![$BLACK CHERRY](https://stat.ameba.jp/user_images/20120602/22/sfmp/34/01/j/t01600160_0160016012007231069.jpg?caw=800)
Ray Bradburyが旅立ってしまった。外国人作家で初めて自分で買って読んだ小説が『The Illustrated Man(刺青の男)』であった。Bradburyといえば、ある意味、子供のような無邪気で残酷な目からみた奇妙で怪奇、幻想的な世界を、独特の叙情的なタッチで描き出した短編小説に一時夢中になったのであるが、長編小説も素晴らしかった。『Fahrenheit 451(華氏451度)』はFrançois Roland Truffautの映画『Fahrenheit 451(華氏451)』も見たし、Utopiaの『Swing to the Right』に収録されている“Fahrenheit 451”も好きな曲だ。子供の頃、夢中になって読んだ大好きな小説家の星新一が、作家になるきっかけとなったのがBradburyの作品だったという事を知って、『The Martian Chronicles(火星年代記)』や『R Is for Rocket(ウは宇宙船のウ)』、『Something Wicked This Way Comes(何かが道をやってくる)』を図書館で探し出してよく読んだものだ。Bradburyは文学だけではなく、映画や音楽や漫画、演劇にも影響を与えた人物であった。
心より故人のご冥福をお祈りいたします。
さて、本日ご紹介するAgustin Pereyra LucenaはArgentinaのギタリスト。2年前に来日していて日本でも熱心なファンがいる。Vinicius de Moraesからも賞賛されたギタリストとしての腕は、強引なテクニックのひけらかしに走ることなく押しと引きの絶妙なバランスが素晴らしい。Baden Powellの影響を受けた技巧的な部分と、彼の地特有の叙情的でSentimentalな部分が同居する、その作品は心地良く、そして、どこか郷愁を感じさせるものがある。Brasil音楽は世界各国に広く伝わり、その地の音楽と結びついて独特の醸熟された味わいを感じさせてくれたりする。隣国Argentinaで生まれ育ちBrasil音楽に憧れたLucenaだが、本盤では女性Scatの導入が、何とも切ない、そして甘美な時間を与えてくれる。Lucenaが少年時代に夢中になったであろうBaden Powellのナンバー4曲を含むBrasilの作品で殆んど成り立っている本盤ではあるが、全体を貫く静謐でアコースティックな響きと素人のような、決して上手いとは言えない女性Scatが、汚れを知らない子供のようなInnocentな世界を作り上げている。
『Agustin Pereyra Lucena』は70年にリリースされたAgustin Pereyra Lucenaのデビュー・アルバム。
アルバムのオープニングはBaden Powellの名曲“O Astronauta”。
続いてはElena Uriburuの可憐で儚いScatが“Tristeza de Nos Dois”。Tamba Trioの『Avanco』収録で知られるナンバーで、大好きなギタリストで作曲家のDurval FerreiraがBebetoやMaurício Einhornと共作した作品。Sambossa 5も演奏している大好きな曲。
Baden Powellの演奏で知られる“Chuva”もFerreiraがPedro Camargoと共作した作品。
イントロから惹きこまれる“Tema para Martin”は物憂げなメロディーのCuteなScatが最高!
Powellの“Consolacao”。
続いてもPowell作の名曲“Canto de Ossanha”。
Elena嬢の素人っぽさの残るチョイと拙いScatも何ともいえない魅力を感じさせる“Pro Forma”。
Tom Jobimの“Samba do Aviao”。
アルバム唯一の自作曲“Nina no Divagues”。この曲もElena嬢のScatが素朴な曲調に見事に合っている。
最後も、やはり師Powellのナンバー“Berimbau”。いきなりPercussionが鳴り響き、Lucenaも緩急見事な弾きっぷり。
(Hit-C Fiore)