心理描写の真髄 | 小説の書き方教えます

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今回は、心理描写についてです。




質問コメントをいただきましたので、回答しますね。


人物や風景は見たままですから、描写といっても

特別なものではありません。


しかし、心理は目に見えませんし、喜怒哀楽のど

れかだけ、という単純な場合は少ないでしょう。




心理描写を書くコツは、単純ではない感情を書くこ

とですね。


子供を叱るとき、真に憎くて叱るのではありません

よね。心の奥底には強い愛情があって、だからこ

そ強い口調の叱りになったりします。


最近結婚した夫婦何組かに聞きましたら、最初の

出会いのときには、互いに嫌なヤツと感じたそうで

す。


嫌なヤツなのに、なぜか気になって仕方がない。

大人の心理って、ほとんどの場面で複雑なのです。


楽しいっ、と夢中に遊んでいるのは子供だけですね。




悦子は、またかと思った。知人の勧めで4回目の

お見合いに臨んだのだが、なぜどの相手もメタボ

腹なのだろう。おまけに脂ぎった顔は、いかにも女性

に飢えているといった感じで、鳥肌が立ちそうだ。

でも。。。相手の表情は最も穏やかだった。どこか

昨年亡くなった父を思い出させる柔和な雰囲気を漂わ

せ、何か言うごとに悦子の苛立ちが薄れてゆく。


えっ、私ってファザコンだったのかしら。ううん、父さん

似てなんかいないし、ギラギラした感じはとっても嫌。


早く帰りたいという気持ちともう少し話したいという

気持ちとが、悦子の心の中で争いはじめていた。

今席を立ったなら、一生後悔するような気がしてくる。

いや、悦子の心の奥底に棲んでいる真の悦子は、あ

きらかに目の前の男性との交際を欲していた。早く次

のデートを予約しろ、と突き上げる形で強く強く促して

くる。


それまで悦子を見つめていた相手が笑った。


まるで子供のような雑味のない笑顔に、悦子は戸惑い

を覚えた。外見は嫌で嫌で仕方のないタイプなのに、

駄目押しとも思える屈託のない笑顔は、神の思し召し

なのか、あるいは悪魔の仕業なのだろうか。

奥底から突き上げてくる真の悦子が理性に勝った瞬間、

恋に落ちた。




咄嗟に書きましたから変な部分もありますが、こんな感じ

で複雑な気持ちを表現しましょう。


人間は誰でもいくつかの面を持っています。すべてが善

ではないし悪でもありません。


そして、気持ちなんて状況や場所や相手によっていとも

簡単に変わるものです。複雑な感情表現こそ心理描写

の真髄ですからね。