siennaのブログ 〜羽生君応援ブログ〜

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羽生結弦選手の現役時代をリアルタイムで体験できる幸運に心から感謝しつつ、彼のスケートのここが好きあそこが好きと書き連ね、ついでにフィギュアにも詳しくなろうと頑張る欧州住まいのブログ主です。

notte stellata2024、素晴らしいショーが大盛況のうちに3日間の幕を閉じました!

 

アイスショーから受けた感動の大きさでは自分比で過去1、2を争います。

 

前置きを端折ってしまうと、おそらく今後もう観ることのできないカルミナブラーナの衝撃がすごかった。

 

notte stellataというショーの一つの目玉である異業種コラボのポテンシャルには計り知れないものがありますね。企画された方は勲章ものですよ。もっとも、コラボの片割れが「あの」羽生結弦だからこそ、各界の一流たちとの高次元での高めあいが生まれ、我々はその恩恵に授かることができるのでしょうけれど。

 

前回の内村さんとのコラボはガチンコ神アスリートコラボでした。勇壮な楽曲に合わせ、体操界のレジェンドが華麗な技を見せたと思えば、フィギュア界のGOATがあの狭いリンクで見事な3Aや4Tを完璧なタイミングで決め、両者が熱いアスリート魂と高度な技術で大いに会場を盛り上げました。体操とスケートの共演でこんな世界が作れるのか…って目ウロコの世界でしたよね。

 

今回の大地真央さんというエンタメ界の大御所とのコラボも、新たな衝撃、新たな未知との遭遇に他なりませんでした。

 

さて、白状すると、私自身はフィギュアスケートプログラムにおけるカルミナブラーナの使用にあんまり肯定的でなかった人間です。羽生ファンの間で待望論が多いことを承知しつつも彼に滑ってほしいとは思っていませんでした。なので、今回「全ファンが待ってました!」的な喜びのツイート/ポストを見かけるたびに、待ったー!少数の消極派もいましたよっ!とモヤったことを告白します。

 

カルミナ好きな方々の気持ちに水を差すつもりはありません。しかし、なぜカルミナが苦手で、それでもこのコラボにはぶんぶん首がもげるほど納得してしまうのかを説明したいと思います。いわば自らの主義変節の総括ですね。

 

苦手だった理由として、まず、カルミナプロで使われるのはほぼ全て原曲1曲目のO FORTUNAであり、これが自分にとってはやたらと仰々しく単調な曲に感じられることがあります。羽生くんの繊細な表現力を発揮できる音楽だとは思えませんでした。しかし今回、あらためてカルミナブラーナを調べる中で、原曲は20曲以上から構成されている中で、フィギュアや他のポピュラーカルチャーではこの1曲目のみが集中的に使われているのを知りました。

 

第二に、他の選手のカルミナプログラムで素敵だな、彼にもやってほしいな、と思う作品に出会ったことがなかったことも挙げられます。今回、念のためカルミナを使った過去のプログラムをざっと振り返ってみましたが、やはり曲に迫力を借りようとするにとどまる表現が多いと感じました。興味のある方は、こちらのプレイリストを参照してください。クワンのカルミナなど全編笑顔の元気はつらつ解釈もあり、なかなか混乱しました!

 

 

 

要するに、典型的「War Horse(定番曲)」なんです。

 

そうした題材を今さら彼がやるかな…?と。

 

というわけで、彼が若い頃滑りたい曲の候補の一つとしてカルミナを挙げていたにもかかわらず、大地真央さんがO FORTUNAが盛大に響き渡る中ステージに現れた時、自分はほとんどショック状態に陥ったのでした(汗)

 

しかし、おお?これは…ありきたりのカルミナではないぞ?と気づくのに時間はかかりませんでした。

 

ど迫力でステージを支配する真央さん。羽生くんはその下手からおとなしめに登場します。そのいでたちは白っぽい襟元の詰まった衣装と清らかで、カルミナでありがちな赤黒の地獄的パワーを示唆するデザインではありません。

 

そして従来のカルミナプロではよもや聞いたことのなかった鳥のさえずりや明るい旋律が奏でられます。意外、の一言。振り付けも、今まで見たことのなかった羽生くんを見せてくれます。バレエをよく知る人をも唸らせる動きが満載だったようです。私が感じたのは、衣装デザインも相まってスラブ味を感じさせる中世の庶民の踊り、それ以外の楽しみを知らない素朴な庶民の踊りでした。遂に実現したカルミナの羽生くんは、多くのファンの想像にあったかもしれないラスボスではありませんでした。

 

そして、そうした無邪気な存在が突如として運命に操られ、翻弄される。

 

このようなドラマの展開を従来のカルミナプロから感じることはありませんでした。どれもほぼ一本調子ですから。

 

ステージ上の真央さんと氷上の羽生くんを繋ぐ糸が明確に見える完成された振り付けは、おのおのがどれだけ厳しく緻密な練習を行ってきたのかが窺われました。羽生くんの舞台俳優的演技力も素晴らしいものでした。

 

運命におののきつつ、最終的には運命の女神と手を取り合うに至る主人公。

 

これらの場面転換を効果的に導く役割を果たしたのが、今回のコラボにおける秀逸な編曲です。

 

冒頭、O FORTUNAの禍々しいオープニングから春の訪れを喜ぶVeris Leta Facies(原曲第3曲目)と森が目覚めるFloret Silva(同7曲目)の長調のダンスへ。それが劇的なイナバウアーと共に一転してドラマチックなBLANZIFLOR ET HELENA 、AVE FORMOSISSIMA(第24曲目)へ、そして再びO FORTUNA(第25曲目・結び)の大団円のへと効果的かつ自然に繋がっていく。つぎはぎ感ゼロの終盤の否応ない盛り上がりが実際に原曲の順番通りだからに他ならなかったのだと知ったのは、このコラボに圧倒されるあまり原曲を調べてからでした。この素晴らしい音楽的ドラマツルギーをそのまま採用したプログラムがこれまで(自分の知る限り)無かったのが信じられないくらいです。それと同時に、羽生くんのプログラムで裏切られることのない編曲センスにあらためて舌を巻きました。

 

カルミナ・ブラーナの原語と英訳(PDF)

https://www.rwb.org/uploads/documents/Carmina_Burana_translation.pdf

 

カルミナ・ブラーナ全25曲を曲ごとに聴けるYT動画

 

 

https://youtu.be/GK4NEx06PFs?si=PFE32gofqxHOG-BA

 

 

このエンタメ史上革命的なコラボ、誰の発案で選曲で編曲だったのでしょう。いずれ詳細が明らかにされることを切に願います。

 

以上、2024ノッテのコラボナンバーについて取り急ぎの感想でした。