介護保険”改革”の影響を毎日新聞がシミュレーション(毎日新聞より) | 労働組合ってなにするところ?

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2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

昨日の院内集会 での情勢学習の報告で、介護保険についても2011年通常国会で法改正が行なわれようとしていることをお伝えしました。

また、10月10日にさいたま市 で、10月24日に川口市 で行なわれた介護のつどいでも、介護保険がどのように改悪されようとしているかをご紹介してきています。


そうした問題をさらにわかりやすく問題提起するため、毎日新聞が行なった介護保険”改革”後のシミュレーションをご紹介したいと思います。引用部分は青で表記します。



介護保険:改革、影響は 社保審部会「負担増」に反対意見 厚労省案シュミレーション

毎日新聞  2010年11月26日

http://mainichi.jp/life/health/news/20101126ddm002010038000c.html


 ◇「負担増」素案に反対意見


 社会保障審議会介護保険部会(部会長・山崎泰彦神奈川県立保健福祉大教授)は25日、12年度の介護保険制度改革に向けた意見書を大筋で了承した。19日に示された、利用者の負担増が並ぶ素案に異論が噴出し、ケアプラン作成の有料化や、高所得(年金収入が年間320万円以上)の人の自己負担割合を今の1割から2割に引き上げる案など主要項目の大半に反対意見が併記された。改革を見送れば65歳以上の人の平均月額保険料(現在4160円)は5200円に達する。他の財源確保にメドが立たない中、厚生労働省は利用者の負担増に踏み込まざるを得ないと考えている。負担増案が実現すると、利用者はどんな影響を受けるのか、シミュレーションした。【山田夢留、鈴木直】


 ◆在宅


 ◇「高所得」出費2倍も


 男性Aさん(85)は妻(82)と2人暮らし。要介護3の認定を受け、デイサービスと訪問介護サービスを週2回ずつ利用している。「老老介護」となる妻の負担を減らすため、月に1週間はショートステイを利用するほか、福祉用の電動ベッドも借りている。月々の介護費用は16万円で、自己負担は1割、約1万6000円だ。

 しかし厚労省は、年金収入が年320万円以上の「高所得」の人は自己負担割合を2割にアップする考えだ。年金収入だけで340万円あるAさんの場合、今のままのサービスでも月の自己負担は今の2倍、約3万2000円に跳ね上がる。

 ケアマネジャーがどんな介護が必要かを勘案し、サービス内容やスケジュールを書き込む「ケアプラン」作成も有料化が検討されている。ケアプランは毎月1回、市町村への提出が義務づけられており、1回当たり1000円程度の持ち出しとなる。これも合わせ、Aさんの自己負担は毎月3万3000円程度となる見通しだ。


 ◇軽度の「要支援」自己負担アップ ケアプランは有料化


 要支援2の男性Bさん(80)は1人暮らし。週2回、訪問介護サービスを利用し、自宅を訪れるヘルパーに「生活援助」と呼ばれる掃除や調理のサービスを受けている。

 要支援者の訪問介護利用料は定額制で、週2回利用するBさんの負担額は月2468円。だが、要支援1、2の軽度の人の自己負担割合も2割への引き上げが検討されており、実施されればBさんの負担は2倍の4936円に。要支援の人はケアプランが有料化されると月500円程度の負担増となるため、Bさんの合計負担額は5500円近くなる。


 ◆施設


 ◇特養の部屋代5000円 食費など軽減見直しでさらに増


 男性Cさん(78)は全室4人相部屋の特別養護老人ホームに入所している。毎月の負担は施設サービス費約2万8000円に加え、食費・居住費の5万1000円。Cさんには月20万円程度の年金収入があり、個人住民税を払っている。厚労省案通り部屋代がかかるようになれば5000円の負担増となり、支払いは8万円を超す。

 同じ施設の女性Dさん(71)は入所時に住所を施設に移し、元サラリーマンの夫(68)と世帯が別になった。専業主婦のDさんの年金額は少なく、個人住民税の「非課税世帯」。このため食費などは月2万1000円程度に軽減されている。

 だが、改革案では、施設入所前の世帯全体の所得を市町村が勘案する案が検討されている。夫の年金も含めて判断されると、Dさんは食費などが3万円増え、部屋代も含めて最大3万5000円程度の負担増となる。


(後略)



こうした”改革”案が出されるということは、日本政府が介護を”社会保障”として考えていないことを如実に表していると思います。国民健康保険ですら「社会保障である」という確認をすることを自治体職員がためらうようなお国柄ですからね。

日本の社会保障制度は憲法25条を根拠とし、何らかの原因で国民が「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることができない状態に陥ったとき、公的な支出によって給付やサービスの提供を行ない、生活の質を保つ制度です。「健康で文化的な最低限度の生活」よりも質の悪い生活をせざるを得ない状態を看過してはなりません。

介護も社会保障として当然それを必要とするすべての国民に保障されるべきものであり、その制度を維持する保険料や自己負担も、国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を妨げるようなものであってはならないのです。

ではどうすればいいかというと、やはり国庫支出を増やす、そのために担税力のあるところからしっかり税金を取る、ということをやっていかなければならないと思います。

まずは、どれくらい重い負担増が画策されているのか、上記の記事で確認し、その負担増が「健康で文化的な最低限度の生活」を妨げるものであると実感できた方は、ぜひ介護保険法改正に反対の声をあげてほしいと思います。



追記  また、自己負担増の他に、この間の介護のつどいなどで情報発信されていますように、そもそも要介護度で「要支援」という軽度な判定になっている方に対しては介護保険の対象から外すという案が出ていることも見逃せません。「要支援」という区分は、比較的軽度な状態からリハビリや生活支援などを受けることによって要介護度の進行を食い止めようという目的から設けられた区分だということになっています。とすると、そこに対する介護保険の適用を外すということは、重度者を増やすことにつながり、ますます介護の現場が困難になり、支出も増大してしまうことになります。自己負担でサービスを受ければいいということになれば、経済状況によっての格差が生じます。軽度者の保険外しもまた、「健康で文化的な最低限度の生活」の保障を妨げるものであり、認める訳にはいかないと思います。