わが家のネット回線が
水漏れによりおかしくなった日、
私はすでにほぼ1本の
記事を書きあげておりました・・・
それが今日の更新内容でございます

当ブログは軽い時空の歪みを伴いますこと
すでに一部の皆様はご存知かと思いますが、
そんなわけで今回は手術後・入院中の話です

現時点での私はすっかり元気で
痛みもほとんどない生活を
ばっちり手にしておりますので
どうかご心配なく


さて、そんなわけで術後の話。

モルヒネの次はパラセタモール君が
私の鎮痛剤として活躍しました。

最初のうちは液体状のそれを
点滴を通して投与、
鼻チューブ(鼻から胃に通じている)が
外れた後は、錠剤を水で飲む形に。

が、皆様ご存知のように私は
そこらへんで胆汁君の反乱に会い
再度鼻チューブを装着することに。

しかしこの鼻チューブの霊験あらたか、
1日に3回チューブを通して
胃の辺りにたむろする胆汁君を
抜いていただきましたところ、
それまでの私の腹部の張りと痛みは
嘘のように軽減していき。

さて、そんなある日の夜。

夜勤の看護師さんが
私の血圧などを測定しながら
「Norizo、何か今、気になることはある?
お腹の痛みはどのくらいかしら?」

「いや、痛みはほとんどなくなりました。
何と言いますか、こう『生理痛』のような
チクチクした痛みは時々起るのですが、
昨日までの痛みに比べたら何でもないです」

「そう、それはよかったわ!
顔色もすごくよくなっているし、
このまま順調にいくといいわねえ!」

で、看護師さんは一度病室を出ると
15分後くらいに再び戻ってきて
ごそごそと私の点滴を
取り換えてくれたのですが
・・・それ、いつもの『輸液パック』とは
見た目が非常に異なる感じですが
「・・・あの、すみません、何ですかそれ」

「これ?液体パラセタモールよ!」

・・・え?鎮痛剤?

「えーと、その、私、今晩は
鎮痛剤なしでも大丈夫かな、と思うのですが」

「でも今、痛みはあるんでしょ?」

「はあ、あります。ですが鎮痛剤なしで
耐えられる程度の痛みです」

「ということはつまり、耐えなきゃ
いけない程度の痛み
はあるんでしょ?」

「・・・ええ、その通りでございます」

看護師さんはしばし考え込んだ後、
点滴交換を後回しにし、身を屈めて
視線を私のそれと同じ高さに合わせると
「よく聞いてね、Norizo。
痛みがあったら鎮痛剤を使うものなの。
鎮痛剤は痛みに対して使うものなの。
いい?耐えなくちゃならない痛みなんて
現代医学においては存在しないのよ!」

「ですけどその、さきほど
計測していただきました通り、
別に私、痛みで熱も出ていませんし、
汗もかいておりませんし、このように
普通に喋ることもできますし」

「でも痛いんでしょ?痛みがあるんでしょ?
痛みはありません、とは言えないんでしょ?」

「・・・はい、痛みはあります」

「逆に尋ねたいんだけど、どうして
貴方は痛みをそう我慢したがるの?
その我慢に何か意味はあるの?」

「意味と申しますか、その・・・」

「もちろん私も
経験を積んだ看護師ですから
『痛みを楽しむ』趣味がこの世に
存在することは知っています。
しかし病棟内ではそうした趣味は
お控えいただくようお願い申し上げます」

看護師さん、患者相手にその
ジョークの鋭さ、
貴方は只者ではないと見た!

