毎週火曜日更新のはずが、木曜未明になってしまい申し訳ありません(投稿日は07/08としています)。

今回は、JR東日本の251系について取り上げます。
このような車両が登場したのは、乗入れ先の伊豆急が「リゾート21」という観光に特化した画期的な車両を作り、しかも普通列車として運用されるため運賃以外の特別料金が不要という、ある意味では大変「太っ腹」な列車でもありました(ただし、JR乗り入れは昭和63(1988)年の快速『リゾートライナー』以外、全て現在に至るまで特急としての乗入れになっている)。この車両に関しては、当連載でも負って取り上げるつもりです。
対する国鉄~JRは、特急「踊り子」に185系を使い続けていました。しかし、伊豆急線内では、展望席や窓に向いた席がある「リゾート21」が特急料金なしに乗れるのに対し、何の特色もない転換クロスシート(普通車の場合)の185系が「踊り子」として特急料金を徴収しているという実態は、いかにもアンバランスではありました。
そこで、JR発足後、伊豆方面への特急車両についての研究が始まり、それに基づいて製造されたのが251系です。
この車の話題は、以前に伊豆急開業50周年記念の連載記事の中で取り上げたことがありますが(下記関連記事参照)、重複を顧みず特徴を列挙しておきます。

1 足回りは界磁添加励磁制御を採用(VVVFインバーター制御ではない)。
2 1編成10両、編成両端を2階建て車両とし、展望席を設ける。
3 編成に2両1組の「ユニット」の考え方を持ち込み、伊豆急下田寄り2両を「グリーンユニット」、東京寄り2両を「カスタムユニット」とし、メインの乗降扉は2両で1ヶ所とし、もう1つの扉は終点でしか開かない。
4 グリーン車には2階建て構造を生かし、サロンと個室を装備。
5 東京方先頭車1階部分には、子供用のプレイルームを装備。
6 普通車は、「カスタムユニット」は先頭の展望席以外は4人がけボックスシート、それ以外の中間車6両は回転クロスシートとする。
7 2階建て車両以外の車両は、ハイデッカー構造とし、併せて窓を大きく屋根までとり、眺望に配慮。
8 外板塗色は淡いブルーグレーのツートン。

車両としてのスペックに関しては既に取り上げましたので、ここでは客室設備を中心に述べていきます。何と言っても注目されたのは、贅を尽くしたグリーン車と、子供用のプレイルームでした。グリーン車は2両とも2階部分を開放席とし、重厚なリクライニングシートが2+1の横3列で展開しています。そして先頭車の前方は展望席が9席(後のリニューアルで6席に減少)、1階部分はグリーン車利用者専用のサロンルームとなり、軽食や茶菓を提供しています。運転開始当初は、カレーライスなどもちゃんと陶器の皿に盛られ、金属のスプーンで供されていて、ちょっとした食堂車のような趣もありました(現在は紙の器で提供しています)。
そして2号車の1階部分は、在来線昼行特急で初めてとなる個室(4人用)を3室備えており、グリーン料金を徴収するに相応しい、静謐かつ豪奢な空間となっています。
なお、グリーン車の乗客にはドリンクサービスが実施され、在来線特急列車のグリーン車では、JR九州やJR北海道がドリンクサービスを取り止めてしまったため、現在でも実施している列車は「スーパービュー踊り子」だけとなってしまいました。JR東日本でも、東北・秋田新幹線の「はやぶさ」「はやて」「こまち」グリーン車で行っていましたが、現在はグランクラスのみになってしまっています。

以上はグリーン車ですが、普通車は東京寄りの2両を除いては、オーソドックスな2人掛けの座席でした。しかし、当時既に一般化していたフリーストップ式リクライニングシートではなく、普通の回転クロスシート。リクライニング機能はありませんでした。なぜこのような座席を採用したのかは謎ですが、恐らく眺望との関係があったのではないかと思われます。
それでは残り2両はどういう座席だったのかですが、こちらはグループ客の利用を想定したものか、4人掛けのボックス席が展開していました。さらに東京方の先頭車には展望席が16席用意されています。
そして東京方先頭車に用意されたのは、子供用のプレイルーム。これはドイツなど欧州諸国では採用例がありましたが、日本の鉄道ではこれが初の採用例です。周囲にクッション材を敷き詰め、そこで子供が自由に遊べるようにしたものです。子供連れの旅行の場合、小さな子供だととかく退屈してぐずり始めたりするものですが、そのような「退屈」の防止を図る空間でもありました。このような設備、長距離列車には是非必要ではないかと管理人は思いましたが、これ以後、このような設備を備える車両は登場していません。僅かに、JR西日本が臨時列車として運転していた「ファミリーひかり」用の0系車両に、一部の座席を撤去してプレイルームを仮設した車両が運用されたくらいです。現在の500系こだまの「プラレールルーム」も、広義では子供用のプレイルームとはいえますが、251系のそれと異なるのは、251系は純然たる「遊ぶスペース」であることです。
なお、普通席のリクライニングしない座席、及び4人掛けボックス席は、平成14(2002)年に行われたリニューアルの際、フリーストップ式のリクライニングシートに変更されました。これは管理人の個人的見解ですが、ボックス席がなくなったのは、座席をボックス単位で売らなかったのが原因ではなかったかと考えています。ボックス単位で売らなかったために、他のお客と相席になってしまった乗客が、次に乗るときにボックス席を避けたのでは…と思います。「成田エクスプレス」もそうですが、特急列車での4人掛けボックス席というのは、本当に定着しにくいものだなあと思ったものです。

251系を使った列車は「スーパービュー踊り子」とネーミングされ、平成4(1992)年のGW、4月28日から走り出しました。豪華なグリーン車や広い眺望、前面展望が好評を博し、乗車率は好調裡に推移しました。その後、不幸にも我が国は不景気に見舞われますが、それでも「スーパービュー踊り子」の人気は衰えることはありませんでした。
ちなみに、JR東日本では、「踊り子」を全てこの車両にする気はなかったらしく、今でいう近鉄の「しまかぜ」のような立ち位置にしようと考えていたようです。確かにこんな列車、何本も運転したら経費が嵩みますし、伊豆方面への特急のフラッグシップ的な立ち位置を確保したかったのだろうと思われます。

登場後23年経ていますが、現在なお、伊豆方面への特急のフラッグシップとして活躍を続ける251系。
今後は機器の換装などが問題になって来ると思われますが、機器を換装して活躍を続けるのか、それとも新たな車両が投入されるのか、それも注目すべきポイントだと思います。

次回は、この251系と鉄道友の会ブルーリボン賞を争った、日光へ誘う豪華特急を取り上げます。