見られたわ。

SSに関してどうしても言いたいことがあるの。選手がスケーターとして一定のレベルに達してしまうと、自分のスケーティングを根本から変えるためだけの練習に、2ヶ月や3ヶ月も打ち込むことって本当に難しくなる。男子選手が一旦トリプルやクワドの練習を始めるとスケーティングは後回しなってしまう。スケーティングってスキルの内でも本当に一生懸命やらないと進化しないものなのよ。SSは選手の過去の実績をベースに採点されるって思われたりするけど、本当はしっかり練習すべきもの。いくらそれが難しくてもね。

D:僕は実際のところ、SSが過去の実績を反映するものだとは思わない。他の項目の方がその傾向があるかもしれない。前にアレックス・ジョンソンにインタビューした時、トム・ディクソンとコンパルソリーの練習をしていて、二人ともコンパルソリーこそが全てのジャンプの基礎と確信していると言っていたよね。70年代80年代の選手たちは、ジャンプはコンパルソリーから生まれる、ジャンプはエッジから生まれるって、繰り返したものだ。それが今は少し失われてしまった。もちろん今は皆んなもっとたくさんジャンプを飛んでいて、全てをこなす時間がない。さっきも言ったけど、そういうことが置き去りになっている。スケートを習う上で何を優先してきたか…。君はパトリックとロスのストロークの数を測ったけど、ロスのスケーティングに間違ったところはないよ。ブレード上でちゃんとバランスが取れているし、とても体幹が強いのがわかるよね。

J:姿勢もいいわよね。

D:間違ったことは何もないよ。あとはエッジが深ければね。
それと、今季のプログラムだけど、ちょっとドラマチックすぎて、ジェレミーやパトリックに比べると見劣りのするロスのスケーティングの欠点を強調してしまってる。ポール・ワイリーとかジェフ・バトルとか、なんならランビエールとか、そういうスケーターがドラマチックなものをやるぞと決心してこういう大袈裟なプログラムを滑るとしたら効果的だろうけど、ロスは力不足なんだよね。なぜかというとエッジワークとパワーに欠けるからなんだ。

J:そうね。あとこのプログラムにはスターティングポジションのポーズみたいにちょっとコマーシャルなとこもあるわ。音楽を解釈しようと一生懸命なんだけどそれが逆に弱点をさらけ出してしまうというか。



というわけで、こちらが動画になります。




同シーズンの全米選手権では同じフリーで7.89出ました♪




スケートがより伸びている印象を受けます。

今回マイナー君に関しては可もなく不可もなくということで、おとなしめというか一般論を語る二人でした。
ちなみにこのフリーの曲はBoston Strongといって、あのボストンマラソンの悲劇が題材なんですね。
ジェニーのコメントにあるスタートのポーズはマラソンランナーだったのか…うん、ドラマチックです。

それにしても、ゆづがチームオーサーの方針の下、急がば回れでしっかりスケーティングの基礎からやり直したこと、よく取り上げられるエピソードだけれど、実際問題なかなか実行できない事なんだなー、とつくづく。
男子のトップ選手としてクワドに集中したい気持ちを抑え、地味なスケーティング練習に徹するストイックな姿勢、それがあったおかげで、ゆづのスケーティングは今や世界中で絶賛されているというわけ。
めでたしめでたし。


動画感謝してお借りしています。