Images on Guitar/Baden Powell | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 たまに早起きして、まだ肌寒い澄み切った空気の中で珈琲を飲みながらボンヤリしてみる。慌しい日々が続き、目の前には数々の宿題が山積みとなっているが、こういう時こそ(※注意※何時もではない)息抜きも必要である。少しだけスピードを緩めて、心を落ち着かせてみる。そうしていると、ふとアイデアが浮かんできたり、今まで見えなかったものが見えてくるから不思議だ。心を鎮めるように 、ゆっくりと大好きなレコードに針を落とす。窓を開けると、まだ冷たい空気が入り込んできたが、柔らかな陽射しと近所の公園から聞こえてくる子供たちの声に心が開放されていくようだ。

Baden Powellの数ある作品の中でも、ヨーロッパに活動の拠点を移していた時期に録音された『Images on Guitar』は、この季節に聴きたくなる。この作品の持つ柔らかな空気感に、身も心もゆっくりと、ときほぐされていくのが好きだ。超絶技巧とか孤高のGuitaristといったイメージのBaden Powellだが、この作品でみせるリラックスした感じが好きなのである。まるでヨーロッパの空気と同化してきたかのように穏やかで余裕を持ったBaden Powellの音楽に、時間がゆっくりと流れていくような感覚を覚える。神秘的で鬼気迫るBaden Powellも好きだが、この作品では、力の抜けたBaden Powellの心地良い音楽が楽しめる。Vinicius de Moraesと出会い、63年にParisに呼ばれてヨーロッパで活躍したPowell。一時帰国して、Bahiaに滞在してAfro-Sambaを確立する。70年代以降、活動の拠点をヨーロッパに移したBaden Powellの、フランスのBarclayとドイツのMPSに残した作品の中では本作品が一番の出来だと思う。


 『Images on Guitar』は71年にMPSに録音された作品。全8曲ともBaden Powellの作品で、彼がComposerとしても優れていたことがわかる。70年代中期には健康に不安を抱えて、音楽活動から遠ざかってしまうBaden Powellだが、ここにはAfro-Brazilian音楽やBluesと、クラシックを含めたヨーロッパの音楽との幸せな出会いがある。

Ate-Eu”はPowellの爪弾きとJanine de Waleyneの色っぽいScatが作り出す柔和な空気が素晴らしい。

Petit Waltz”はPowellの技巧をちりばめながらも新しい何かが始まりそうな心踊らせるWaltzで、休日の朝の寝起きに聴きたくなる曲。

Violao Vagabundo”もJanineのEnnuiなScatが艶っぽくて良い。Sexyで気品のある彼女のScatの導入が、このアルバムを色彩感溢れる奥行きのあるものにしている。

JanaineとPowellとのScatのかけ合いが楽しい“Blues A Volonte”は時間を忘れさせてくれる。

Canto”はBaden Powell自身のScat、そしてAfroな展開でPowellのMysticalなVibeが炸裂する。

(Hit-C Fiore)