今回は、コメント返し強化月間中に頂いた、
「ゴキ中に苦しんでます。」というご意見を反映し、
丸山ワクチンをテーマに記事を書いていきたいと思います。
初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲2二角成 △同 銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲7八銀 △6二玉(下図)
前回は、上図で▲4八銀と指した場合について見たが、
工夫の余地はあれど、不満な展開が多かった。
今回は、
若手、特に関西棋士を中心に採用率が上がってきている、
▲6八玉の変化を見ていきたいと思う(下図)
▲6八玉の狙いは右辺の簡略化だ。
上図の▲6八玉に換えて▲4八銀が主流だった理由は、
△5五歩に対する▲4七銀の用意が必要と考えられていたためだが、
実際には、上図で△7二玉(▲6五角を消して△5五歩を突く準備)の時に、
▲6六歩で受かっている、というのが新発見(下図)。
上図で△5五歩と突かれても、▲6七銀で大丈夫。
△8八角には▲7七角△同角成▲同 玉だ。
これで受かるのなら、
右銀の自由がある分▲6八玉の方が良いはずだ。
良い点ばかりに思える▲6八玉だが、
これまで注目されなかったのは「遠山流」の一変化に理由があると見ている。
初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲2二角成 △同 銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲7八銀 △7二金(下図)
上図△7二金が「遠山流」。
狙いは、8三の地点を受けて△5五歩と突きたいという事だ。
これだと、▲4八銀~▲4六歩~▲4七銀が間に合わないので、
▲6六歩(下図)と受ける事になるのですが、あれっ?これってどこかで見覚えが・・・
そう。上記▲6八玉の進行と先手の形が類似していますよね。
上図以下
△3三銀 ▲6八玉 △6一玉 ▲4八銀 △6二銀 ▲7九玉
△7一玉 ▲4六歩 △8二玉 ▲4七銀 △2二飛 ▲8八玉
△2四歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲3六歩 △2五銀 ▲3八金
△2七歩 ▲同 飛 △2六銀 ▲2八飛 △4九角(下図)
思いっきりすっ飛ばして上図(笑)
△4九角が狙いの一手です。
▲6六歩が災いして、△7六角成と成る場所が出来てしまっています。
▲6六角のような反撃も無くなっているし、2筋も受からないので、
こうなっちゃうと収拾がつかなくなっています。
遠山流は今回のテーマではないので簡単に済ませますが、
こういった事情で「居飛車側が▲6六歩と突くのはちょっと危ない」
という認識が生まれたのです。
しかし最近は、
「▲6六歩と突いても2筋は大丈夫」という認識になってきました。
初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲2二角成 △同 銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲7八銀 △3三銀
▲6六歩 △6二玉 ▲6八玉 △7二玉 ▲7九玉 △6二銀
▲3八銀 △2二飛 ▲4六歩 △2四歩 ▲同 歩 △同 銀
▲5六角(下図)
私の実戦から採譜しました。
▲6六歩と▲6八玉が反対なのは不慣れだったせいです(笑)
この駒組みに至る経緯は、
「△4九角が生じるので金は動かさない」
「金を動かさない分、▲3八銀で2筋を受ける」
「銀の位置が低く反発力が無いので▲5六角で牽制する」という感じ。
後手は3四の歩が受けにくい形。
9筋が弱いので△3三銀とも引けません。
よって本譜は△3二金▲3四角△3三金と進みましたが、
後手の攻め駒を団子状態にして、まずまずだと思います。
まぁ、この辺りの深い解説や、対する後手の新工夫については、
「最新戦法マル秘定跡ファイル
」に書いてあるようなので、
2筋急戦型はブログ上で深く追求しづらいです(汗)
興味のある方は是非ご購入下さい。良い本ですよ。
そんな事情で、ここでは持久戦を中心に考えていきたいと思います。
▲6六歩が通ってしまうと、
従来の丸山ワクチン
と相違点がいくつか出てきます。
初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲2二角成 △同 銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲7八銀 △6二玉
