もちろん、才能や事前の知識によって多寡はあるだろうが、USCPA受験はかなりの労力を割く必要がある試験だ。一方、社会人に勉強に打ち込める時間はそう多くない。

仕事をしながら勉強を続けるのは大変なことだし、仕事をしていなくても、例えば専業主婦で夫や子供の世話をしながら明確なオンオフがないなかで退職給付会計を理解するのは並大抵のことではない。そもそも誰にとっても、やる気になっている時間を維持するのはそう簡単なことではない。

僕自身、そう多くない時間をかき集めて一刻も早く試験に合格したいと思い学習を続けてきた。その学習を効率的なものにするために、またはその学習を自分にさせるための原動力として、有意義だった本を以下に7冊記載する。

最新脳科学が教える 高校生の勉強法 東進ブックス/ナガセ

¥972
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どうすれば効果的な学習ができるかということを科学的に解説した本。USCPAの学習中最も頻繁に参照し、一つの教材を適切なタイミングで反復するという今回の学習のテーマの元になった。高校生と謳っているが、高校生=大人なので、中学生(暗記が有効)より大人であれば誰にとっても有効。

特に、忘却曲線が下降線をたどるのを効率的に食い留めるために、復習及び復習のタイミングを意識することの重要性についての解説は学習中常に意識してきた。

試験は暗記が9割/朝日新聞出版

¥1,296
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割と最近読んだ本。「高校生の勉強法」の池谷氏の本が参考文献に挙げられており、基本的な考え方は氏と似通っているが、より受験テクニックに特化している。著者自身の公認会計士試験(日本)合格を例にひいて、「試験は暗記が9割」、「理解に重点が置かれ、暗記が軽視されている」という主張は論理的になかなか説得力があったが、それ以上にその主張の熱さに圧倒された。確かに丸暗記=悪、理解=善という風潮は、学習したことを現実世界で活かすという建前論に立ちすぎていて、目の前の試験にとりあえず合格しないといけないという学習者の切実な現実を軽視している感はある。

BECの学習中に読み、CAPMや実効金利の公式暗記に活かした。

あたりまえのことをバカになってちゃんとやる/サンマーク出版

¥1,512
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学習・試験対策の本ではない。ただ、何かを学習するというのは、ゴールを設定し、そのゴールに向けた計画を立て、それを遂行し、進捗状況を日々振り返り明日に活かしていくという、考えてみれば当たり前のPDCAサイクルをバカになってちゃんとやっていくことだとも言える。

ただ現実にはその当たり前のことが色んな事情でできなかったり、その当たり前のことを愚直にやることの大切さを日々の生活の中で見失ったりした。そういうときに読んで励まされた。

「1年で1回しか振り返らない人と、1年で365回振り返る人といったいどちらの人生がうまくいくか」という問いかけにははっとするものがあり、ブログの投稿を通じて一日の学習を振り返る習慣づくりのきっかけの一つになった。

「散歩のついでに富士山に登った人はいない」という言葉も印象的だった。同じように歩いているように見えても、富士山に登ろうと思って歩いている人とそうでない人はたどり着く先が全く違うよ、ちゃんと目標を持って生きようという話。USCPA合格は誰にとっても富士山登頂に等しい一大チャレンジだと思うが、そもそもそんなすごいことを目指している時点でそういう目標を持たない人よりすごいことではないかと、著者の意図とは恐らく違う点でも自分を励ました。

和田式 逆転の受験勉強法: 全教科攻略のコツがわかる! (新マンガゼミナール)/学研教育出版

¥1,026
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この本ではなかったと思うが、中高生の頃に和田氏の勉強法に関する本を読んで、それ以来ずっと大切にしている考え方は「一つのことをゆっくりやるより、3倍の速さで3回やる方が記憶は定着する」、「記憶の定着は目にした回数に比例する」とういうもの。

僕は高校入試・大学入試と本命・併願含めて一度もすべったことがない、今となっては自慢にもならない受験上手(ただし、簿記の試験は複数回滑ったので会計センスはないらしい)なのだが、氏から学んだこの考え方の貢献度合は大きい。大学生のときに家庭教師で教えた3人の生徒にも何はともかくこの考え方だけはしっかり伝えた。

例えば、英単語を単語帳一冊分覚えようとしたときに僕は結構なスピードでページをめくり、一日一回全ての単語に触れることを目標にし結果的に受験までにほとんどの単語を暗記したが、一方で一日1ページずつ一単語につき10回ずつ書き取りすることを己に課している友人もいた。和田氏の理論が正しければ(正しいと実感しているのだが)、このやり方は効率的ではない。

会社で営業をしていた頃、成績優秀者の決まり文句に「ただ普通に当たり前のことをやっただけ」というようなものがあり、「またまたー」というリアクションを受けるわけだが、彼らは別に謙遜しているわけではないと思う。ただ、当たり前だと思っていることのやり方や量が他の人とは違うのだ。

勉強も同じで、同じ量の努力を投入しているはずなのに成果が違うというのは、前提となっている何かが違っているのではないかと疑う必要がある。上記の英語の例で言うと、一単語10回ずつ書き取りするのは相当骨が折れることなので本人は「こんなにやったのに」と思うかもしれないが、成果は量×質なので、方法の良し悪しというのは絶対的にある。

天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある/扶桑社

¥1,404
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東大法学部を首席で卒業、在学中に司法試験に合格し、財務省に入省という、ある意味では最優秀の経歴なのだが、その要因は「正しい努力です」という本。この本については以前も書いたが、努力=反復という主張は新たな発見というより、自分の考えが裏付けられた気がして励まされた。

学習の方法論、モチベーションの維持の両面から解説されているが、「目標を目に付くところに張り出すのはすぐに慣れてしまうので効果なし。例えばPCのパスワードに目標を入力するようにしてより積極的に関わるべし」(僕の意訳)などという結構ミクロな話もあり、結局細かな努力の積み重ねがものを言うのだなと思った。

ちなみに本書に影響を受け、僕の会社のPCのパスワードはUSCPA合格絡みになっている。会社のポリシーでわずかな離席中にもロックをかけることになっているので、結構な頻度で、それなりに長いパスワードを入力する羽目になっている。

イチロー 262のメッセージ/ぴあ

¥1,080
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この本に書いてあった話なのかは忘れたが、「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています。」というイチローの話はウィークリーベースで思い起こす大事な言葉。

色んな考え方があるだろうが、USCPAは実力が比較的正確に結果に反映されるという意味では素直な試験だと思う。もちろん完璧な試験ではないだろうが、例えば大学入試の中にはもっと運、その瞬間のヒラメキ、才能に左右されるものがある。野球など努力がもの言わない最たるものだと思ってしまいそうになるが、スーパースターだってこういっているだから、という気持ちになる。仮にイチローが「所詮は才能」とか言っていたら、僕の生き方も少し変わっていたかも知れない。

非学歴エリート/飛鳥新社

¥1,500
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タイトルにひかれて買った本。著者は普通の大学(と本人が言っている)に入学したが、社会に出ていわゆる高学歴者をのしていくべく、学生時代・社会人になってからも猛烈な努力をし、現在の社会的地位を勝ち取ったという話。

エピソードはいちいちすさまじく、一般人が真似できるか、また真似すべきかは判別がつかないが、ともかくこの世界のどこかにそういう人が実在するという事実だけでもハートに火をつける本。

著者が学生時代に必死で勉強したのは、英語と会計で、会計については国際資格もいくつか持っている。USCPAについての言及もある。



以上。