A Bossa Nova De Roberto Menescal | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 Elencoレーベルのモノクロを基調に効果的にをアクセントに使用したジャケットは大好きである。シンプルでいて実にModernなアートワークだ。そして、何より素晴らしいのはジャケットが見事に、そのレコードの中身である音楽を表現していることだ。都会人の粋というべきか。こういうセンスはやはりプロの仕事というべきであろう。実は、経済的事情によるものがシンプルなアートワークの理由らしい。とはいっても、それを逆手にとってた大胆な発想が素晴らしい。自分も最初にBossa Novaを聴こうとしていた時に、このジャケット・ワークに魅せられて手を出したクチ。けれどElencoの一連の作品は、ある程度Bossa Novaを聴き込んでからの方が、その作品の本当の魅力を感じ取ることができるのではないだろうか。そんな中で初心者だった自分にとって最初に入りやすかったのが、この作品。

 Roberto Menescalといえば、今やブラジルと日本の音楽親善大使ともいうべき存在。ブラジルと日本との距離をグッと近づけてくれてた、その功績は大きい。そして個人的にはZicoを連想してしまう。ま、それはともかくビジネス・マンとしての才覚もさることながらギターの腕前や作曲・アレンジ能力の高さはいうまでもない。今でもProducerとして活躍している大物なのだ。

この人のメロディー・メイカーぶりは尋常ではないのだが、あまりにも心地良さを第一に考えているのか、時として音楽が素直に流れていってしまうのだ。が、それは実は非常に高度な技巧なのである。転調やリズムの面白みなど小技をきかせつつ何よりも気持ちの良いことを優先する姿勢。それはMenescalの人柄や生き方からも感じ取れることである。

Carlos LyraNara Leaoがブラジル軍事政権下の弾圧に対して硬派な姿勢を貫いていった時でさえ、いい意味でお気楽に我が道を行った、正真正銘のお坊ちゃまがそのまま立派な大人になったような人である。何よりも天真爛漫のようで強い意志を持ち、ただひたすら音楽を愛する姿勢には頭が下がってしまう。


 『A Bossa Nova De Roberto Menescal』はRoberto Menescal64年の作品。

全12曲中、4曲しか本人は作曲していないが、全曲が贅沢を尽くしつつシンプルに品良くまとめあげられたアルバム。油断してると、あまりにも気持ちよくなって眠ってしまうが、それこそがMenescalの意図するところかも。

インスト中心とはいっても、PianoやViolaoだけではなくて、VibraphonFluteを効果的に使って、とことんまで心地良さを追求した作品。

弱冠20歳くらいだったEumir Deodatoがアレンジと鍵盤で参加していて底知れない才能の片鱗をみせているのが面白い。

アルバム1曲目はいきなりTom Jobimの名曲“Desafinado”でスタート。なんというエレガントな味わいなんだろう。輝く太陽と真っ青な海を背景に心地良い風が吹く浜辺(月並みな表現だが)を走り抜けていくような軽快な“Batida Diferente”。

いよいよ真打登場のMenescalとRonaldo Boscoliの作品はVibraphonとFluteのCoolなユニゾンが究極のリラクゼーションを生み出す“Balansamba”。

このアルバムで一番好きなMenescalとBoscoliの名コンビの名曲“Rio”はとことん気持ちよい名アレンジ名演奏。

○なんて心地良いんだろう→Rio/Roberto Menescal e Wanda Sa

(Hit-C Fiore)