▲6八玉 △7二玉 ▲6六歩 △3三銀 ▲7九玉 △8二玉
▲3八銀 △7二銀 ▲4六歩(下図)
後手の目標とする形は「向かい飛車+銀冠」で、
そこまで組めれば模様良し、というところなんですが、
上図ではその形に組めなくなっています。
理由は△2二飛に▲5三角が成立する事。
▲6七歩型では△4四角と合わせて受かっていたんですが、
▲6六歩型では△4四角に▲7五角成で、何事もありません。
よって、後手は銀冠までは組めるのですが、
向かい飛車にする事が不可能になっているのです。
それが形勢にどう影響するか。
まずは有名な進行を見てもらいましょう。
上図以下
△8四歩 ▲4七銀 △8三銀 ▲5八金右 △7二金 ▲5六銀
△7四歩 ▲8八玉 △7三桂 ▲7七桂 △5一飛 ▲6七銀引
△4二角(下図)
厳密には手順が違うのですが、
順位戦 村山-大内戦
の進行です。
上図△4二角が好手で、
次の△9二香~△9一飛からの端攻めが非常に受けづらいです。
△4二角を亡くなった真部先生が指摘していた事から、
この形自体を真部流と呼ぶ事もあります。
△4二角以来、「真部流には▲8六歩と突いておくべし」が常識化しました。
上記変化▲6七銀引のところで、
▲8六歩 △3二金 ▲6七銀引(下図)
これなら△4二角は怖くないですね。
上図も難しいところはあるんですが、
先手の方がまとまっていて駒組みがしやすいので、後手が面白くないと思います。
後手は左右分断型をまとめきるのが難しいです。
しかし実はこの上図への進行、
後手が一手疑問手を指している事が後年明らかになります。
プロの公式戦で現れたのは、竜王戦 大石-矢内戦
。
初手から
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲2二角成 △同 銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲7八銀 △6二玉
▲6八玉 △7二玉 ▲6六歩 △3三銀 ▲7九玉 △8二玉
▲3八銀 △7二銀 ▲4六歩 △8四歩 ▲4七銀 △8三銀
▲5八金右 △7二金 ▲5六銀 △3二金 ▲6七銀引 △7四歩
▲8六歩 △5一飛 ▲8八玉 △6四角(下図)
▲8六歩に対し、素朴な△6四角が矢内新手。
前述した「後手の疑問手」とは△7三桂の事。
桂を跳ねてしまうと、この角打ちが息苦しくなってしまうのです。
以下の解説は竜王戦公式サイト
を参照してください。
負けはしましたが、「矢内女流、振り飛車うめー」って将棋です(笑)
ってわけで、居飛車側も工夫をこらします。
初手から
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲2二角成 △同 銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲7八銀 △6二玉
▲4八銀 △7二玉 ▲4六歩 △3三銀 ▲6八玉 △8二玉
▲4七銀 △7二銀 ▲6六歩 △8四歩 ▲7九玉 △7四歩
▲5八金右 △8三銀 ▲3六歩 △5一飛 ▲8八玉 △7二金
▲8六歩 △3二金 ▲8七銀(下図)
この進行は、竜王戦 佐藤-永瀬戦
。
▲8七銀が工夫の一手で、
8六の歩を守ってから▲5六銀と出れば△6四角が無い、という意味です。
しかし、次の△4四銀が絶品のタイミングでした(下図)
こう指されてみると、
▲5六銀は△5五銀とぶつける手があるので指しきれません。
また、▲2四歩△同 歩▲同 飛も、
6九の金が浮いている現状では指しにくいです。
(具体的には△5五銀と出て△3三角を狙う感じでしょうか)
そこで先手は▲7八金と締まりましたが、
△5五銀 ▲6七金右 △7三桂 ▲7七桂 △3三桂 ▲1六歩
△2一飛(下図)
こうなってしまうと後手十分と言えそうです。
中央で威張っている後手の銀がうざったいので、
本譜は▲5六歩と追っ払ったんですが、
そう指してしまうと前回の記事
で書いた
銀冠を相手に中央で歩が並ぶ形にしてしまうと先手から手を出しづらい
という形に誘導されてしまうのです。
総括すると、丸山ワクチンに対する真部流は、
矢内新手△6四角によって有望になった、としておきます。
(この変化、前述の村田本
には書いてないので、買った方はご注意を)
さて、結局後手良しになってしまい、
「な~んだ、▲6八玉でも先手良しじゃないか。じゃあ超速やろうっと・・・」
ってなってしまうところなんですけど(苦笑)
ちょっと待って下さい!
