Ideias/Eumir Deodato | BLACK CHERRY

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 Hermeto PascoalEgberto Gismontiは別格としても、かの国は天才音楽家を一体何人輩出してきたのか?安易に天才という言葉を使いたくないけれど、Eumir Deodatoも、その一人であることに疑いの余地はない。しかし、この3人は2000年代に来日までしてくれた。日本はなんて良い国なんだろうか。あとは、Arrigo Barnabe様、是非来日して下さい!
 さて、Deodatoとの始めての出会いはWarner時代のFunkDiscoなDeodatoの作品。70年代末~80年代のDeodatoである。EW&FKool & the GangCon Funk Shunのアルバムで存在感を放っていたDeodato。そこから遡って聴いて、あらためて驚かされたのは、Brasil時代の天才的な仕事ぶり。自身のアルバムのみならず、Roberto MenescalWanda SaMarcos ValleTom Jobim先生との必殺仕事人ぶりは驚異的。渡米してからのCTI、そしてMCA時代のDeodatoも好きだけど、やっぱり原体験としてのWarner時代の『Night Cruser』までの3枚(続く『Happy Hour』も悪くはないが)が、自分にとってのDeodatoなのであった。例えばEW&Fの『All 'n All』でDeodatoは2曲関わっているが、そこで鮮やかに提示されたFunkBrazil音楽の邂逅は今でも自分の原点である。弱冠17歳で業界に入ったDeodatoの強みは、理論に裏打ちされた抜群の和声感覚と、Rhythmに対する斬新かつCatchyな試みを大胆に取り入れるところ。Harmonyに関しては華麗なStrings Arrangementのみならず、各楽器の組み合わせ方が素晴らしい。それから楽器に対するこだわりは、自身の鍵盤でも、その時代の音楽性によってHammondやアコピ、Fender Rhodes などバッチリな選択をしているのが特徴。また、コード進行だけじゃなく、Voicingへのこだわりも相当なものだ。コードの構成音ひとつひとつまで指示をしているだろう。それから面白いのはToddなどにも感じる、自身の演奏に関しては勢い重視、ある種の出たとこ勝負の潔さ。そして一番重要なのは、基本は快感原則、これにつきると思う。それはBrasil時代から一貫して変わらないDeodatoの姿勢である。

 『Ideias』はOdeonから64年リリースのEumir Deodatoのアルバム。同年に発表されているデビュー・アルバムの『Inutil Paisagem』では全曲Jobim大先生の作品で固めながらも、既に自身の優雅なArrangementの極意が披露されていた。続く本作では、自作の2曲を含み、遅すぎたデビュー・アルバムから、怒涛の64年快進撃への重要なステップとなった作品。ギターのDurval FerreiraにドラムスはWilson Das Nevesといった後々の仲間と共にDeodatoも、アコピに加えて、いよいよHammnod B-3で応戦。天才ギタリストGeraldo VesparやOs Catedráticosでも行動をともにするTrumpet/Flugelhorn奏者のMaurílio SantosはFerreiraとともにOs Gatosでも重要な仕事をしている。
アルバムのオープニングは自作の“Tempinho Bom”。柔らかなHornの音色と軽快なリズムにのって、アコピで勝負するDeodato。一聴すると、後の派手さはないけれど、この時期ならではのElegantなDeodato。日曜の昼下がりのRioの浜辺。
お待ちかねHammondが登場する“Samba De Verao”。ここでもSantosのTrumpetがHammondと絶妙のコンビネーション。
続くFerreiraの書いた粋なナンバー“Nuvens”もHammondが絶品。Os Gatosでも、この曲は取り上げている。
Valleの“Deus Brasileiro”はキレの良いリズムにのってHammondが炸裂。
自作の“Tristeza Nao Existe”ではピアノで奏でる心地良いコード進行。そしてSaudadeを感じさせるメロディがたまらない。RomanticでElegantなブラジル時代のDeodatoらしいナンバー。
Menescalの“Vai De Vez”はリズミカルに気持ち良いアコピが冴え渡る。
Ferreiraの“Samblues”はHammondで快調に突っ走る大好きな曲。
Jobimの名曲“So Tinha De Ser Com Voce”。
高揚感がたまらないValleの“E Vem O Sol”でも絶品のHammond。
後半の“Amor No Mar”からはアコピ3連発。
流麗なピアノで、ゆったりした“Encanto Triste”でもリズミカルなアクセントの付け方が絶妙。
最後はJobimの“Ela e Carioca”をうっとりするようなアレンジにのせたピアノで聴かせてくれる。正に名曲、名演奏、名アレンジ。
(Hit-C Fiore)