死と再生 / cocklobin | 安眠妨害水族館

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死と再生/cocklobin

¥2,530
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1. ATMAN
2. 生まれ落ちた世界
3. WELCOME
4. GAMUT
5. DELIC
6. WHEEL OF FORTUNE ~ 死と再生

2010年にリリースされたcocklobinの2ndミニアルバム。
2nd Press盤も存在しています。

1stミニアルバム「DARK DESIGN CATALOG」で既に高い完成度を誇っていただけに、期待値によるハードルは高かったのですが、軽々と飛び越えてしまった。
バンドサウンドに比重を置かれているので、演奏も、歌唱も、より肉体的と言いますか、激しく迫る圧力が直接的に響いてくるよう。
古き良き名古屋系ファンには、たまらない内容に仕上がっていますね。

ピアノによるSE、「ATMAN」を導入に、ドラマティックな「生まれ落ちた世界」へ繋ぐ掴みのパート。
これが、"何かとてつもないものが出来上がったのでは…"という予感を纏っているのだ。
アコースティック調でスタートすると、中盤で急に激しいバンドサウンドに変貌。
男らしいシャウトと、透明感のあるクリアトーンのボーカルが絡み合い、まるで地に落とそうとする重力と、それでも舞い上がろうとする浮遊感とのせめぎ合い。
あっという間に、cocklobinの世界観に引き込まれます。
ラストシーンでは、意味深な語りが挿入され、いよいよ本編がはじまるぞ、とテンションを高める役割も果たしているのもポイントでしょう。

そして、そこで送り込まれるのが、キラーチューンである「WELCOME」だから、完全にノックアウト。
Gt.依織さんの繊細なギターと、Vo.niguさんの透明感のあるボーカル。
ハードさを維持しつつ、メロディアスに疾走し、彼ら流の王道感を示していきます。
「GAMUT」、「DELIC」も、ヘヴィネスにこだわりながら、耳馴染みの良いメロディラインを重ねる楽曲。
徐々にハードさが増していくあたりが、構成として上手いですな。
同じような曲が続くという印象を与えずに、本作におけるコアがどういうサウンドであるのかをしっかり主張。
曲数の少ないミニアルバムにおいて、緩急をつけすぎると大局観がバラバラになりがち。
これこそ絶妙な曲順なのかもしれません。

本編のラストは、退廃的なバラード、「WHEEL OF FORTUNE」。
ここまで、バンドサウンドでガシガシと攻めていただけに、歌唱力の高さを前面に出したアプローチは効果的。
静かに、穏やかに、「死と再生」の物語を締めくくります。

・・・と思いきや、9分を超えたタイミングでシークレットトラックである「死と再生」が。
表題曲を、こんなところに隠すなんて。
しかも、これが本当に名曲。
すべてを総括し、更には圧倒してしまうくらいのインパクトを持つ、切ないメロディアスチューン。
何度も聴きたいのに、聴くのが面倒なのが難点です。
2nd Press盤ではきちんとトラック分けされているようで、そちらも欲しくなるという意味では、商売上手と言えるのかも。

激しい中にも世界観があり、真っ暗な闇に飲み込まれそうな感覚。
繊細さも豪快さも兼ね備えた、実にcocklobinらしい一枚。
ファンからの人気も高く、解散済みのバンドだから、なんて冷たいことを言わずに手にとっていただきたいものです。

<過去のcocklobinに関するレビュー>
CHRONUS
[Iris]
grisaille
DARK DESIGN CATALOG