▲6八玉型には新たな作戦が秘められているのです。
初手から
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲2二角成 △同 銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲7八銀 △6二玉
▲6八玉 △7二玉 ▲6六歩 △3三銀 ▲6七銀 △8二玉
▲7八玉 △7二銀 ▲7五歩(下図)
一切の無駄を省いた超高速位取り。
これが▲6八玉型の最新進化形です。
ここでまた前回の記事
を思い出してほしいのですが、
7筋位取りは手数が掛かるので、いかに他の部分を省略するかがポイントでしたよね。
▲3九銀型を実現出来る▲6八玉型は、7筋位取りにうってつけなんです。
この進行は竜王戦 山崎-久保戦
で現れました。
発想が豊かなのもそうですが、水面下の理論に感心します。
上図以下
△8四歩 ▲5八金右 △8三銀 ▲7六銀 △2二飛 ▲6七金
△5二金左(図面略)
と進行した局面は先手作戦勝ち。
実戦はそこで▲8六歩だったのですが、
▲8八玉 △6二金寄 ▲7八金の順なら分かりやすかったようです。
さて、上図で後手はどう迎え撃つか。
7筋位取りに対しては、
1.位に反発
2.組み上がる前に急戦
の二つが有力でしたよね。
ただ、銀が3三にいる現状では1.位に反発は不可能なので、
必然的に2.組み上がる前に急戦がクローズアップされます。
よって上図では△2二飛と回った方が良かった・・・と推論してみましょう(下図)
上図では面白い変化があります。
後手が2筋から攻めて来るにも関わらず、無視して▲8八玉が強手。以下
△2四歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲7四歩 △2七歩 ▲7三歩成
△同 銀 ▲7八飛(下図)
八段目に何も置いておかない事で、飛車の大転換が実現します。
この変化が山崎先生の予定だったら面白いなぁ。
まぁ実際は、上図以下△7四歩と打たれると攻めの継続は難しく、
私の勝手な妄想かなぁ、という気はしてるんですけど(苦笑)
▲7四歩と突かれるのが味悪いので、実戦は△8三銀を急いだ、
って事はあると思います。
ネタはともかく(笑)
実際のところ、△2二飛に対しては▲7七桂と跳ねるのだと思います(下図)
以下△2四歩には▲同 歩△同 銀▲6五桂。
▲7四歩もあるし、これは手になりそうです。
上図から△6四歩には▲5三角が生じるので、
▲6五桂の筋自体は受けにくいです。
ただ、早めの▲7五歩には△5二金左が生じるので(▲3一角が無い)、
後手も玉を固めるような変化が出てくるかもしれません。
この辺りの攻防は最先端で、まだ分かっていない事が多いので、
各自研究してみると面白い新手が見つかるでしょう。
先手丸山ワクチン 対 後手ゴキゲン中飛車03
いかがだったでしょうか。
山崎流の超高速位取りは夢いっぱいの戦法で、
私も実戦で何度か試しています。
組み上がるまでの苦労はありますが、
7筋の位はとても大きいので、リスクを背負う価値はあると思います。
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