院内集会で情勢学習 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

本日は埼玉県の民主団体主催の院内集会に参加するために衆議院第二議員会館に行ってきました。(集会後に議員要請行動ということだったのですが、昨日参加を連絡したので班分けに入れてもらえていなかったので、1時間の集会だけの参加になってしまいました……)


本集会では、全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)の湯浅事務局次長を講師にお招きし、情勢学習を行ないました。

以下、その概要をお伝えします。


全日本民医連は、2011年春の通常国会に向けて運動を展開中だそうです。

2011年通常国会では、後期高齢者医療制度の廃止、介護保険法の改正、障害者自立支援法の廃止、保育の民営化法案などが審議されることが見込まれているそうです。まさに「社会保障国会」であると言えますが、それも社会保障を充実していく方向ではなく、財界の案を100%鵜呑みにし、国の負担を減らして、患者・利用者の負担を増やすという方向性ですべてが進められようとしています。


まず、後期高齢者医療制度の廃止と、それに伴う新制度の提案ですが、2013年の新制度成立を予定して2010年8月に中間案が公表されたところですが、全日本民医連は大反対しています。現在、後期高齢者医療制度による高齢者の負担増を軽減するため、2800億円を支出して70歳以上の医療費窓口負担を1割に留め、保険料の引き上げを5%に抑えるという措置などが行なわれています。しかし、その軽減措置を終わらせ、窓口負担は2割とし、自動的に保険料が上がっていく仕組みを実施しようとしています。

後期高齢者医療制度がつくられた2008年当時、責任者だった厚労省老人医療企画室室長補佐の土佐氏は、制度について「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自分の間隔で感じ取っていただくことにした」と説明したそうです。つまり、高齢者人口が増えて高齢者に対する医療費が増大していく分を高齢者の負担増に反映させ、高齢者が医療機関に受診するとそれだけ自分たちが苦しくなるのだと感じさせて受診を抑制する仕組みだということです。こうした仕組みに対して、多くの高齢者が「早く死ねということか」と猛反発し、その政策の非人間性がクローズアップされ、後期高齢者医療制度廃止を公約とした新政権が発足しました。

しかし、新制度にも高齢者に対する医療費の増大が高齢者自身の負担増に反映される枠組みは残し、しかも高齢者が加入する国民健康保険は都道府県単位とし、互いに医療費削減を競わせて目標に達しなかった都道府県にはペナルティを課すということが提案されています。また、高齢者の国民健康保険を都道府県単位とすることをきっかけに国民健康保険全体を広域化し、同じ仕組みも持ち込むことが提案されています。現在でも2割の世帯が保険料を払えないという高負担になっていますが、それがますます重くなる恐れがあります。現在でも、国保料の負担が最も重い政令指定都市である大阪市では、年間所得200万円の世帯に対して年間保険料が50万円なのだそうです。これでは生活ができません。福岡市は、年間保険料48万円だったところ、運動して5万円引き下げさせたそうです。さいたま市はもっと運動が盛んで、年間保険料30万円くらいです。

現在でも、保険料が払えなくて保険証を取り上げられて窓口負担10割の資格証明書を渡されたり、保険料は払えても窓口負担が払えなかったりして、我慢に我慢を重ねて耐え切れなくなって受診したときには手遅れで死亡するというケースが発生しています。全日本民医連が調査を行なって47件の事例を集めたのですが、そのうちの1件は埼玉県で、後期高齢者の死亡例だったそうです。

それまで窓口負担は無料だった老人医療の有料化が始まったのは1983年だそうですが、その頃と比較して高齢者の窓口負担は約6倍になっているそうです。その頃、数百円ならいいかと我慢せず、大規模な反対運動を行なっていたら現状のようにはなっていなかったかもしれません。また、高齢者の負担が増えるにつれて一般の被保険者の負担も増大し、その一方で国の負担率は減少しています。


次に、介護保険についてですが、2000年に「介護の社会化」を目指して発足しましたが、2005年の制度改悪もあり、介護認定を軽度にして利用させない、経済的な理由で利用させないなど、「保険あって介護なし」の制度になってしまっています。介護を原因とした殺人や無理心中は、実は介護保険ができてからの方が増えているそうです。

介護保険もさらに負担を増やす制度に変えられようとしており、利用者の一部負担割合を現行1割から2割に引き上げることや、軽度者に対するサービスを保険から外すことなどが提案されているそうです。

その見直し法案も現在検討されており、2011年通常国会で提案される予定です。


制度の見直しについて、「制度がよくなる」と誤解している人が多いのですが、実際には上記のように負担増の方向性ばかりが提案されようとしているのです。

湯浅次長は、この方向性に何とか歯止めを掛けなければならず、わかりやすく簡単な言葉で事実を伝えることが大事であり、そのためにはみんなで勉強しましょうと呼びかけました。

そして、安心して、お金の心配なく病院にかかれる、介護を受けられる制度にするべきであり、現場で起こっている問題を解決するために制度改定をしていくべきだと提起しました。


以上で情勢学習の報告を終わります。


追記  湯浅次長は、菅政権は小泉構造改革路線にまっしぐらに向かおうとしており、もう遠慮せずに反対するべきだということもおっしゃっていたのですが、概要の中に含められなかったので追記でご紹介しておきます。