Beautiful Freaks / MERRY | 安眠妨害水族館

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Beautiful Freaks(初回生産限定盤A)(DVD付)/MERRY
¥5,250
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1. -choral-

2. finale

3. モノクローム

4. ザァーザァー

5. Fleeting Prayer

6. -sabbat-

7. 不均衡キネマ

8. 絶望

9. スカル

10. 夜光

11. クライシスモメント

12. 消毒

13. The Cry Against ME

14. アイデンティティー

15. SWAN

16. -dawn-


フリーウィルに移籍して、MERRYと表記を改めてからは、初となるフルアルバム。

通算では、7枚目のオリジナルアルバムとなります。


初回盤TYPE-A、BはDVD付き。

「MERRY SONIC 10 WINTER~Special 2night [白い羊] [黒い羊]~」のライブ映像が、それぞれ収録されています。

TYPE-CはCDのみ。収録曲は同一なので、単純に、値段や好みで選んでよいのかと。


10周年を迎え、事務所の移籍、バンド名の表記変更と、変化を強調してきたMERRY。

音楽性においても、先行シングル3枚が、これまでのレトロでパンキッシュなスタイルから、少し変化をつけての方向性を見せていたこともあり、既存のファンにとっては、期待半分、不安半分というのが、正直なところだったでしょう。

しかし、それは、杞憂にすぎなかった。

これまでとは違ったアプローチも、音楽性の幅としては取り入れつつ、基本的には、"原点回帰"ととれる内容。

10年経っても、軸は変わっていないよと言いたげなくらい、MERRYらしいアルバムに仕上がっていました。


確かに、導入のSEである「-choral-」だけを取り出すと、変化したと思わざるを得ない。

これまでの導入インストは、レトロで、ジャジーであるというのが鉄板だったのに対し、本作においては、ダークで禍々しい、趣が異なるもの。

結果として、不安を煽るものになるのですが、それすら、ファン心理を逆手にとった演出だったのかもしれません。

「finale」、「モノクローム」と、哀愁メロディをなぞりながらも、疾走感を出したアルバム序盤らしいナンバーが続くと、これぞMERRY、王道レトロックの「ザァーザァー」へ。

この安心感、安定感。

良い意味で、"いつもどおり"のMERRYのアルバムじゃないですか。

シングルでは、どうアルバムに組み込まれるのか想像できなかった「Fleeting Prayer」も、うまく馴染んでいる。

変わらない、だけであれば、マンネリになってしまう音楽性も、少しスパイスを効かせただけで、こうも、昂揚感を煽れるのかと驚くほど、10年間貫いた音楽を、新鮮味とともに楽しむことができるのですよ。


インストである「-sabbat-」を挟んでの中盤戦は、パンキッシュで攻撃的な楽曲を中心に。

ここでは、最近は影を潜めていた、エログロナンセンスを強めに抽出した構成になっていました。

見世物小屋のような雰囲気を纏いつつ、既に定番曲にもなっている「不均衡キネマ」、絶叫シャウトが耳をつんざく「絶望」と、歌詞においてもガラさんらしさを見せるシニカルチューンの後に待っているのは、1stアルバムの「現代ストイック」のアタリ盤にのみ、ライブ音源が収録されていた「スカル」。

ものものしい"羊が一匹・・・"の語りや、洗練されていないウネウネギターなど、やはり一部には10年の歳月に伴う変化は感じるものの、原点回帰的なアルバムとしては、もってこいの選曲。

最近できた曲たちと並べて聴いても、遜色なく馴染んでしまうところに、このバンドの軸のブレなさを実感します


王道感のある「夜光」、歌モノなのに激しさも見せる「クライシスモメント」と、タイプの違う2曲のシングルでアクセントをつけると、ひたすらパンキッシュな「消毒」で、本編の締めくくりといったところでしょうか。

途切れることなく、一息で聴ききることができる、中だるみのない構成には、さすがの一言。


個人的には、「The Cry Against ME」以降は、アンコールのイメージ。

激しくまくしたてる「The Cry Against ME」は、「消毒」からの勢いを消すことはなく、もちろん流れで聴いても問題はないのですが、移籍後初のシングルというのもあり、仕切り直しという位置づけで聴いてみると見え方が変わってきそう。

シングルバージョンよりも、無駄が省かれているので、この曲でMERRYを誤解した人がいたとすれば、先入観なしで聴き直してほしいものです。


明るくカラっとしていて、だからこそ、これまでの雰囲気とは違った切なさを持った「アイデンティティー」は、終盤の予兆。

ありそうでなかった、爽やかでキャッチーなストレートパンクスは、ライブで盛り上がることをありありと連想させますね。

しっとり、バラード「SWAN」で締めて、SEの「-dawn-」で終幕。

「SWAN」については、過去、ここまでガラさんの艶っぽい声を活かした曲があっただろうかというくらい、丁寧な歌い方が印象的です。


ライブにちなんで、本編と、アンコールというイメージで紹介しましたが、本編の曲たちには、これまでのメリーの延長戦にある安定感、アンコールに含めた曲たちには、新たなMERRYの可能性を感じました。

きちんと、自分たちの軸を示しつつ、マンネリにならないための、新境地の模索も怠っていない。

10年という節目を迎えるにあたり、彼らが貫いてきた音楽の熟成、および、更なる追求が、この作品で手に取るようにわかる。

これは、長く聴いてきたファンも、しばらく距離をとっていたファンも、新規のファンであっても、こぞって称賛するわけだ。

2011年も終盤に差し掛かっていますが、今年のマストアイテムのひとつに、自信を持って、本作をおススメしておきます。


<過去のMERRY(メリー)に関するレビュー>

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Midnight Shangrila

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