今回からしばらくは妊娠と腎疾患に関する話題を取り上げてみます。
1、妊娠に関連して起こる生理的な泌尿器系の解剖学的変化は何か?
正常妊娠では、その間の腎の長さは約1cm拡大し、かつ右腎が左腎よりも若干多めに拡大します。妊娠2ヶ月までには腎盂および尿管も大きさを増しはじめ、同様に右側が左側よりも多めに拡大する傾向があります。尿管は直径にして2cmほども拡大し、右と左の腎盂は平均してそれぞれ15mmおよび5mmほど拡張します。
これらの尿路系全体の拡張の原因は、成長する子宮による機械的閉塞および血中プロゲステロン上昇による平滑筋弛緩の両方に関連しているようです。
このような拡張は泌尿器系検査の解釈に影響し、また無症候性細菌尿や腎盂腎炎の発生を増す原因となります。
2、正常妊娠においては、腎の血行動態にどのような変化が起こるか?
妊娠により循環血液量および心拍出量が増加し、末梢血管抵抗は低下します。そのため、妊娠中には腎血漿流量および糸球体濾過率の両方に劇的な変化が生じます。
妊娠第2三半期までに腎血漿流量は非妊時の値より約75%増加し、その後第3三半期の終わりまでに減少します。糸球体濾過率は第1三半期の終わりまでに約50%増加し、妊娠中を通じて維持されます。糸球体濾過率は臨床的にはクレアチニンクリアランスによって評価されますが、クレアチニンは尿細管からも分泌されるため、実際の糸球体濾過率は測定されたクレアチニンクリアランスよりも低いことになります。
今回の記事は産婦人科シークレットの内容を参考にして記載しておりますが、内容はオリジナルです。
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