Never -1997040719990429- / Raphael | 安眠妨害水族館

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Never -1997040719990429-/Raphael

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1. Imitation White
2. Sacrifice
3. eternal wish~届かぬ君へ~
4. 人間不信
5. 窓際の夢
6. White Love Story
7. 症状 1. 潔癖症
8. 症状 2. 分裂症
9. 症状 3. XXX症
10. Sweet Romance
11. follow you
12. 夢より素敵な

改めて、11月1日のZepp Tokyoでの単独公演をもっての解散が発表されたRaphael。
本作は、アルバムリリース三部作の第一弾として発表されたフルアルバムです。

内容は、インディーズ時代の楽曲をほぼ網羅して、現在の彼らによるリレコーディングを敢行したもの。
Gt.華月さんの死後の作品としては、2012年にシングル「eternal wish~届かぬ君へ~」、および同年に行われた再演の様子を収録したライブアルバム「天使の檜舞台」がドロップされていますが、このタイミングで、スタジオアルバムが届けられるとは。
メンバーには華月さんもしっかりクレジットされており、間違いなくRaphaelの新譜が2016年の今、発売されたのですよ。

華月さんがいない中で、どんな作品を作るのか。
前回の復活時は、どちらかといえば、華月さんがいた頃のサウンドを再現する方向にベクトルが向いていたと思います。
そして、過去の代表曲の初音源化、という趣旨を考えれば、その選択は妥当でした。

一方で、今回は既存曲の再録。
ただの再現ではないだろうと推測はしていたのですが、まさか、ここまで大幅にアレンジを加えてくるとは想像できませんでしたよね。
賛否両論は承知のうえなのだろう。
華月さんに寄り添いつつ、そこから一歩前に踏み出すための再構築。
過去ではなく、今の彼らを示す。
一度聴いてしまえば、このアプローチしかありえなかったとすら感じます。

Vo.YUKIさんがギターに挑戦した「Imitation White」、ピアノがメインのアレンジにより生まれ変わった「窓際の夢」、「White Love Story」のコンボ、ストリングスを加えてバラード調に仕上げた「夢より素敵な」など、経験値を積んだからといって安パイに走るわけでもなく、チャレンジも忘れない。
その中でも、ベルのGt,夢人さんが参加した「Sacrifice」、「症状 1. 潔癖症」、「Sweet Romance」の格好良さよ。
華月さんをリスペクトしながらも、現代のサウンドに昇華させるギタープレイ。
オリジナルが激しいバンドサウンドだけに、これがぴったりハマるのです。

もちろん、若さや衝動性がセールスポイントでもあったインディーズ時代の楽曲ですから、「人間不信」のようなハードチューンは、こなれた感じに収まってしまったな、という側面もありますし、すべてにおいて再録版のほうが良いと主張するつもりもありません。
思い入れや愛着があればあるほど、些細な変化であっても敏感になってしまうのは理解できる。
彼らがシーンに与えたインパクトや葛藤する少年少女の受け皿としての立ち位置、ファンの入れ込み具合を考えれば、受け入れられないというリスナーがいても仕方ないことでしょう。

ただし、華月さんが生み出した名曲たちを、レベルアップしたメンバーが、現代の技術をもって情熱のすべてを注ぎ込む。
その事実だけで、お腹いっぱい胸いっぱい。
10代の彼らも、30代の彼らも、変わらずに格好良くあり続けているのだなぁ。
詳細が発表されていない残り2枚のアルバムが待ち遠しくなるほど、輝かしい奇跡に包み込まれた作品です。

<過去のRaphael(-Starring 華月-)に関するレビュー>
天使の檜舞台
eternal wish~届かぬ君へ~
秋風の狂詩曲
Evergreen
mind soap
タッチ
夢より素敵な
Sick~XXX患者のカルテ~