結局その晩、私は液体パラセタモールを
左腕からいただくことになりました。

しかし私のこの『痛みはあるけど
耐えられます』発言は
看護師さんにかなり深刻な
懸念を抱かせてしまったらしく、
消灯前に彼女は再び
雑談という名の『患者観察』をしに
私の病室にやって来てくれまして。

そこでまた私もよせばいいのに
「出産に関して日本では
麻酔を使わない『自然分娩』が
主流なんですよ」
とかなんとか言っちゃって、狙い通り
病室は驚愕の叫びに包まれました。

(麻酔を使った分娩が一般的である
英国においてこのネタの安定度は盤石、
絶対の盛り上がりが確約されております)

「えっそれは物資が不足していた
昔の話でしょ?え、現代もそうなの?
え、ごめん、本気でわからない、何故?」

・・・いや・・・

何故?と正面から尋ねられると
それは何故なんだろう・・・

「何故といわれてもですね、ただ
私は不幸なことに今まで出産を
経験したことはありませんが、
もし今後妊娠するとして、
そして出産時に自分が健康で
体力も十分あったなら、
麻酔なしの分娩に挑戦したいと思いますね」

「それは貴方が『痛みを楽しむ』
ユニークな性癖の持ち主だからでしょっ!
どうしてノーマルな女性までが
麻酔なしで分娩に挑むのよ!」

「えーと・・・太古から続くその痛みには
隠された意味がある、みたいな・・・?」

「ナンセンスッ!真面目に答えて!」

「麻酔の悪影響を考えて・・・?」

「悪影響があるほどの麻酔を
そもそも使うわけがないでしょうがッ!
だいたい悪影響って何よ!」

看護師さんいわく、
分娩時に適度な麻酔を使用すると
母体だけでなく赤ちゃんの負担も
軽減するとのことで、
「じゃあ貴方、虫歯で歯が痛くなっても
『この痛みにこそ意味がある』って
耐えるつもりなの?
治療時も麻酔を拒否するの?
歯を削られる痛みも歯を抜かれる痛みも
麻酔なしで受け入れるわけね?
痛みと恐怖で脳の血管に
強力な負荷がかかっても
そのリスクをあえて引き受けて
麻酔の使用を拒否するわけね?」

いえ、わたくし、歯医者さんは
『痛みのない治療』を第一とする方を
贔屓とさせていただいております。

・・・私の中の『耐えるべき痛み』と
『避けるべき痛み』の区分はどこにあるのか。

なお、私はこの日にどうもカルテか何かに
『この患者は痛みを喜ぶ変態です』的
申し送りを書かれてしまったらしく、
翌日からどの看護師さんも私がどれだけ
「もう痛くないです。痛みどめは結構です」
と断言しても、優しい笑顔で
「そう、でも不快感はない?違和感は?
何か普段と違う感じはある?あるでしょ?
あるわよねえ、あって当然よ!
・・・じゃあ念のためにパラセタモールを
飲んでおきましょうね、念のためにね」

いえ、ですけどね、変態的快感とか
そういうのとは別にですね、
手術の後に患部がチクチクすると
「あ・・・今、ここが治ろうとしているな」
みたいな把握ができて、楽しいでしょ?

え、私だけ?

実は私は看護師さんの指摘した通り
痛みを楽しむアブノーマルな
性癖の持ち主なのだろうか・・・

しかし『痛みを楽しめる』というのは
それだけの体力があることを示すもので
(弱っている時は採血の注射にさえ
結構な痛みと消耗を感じるものです)
そう考えると今後とも私は
耐えられる痛みは耐えて喜ぶ方針で
生きていきたいものだと願うわけです。


まあどういうことかというと、
自然分娩を希望する妊婦さんは自然分娩で、
無痛分娩を希望する妊婦さんは無痛分娩で、
妊婦本人の希望を第一に
分娩方法を選べる世の中が
早く来るといいですな、ということでございます

・・・そういう話だったのか?

分娩時につい痛みの声をあげたら
「お母さんがそういう声を出すと
そのぶん赤ちゃんに行く酸素が少なくなり
赤ちゃんが苦しい思いをするんですよ」
と諭された、という話はよく聞きますが、
だからそういう声を出さなくて済むように
前もって手を打つ方法として
麻酔を利用するのが
『無痛分娩』なのだそうでございますよ

ちなみに麻酔を使っても
痛みは痛みとして感じられるものだそう、
『その痛みに真実がある』派の人も
それならば安心ですね

痛みを愛する貴方も厭う貴方も
とにもかくにも健康第一、
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