実は、角棒を使うことが秘訣だった。 | 北アルプスのほとりからですが、何か?

北アルプスのほとりからですが、何か?

仕事の都合で、群馬から長野は信濃大町に居を移すことになりました。

さて、今日も30分ほどの現実逃避に心を洗ってまいりました。今回はバルサ棒胴の機体が2つあったので、どうしても運搬上の制約が出てしまったため3機のみとなりました。

まずは1機目。

バルサ棒胴双尾翼競技用機

バルサ棒胴の、双尾翼の競技用機です。楕円の主翼に、水平尾翼の端を折り曲げて垂直尾翼にするスタイル。外観からしてかなり特徴的な機体と言えます。これは、今まで飛ばしていた機体の主翼をちょっと曲げてしまい、少し休ませてやろうかという配慮から新造したものです。ですから、最初から主翼の付け根がケント紙で補強されています。

主翼の付け根補強

これで、ほぼ墜落による破損はないと言い切れます。ところで、今日飛ばしていて思ったのは、とにかくこいつは滑空性能がいいだけではなく、ほぼ無調整で垂直上昇してくれるので思い切り高度獲得が出来る、ということです。実は前から思っていたのですが、その理由が今イチわからずにおりました。ただふと横から機体を見てみたところ、その理由に気が付いたのです。

主翼と尾翼の取付角度がゼロ

このサイドビューをご覧いただくとお分かりかと思いますが、主翼も水平尾翼も、バルサ棒の上面に接着してあるので、バルサ棒に対して取付角度がゼロということになります。通常、滑空時(いわゆる低速飛行時ということです)の飛行性能を重視すると、主翼は若干の迎角(前縁上がり)を取付けることになります。またその補助的役割として、水平尾翼にも主翼とは逆方向の迎角(前縁下がり)を付けることがあります。そうなると、ゴム射出時の高速飛行において必要以上に揚力が出てしまい、宙返りして高く上がることが出来なくなります。低速時の揚力発生を若干犠牲にしてでも、高速時に垂直上昇するよう調整しやすい主翼、尾翼の取付をするべきという結論になる訳です。詳細は、紙飛行機デザイン工房の長松さんの解説をお読みいただければと思います。

紙飛行機デザイン工房 紙飛行機の飛ばし方ページ

結果オーライということになりますが、要は最初から垂直上昇しやすい機体構造になっていた、ということです。残念ながらこの機体は、高速時の頭下げのくせがちょっと強すぎたので、普通行うのとは逆に、尾翼内側後縁を若干上げて、頭下げのくせを取りました。鮮やかに高速で垂直上昇、最高点でスピードが落ちるとすぐに滑空に入り、機体の軽さを生かした低沈下率でゆっくりと降りてきます。棒っ切れに翼を付けたというシンプルさが、逆に高性能を生み出したという好例です。

蛇足ながら今回は、同じバルサ棒胴で製作したシンプルな後退翼機も持参しました。これです。

シンプルなバルサ棒胴後退翼機

前回ケント紙をA4縦目にカットしてもらったものを購入した際、おまけで切れ端のケント紙も頂くことが出来ました。紙目に注意しながらその切れ端を利用したのですが、さすがに主翼が1枚の紙だけなので、思い切りゴム射出すると風圧で振動してしまうフラッターを起こしてしまうようで、思うように高度獲得できませんでした。ただそれなりに力をセーブして射出すれば、きちんっと滑空に乗せることは出来ました。見た目通り、これ以上シンプルになれませんというデザインですが、重心をきちんと取って調整すれば見事に飛ぶという好例です。

あと1機は競技用機。「基本的な」競技用機と銘打ってあるようです。以前「シンプルな」競技用機をPDFファイルで出版社ページからダウンロード、プリンタ印刷して製作したところ、偉く高性能を叩きだしたというお話をさせていただきましたが、この機体も例を違いませんでした。

シンプルな、そして基本的な競技用機

向かって左側の、主翼に何も印刷されていない方が今回新造した「基本的な」競技用機です。「子供の科学」の印刷のあるものは、前回飛ばした「シンプルな」競技用機ですが、パッと見同じではないかと思うほどそっくりなのです。で、いろいろと比較してみました。まずは前後の寸法から。

競技用機の前後寸法比較

主翼取付位置はほぼ同一ですが、垂直尾翼位置、そして水平尾翼取付位置が「シンプルな」もののほうが若干前にずれています。加えて、胴体寸法も若干短いものとなっています。

続いて左右方向の寸法を比較してみます。

競技用機の左右寸法比較

こちらは主翼及び尾翼の面積の違いを一目で確認できます。「基本的な」方は主翼尾翼が若干大きめに設計されています。今日飛ばした印象では、無調整でしっかり高度獲得、滑空に入り素晴らしい性能を見せてくれましたが、大きい翼面積により若干ゆったり感があったかなという気はします。「シンプルな」方は、主翼尾翼とも面積が小さいせいか、かなりきびきびとした滑空を見せてくれたという印象があります。滑空比ではなく、単に沈下率の違いということではあるんでしょうが。そのあたり設計する際いろいろと考慮しなくてはいけないので、設計された二宮先生には本当に感心するのみです。私にはそんな芸当逆立ちしてもできませんので。