「幸せになんかならせません」
こうおっしゃるのは、E子さん(仮名)だ。
E子さんは、ご主人の「浮気」のことでご相談にいらした。
E子さんはご主人とご結婚されて約1年で、現在初めてのお子さんを妊娠中。
お勤めは結婚と同時に退職されて、現在は専業主婦だ。
E子さんの話によると、ご主人にはE子さんと結婚する以前から「恋愛相手」がいるらしく、それが現在も続いるとのこと。
これは後日ご主人のほうに確認したのだが、確かにご主人は、E子さんと出会う前から勤務先のある後輩女性社員を妹のようにかわいがってきたそうだ。
ただその女性社員とはしょっちゅう食事などに行くし確かに恋愛感情というか好意は抱いているけれども、その女性社員のほうには恋愛感情は無く「恋愛相手」にはなっていないし、まして体の関係は絶対に無い、とのことだった。
この状況は、民法にある「不貞な行為」にはならない。
そしてこれが一般的に言う「浮気」になるのかどうかは、私も判断がつかない。
しかしE子さんとしては、逆にそのご主人が自分以外の女に片思いしている感じが許せなかったらしい。
結婚をして1年間は我慢して、お腹に赤ちゃんもできたが、ここに来て我慢の限界が来たようだ。
E子さんはまず実家のご両親に相談したところ、ご両親が「帰ってきなさい」と言ってくれたので、実家に帰ることにするとのこと。
ここで私は、E子さんはこういう経緯で離婚をすることにして離婚協議書の作成についてご相談に来たのかと思った。
ところが、冒頭の言葉である。
「幸せになんかならせません」
E子さんは、自分たち夫婦が離婚した後、ご主人が例の後輩女性社員と結婚すること(先ほどのご主人の話からすると可能性はあまり高くないように思えますが)を、何よりも許せないと思っているのだ。
E子さんの要望は、要約するとこういうことだった。
1.自分は実家に帰る。
2.離婚はしない(ご主人に再婚させない)
3.取れるお金は取りたい。
このご相談後、ご主人のほうからもお話を聞き、婚姻費用の分担に関する公正証書を作成するということでまとまった。
婚姻費用の金額は、実質的な財産分与を含めて、相場よりも高額な金額で、ご主人も同意してくれて決着した。
これは今もって謎なのだが、E子さんはどこでうちの事務所を知ったのだろうか…
参考条文は、以下のとおりです。
民法
第732条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
※この記事は、実際にあった案件をもとにしたフィクションです。実在の人物とは何ら関係ありません。