BELOVED / GLAY | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

BELOVED/GLAY
¥3,059
Amazon.co.jp

1. GROOVY TOUR
2. Lovers change fighters,cool
3. BELOVED
4. SHUTTER SPEEDSのテーマ
5. Fairy Story
6. カナリヤ
7. HIT THE WORLD CHART!
8. a Boy~ずっと忘れない~
9. 春を愛する人
10. カーテンコール
11. 都忘れ
12. RHAPSODY

コアなV系ファンになってくると、ポップな曲や、売れ線の曲を呪詛する傾向があるのは承知のうえ。
それでも、これは名盤だと押し切りたいのが、1996年、GLAYにとって初のミリオンセールを記録した、この「BELOVED」なのです。

メジャー進出後、3枚目となるフルアルバム。
シングル曲は、「BELOVED」、「a Boy~ずっと忘れない~」の2曲だけですが、まったくそんな印象を受けないほど、どこかで耳にしたことがある定番曲のオンパレード。
「GROOVY TOUR」は、CMのタイアップもついていましたね。

序盤は、比較的ロックテイストが強め。
同年に発売された2ndアルバム、「BEAT out!」からの流れを引き継ぐように、勢いがあり、かつポップでキャッチーな楽曲を並べてきています。
アルバムの表題でもある名バラード、「BELOVED」がアクセント的な位置付けで置かれている贅沢っぷり。
JIROさん作曲のアッパーチューン、「SHUTTER SPEEDSのテーマ」や、大人の愁いを帯びた「Fairy Story」など、その中で、バラエティも豊富だから、非の打ちどころがありません。
シンプルなTAKUROさんのリフと、エキセントリックなHISASHIさんのフレーズの役割分担も効いているなぁ。

そして、このアルバムの特徴は、「カナリヤ」からスタートする中盤~後半の流れ。
GLAYと言えば、バラード。
ここに強みを持っているのだと、はっきりと印象付けました。

勢いのある前半戦で、「BELOVED」がアクセント的な1曲だったのとは対照的に、後半戦は、ヘヴィなイメージがある「HIT THE WORLD CHART!」が、少し異質に感じるほど、歌モノに特化しています。
ハスキーながら抑えた歌い方に胸を打たれる「カナリヤ」、これまでの典型的なラブソングから、ひとつ達観したような視点から描かれた「春を愛する人」をはじめ、TERUさんのハスキーな声と、TAKUROさんの文学的な歌詞が、丁寧に噛みあったミディアム~スローな楽曲は、単純に聴き心地が良い。

ピアノとストリングスをバックに歌い上げる「カーテンコール」が最大の見せ場でしょうか。
1番をじっくりと聴かせた後で、バンドサウンドに移行していく構成。
この手の曲って、ベタなスタイルの割には、きちんとやりきっているバンドってほとんどないのかな、と思います。
だいたいが、ピアノ部分での工夫が少なく、バンドサウンドになっていくまでは「我慢」であることが多い。

しかし、この曲は違う。
メロディの聴きやすさ、しっかりとタメを作る部分は残しながら、無駄のない展開にとどめることで、浸っているうちにギターが入り、ベースが入り、ドラムが入り、どんどん盛り上がっていくのです。
これができるのだから、自信を持ってバラードナンバーを次々と送り込めるわけだ。

「都忘れ」も、個人的には外せない。
タイトルだけを見ると、とてつもなくダサいのですが、百聞は一見に如かず、もとい、百見は一聞に如かずとでも言ったところか。
サビでの昂揚感、芯のある歌声、ノスタルジックな歌詞。
泣かせる系のバラードではないのですが、じんわりと涙が浮かんでくるようなあたたかさを感じます。
時間が経っても色褪せない、GLAYの中でも、とりわけ好きな楽曲のひとつ。

バラード過多になりそうなところで、アッパーポップな「RHAPSODY」で締めたのも評価したい。
本当に絶妙なタイミングで、変化をつけてくる。
固め打ちのような配置ではあるものの、聴いてみると、とてもバランスがとれているように感じるのですよね。

キラキラしてなければ、ダークでもない。
確かに、今のヴィジュアルシーンの中心的なバンドと、同列で語りにくいところはあります。
ただ、そんなことは、GLAYの魅力を失わせる理由にはならないはず。
粗削りな若手バンドから、安定した大御所バンドへの橋渡しとなったマストアイテム。
自分の感性に変な縛りをつけないで、素直な気持ちで聴いてほしいものです。

<過去のGLAYに関するレビュー>
GLAY
灰とダイヤモンド