Egberto Gismontiの創り出す宇宙 | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 踊り出したくなるのを必死でこらえていたのであった。指揮しながら思わず踊り出している指揮者の広上さんが羨ましかった。自分が今ここに存在していること、さまざまな感情感性を持った生命体であること、を強く認識させられる。身体が徐々に純化され、裸になり、全ての感覚が研ぎ澄まされていくような瞬間。野生のエネルギーを感じ、身体中が共鳴していく。いてもたってもいられない。そんな時は、目の前に広がっている広大な宇宙に身を投げ出せばよい。

Gismontiソロ・ギターAmazonの原生林や川の流れ、そこに降り注ぐRioの浜辺に吹く心地良い大草原の頭上に広がる澄みきった青空星空、さらにはParisのCafeに集う人々のざわめき、そしてAfrica大地を思わせる地球の響きを体現し、聴く人々の内なる宇宙とも繋がっていく世界だとしたら、OrchestraはGismontiを中心にいくつもの惑星が永遠に廻り続ける宇宙、を思わせる。ギターとOrchestraはリズムが合わないと、心地良さとダイナミズムが半減してしまうリスクと隣り合わせだ。しかしピアノの場合Orchestraに要求される技巧は、ギターの時ほど難易度は高くない(それでも十分に高度な技術が要されるが)。短期間であれだけの難曲にトライしたOrchestraには頭が下がる。刻々と変化していきながらも永遠に輝き続ける、太陽と惑星群

嬉しいことに3年連続で日本に来てくれたGismonti。同じ曲でも、1年前、2年前とは違う編曲・アレンジ。新しい生命が生まれていくような、その高いCreativity。そこにはジャンルや国境や世代や宗教をも超越した唯一無二の音楽 が存在していた。だからといって難しく考える必要はない。身体で感じる音楽なのだから。

演奏が終わった、Standing Ovation、鳴り止まない拍手アンコールに笑顔で応えるGismonti。音楽の新しい可能性が、目の前で創造されていく瞬間に立ち会えた喜び。演奏を聴き終えた人々の満ち足りた笑顔が、それを物語っていた。

(Hit-C Fiore)