NOnsenSe MARkeT / MERRY | 安眠妨害水族館

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NOnsenSe MARkeT(初回生産限定盤B)/MERRY

 

¥5,400

Amazon.co.jp

 

DISC1

 

1. iNtO the mARkeT

2. NOnsenSe MARkeT

3. 「東京」

4. 自意識過剰型木偶人間

5. ZERO -ゼロ-

6. 暗闇にピンク

7. Hide-and-seek

8. Zombie Paradise ~地獄の舞踏曲~

9. Carnival

10. Station 07

11. 千代田線デモクラシー

12. 梟

13. Unreachable Voice

14. 群青

 

DISC2

 

1. 窓から逃げたラブソング (ACOUSTIC)

2. カナリア (ACOUSTIC)

3. 冬のカスタネット (ACOUSTIC)

4. 閉ざされた楽園 (ACOUSTIC)

5. SWAN (ACOUSTIC)

6. 罪(LIVE)

7. ジャパニーズモダニスト (LIVE)

8. 梟 (LIVE)

9. Screams of the Dark (LIVE)

10. オリエンタルBLサーカス (LIVE)

11. 群青(LIVE)

 

オリジナルとしては3年半ぶり。

クリスマスイブにリリースされたMERRYの8thフルアルバムです。

 

ドキュメントDVDが付属される初回生産限定盤A、アコースティックやライブ音源が収録されたCDが付いた初回生産限定盤B、CDのみで価格が安い通常盤と、3タイプでのドロップ。

初回生産限定盤は値が張るが、アルバム2枚組と考えれば、手が出せない値段というわけでもないでしょうか。

 

導入SEとなる「iNtO the mARkeT」と、表題曲である「NOnsenSe MARkeT」。

大文字の部分を取り出すと、それぞれ、"NO ART"、"NO SMART"。

彼らが隠したこのメッセージを探っていくのが、このアルバムの醍醐味と言えるだろう。

作曲・MERRY名義でのクレジットとなったこのナンバーは、レトロックを自称する彼ららしさにあふれた楽曲。

曲よりも先にあったという皮肉たっぷりな歌詞にも、ニヤリとさせられます。

 

さて、"らしい"楽曲からスタートする本作ではあるが、今までのMERRYと同じなのか、と問われたら、そんなこともないのだ。

「東京」、「自意識過剰型木偶人間」といった激しい楽曲は、従来持っていたパンキッシュなスタイルが、より鋭利に研ぎ澄まされた印象。

この3年半、異種格闘的なイベントやフェスに参加した経験を還元すべく、現代邦ロックのアプローチを取り入れているのがわかります。

 

こんなことを書いてしまうと、流行への便乗とも捉えられそうなのだけれど、個人的には、むしろ逆だと思っている。

フォーマットは流行に乗ったものだとしても、ここまでオリジナリティを出せるのか。

相手の土俵にあえて立って、すべて掻っ攫ってしまおうとするその姿勢がこそ、現代ロックシーンに喧嘩を売っているようにも見えるのだよなぁ。

 

中盤の構成も、シングル「ZERO -ゼロ-」でのチャレンジをアルバム全体に波及させたようなイメージで、結成から10年以上経ったバンドとは思えないほど、衝動性が詰まっています。

密度の濃いサウンドが中毒的に侵食する「暗闇にピンク」、哀愁歌謡ではあるが、サウンドが明らかに洗練された「Hide-and-seek」、現代的なダンスサウンドを駆使しながらも、言葉の選び方がMERRY節としか言いようがない「Zombie Paradise ~地獄の舞踏曲~」など、聴けば聴くほど、次々に新しい表情を見せていく。

レトロックとは言いながらも、瑞々しく尖った、最先端のサウンドである。

 

インスト「Station 07」を挟むと、あっという間に終盤戦へ。

もうひとつのリードトラック、「千代田線デモクラシー」から「梟」への繋ぎも、これまた素晴らしいですね。

ここをピークにするのだ、という意図が明確で、テンションを上げずにはいられない。

「千代田線デモクラシー」は、ノスタルジックなサウンドで雰囲気を作りつつ、パンキッシュなノリもあって、実にサーカス的なナンバー。

「梟」は、擦り切れそうな疾走感により、クライマックスを演出していく。

シングル曲ではありますが、こんなにもポテンシャルを秘めていたのかと思うほど、ほとばしる感情が痛々しく刺さります。

 

ラスト前のアクセントに、静かに優しく展開されるバラード、「Unreachable Voice」を挿入したのも効いている。

シングルバージョンとは異なり、アカペラからスタートする「群青」の感情表現を、より鮮烈にしていますな。

すべてが必然。

単体でも十分にインパクトがある「群青」が、ますますドラマティックに響くようになりました。

 

褒めすぎかとも思うけれど、それ以外に言葉が見つからない。

とにかく格好良いと言うしかない、というくらいに隙がないアルバム。

前作、「Beautiful Freaks」でも、ここまでのものを作り上げるとは!と驚かされたのですが、それと同等かそれ以上の作品に仕上がっています。

 

単体では、"NO ART"であり、"NO SMART"。

だが、そんなナンセンスな音楽が、MERRYの作品として、一枚のアルバムとしてパワーを持った時に、"NO ART, NO SMART"となることが見事に証明された。

独自の美学なくして、格好良さは得られない。

なるほど、なんとも気の利いたクリスマスプレゼントですね。

 

なお、初回生産限定盤Bに付属されたCDは、ギターとボーカルのみで収録されたアコースティック5曲、"MERRY 2013「devour」at SHIBUYA-AX 2013.2.13 SHIBUYA-AX"でのライブ音源から2曲、"MERRY 「devour act 2」 拝啓、最モ臭イ遊戯 絶望ノ窓カラ闇二降ル星…貪リ食ウ夢 at 日比谷野外大音楽堂 2013.8.10 日比谷野外大音楽堂"でのライブ音源から4曲という、特典というには豪華すぎる内容。

CD未収録の「Screams of the Dark」が聴けるお得感もあり、これは必聴でしょう。

 

<過去のMERRY(メリー)に関するレビュー>
ZERO-ゼロ-
窓 -replay-
群青
Beautiful Freaks
ハーメルン
アンダーワールド
Midnight Shangrila/空っぽな歌~final cut~
PEEP SHOW
nuケミカルレトリック
個性派ブレンド クラシック~OLDIES TRACKS~
モダンギャルド